ただΩというだけで。

さほり

文字の大きさ
301 / 417
番(つがい)

1.

しおりを挟む
(ちょっと暑い…… かな…… ?)

  二人分の洗濯物を洗濯機に押し込んだ津田は、少し動いただけで汗をかいた自分の首筋を押さえた。隙間風の入る古いアパートと違い、マンションにある乾の家は気密性が高い。暖房を入れていなくても寒さを感じないのが発情の前触れかどうか、津田には判断がつかなかった。

  部屋の主人は今朝、名残惜しそうに、というかひどく心配そうに、「少しでもそうかなと思ったら、すぐに呼んでくださいね」と念を押して出勤して行った。
  火曜日の午前である。
  何もしなくていい、と言われても、律もいない平日の昼間を、人の家でどう過ごしてよいのかわからない。とりあえず昨夜汚したシーツくらいは洗っておこうと思い、ついでにわずかな二人分の着替えやタオルも一緒に入れて洗濯機を回したのだった。

「どこを開けて、何を見てもいいですよ」
  乾にそう言われていたので、留守番の津田は遠慮なく洗面所にある収納棚の扉を開いた。
  一人暮らしが長い乾は普段、洗濯は週末にまとめてして、外に干さずに乾燥機にかける生活をしていたという。それでも洗濯用ピンチやハンガーの類はビニールに包まれてきちんと収納されており、彼がかつて話したとおり、出て行った元妻が決して悪妻というわけではなかったことを物語っていた。

  昨夜は気がつかなかったが、広めのLDKは二面採光でとても日当たりが良い。無駄な物がなく、スッキリと片付いている。その他に部屋は3つあり、玄関に近い順に書斎と寝室。そして乾は日曜日のうちに、一番日当たりの良い南東向きの部屋を「津田と律の部屋」にしてくれていた。

  フローリングにい草のラグが敷かれたその部屋は、6畳の和室で寝起きしている津田の、何気ない日常の話を乾がちゃんと聞いてくれていた証拠だ。
  つがいが成立してから迎えに行くことになっている律が、新しい家と3人での生活にできるだけ早く馴染めるように。乾が真剣に考えてくれたことが分かり、津田は胸が熱くなった。


しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 8/16番外編出しました!!!!! 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭 3/6 2000❤️ありがとうございます😭 4/29 3000❤️ありがとうございます😭 8/13 4000❤️ありがとうございます😭 12/10 5000❤️ありがとうございます😭 わたし5は好きな数字です💕 お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭

さよならの向こう側

よんど
BL
【お知らせ】 今作に番外編を加えて大幅に加筆修正したものをJ庭58で販売しました。此方の本編を直す予定は御座いません。 BOOTH https://yonsanbooth-444.booth.pm/items/7436395 ''Ωのまま死ぬくらいなら自由に生きようと思った'' 僕の人生が変わったのは高校生の時。 たまたまαと密室で二人きりになり、自分の予期せぬ発情に当てられた相手がうなじを噛んだのが事の始まりだった。相手はクラスメイトで特に話した事もない顔の整った寡黙な青年だった。 時は流れて大学生になったが、僕達は相も変わらず一緒にいた。番になった際に特に解消する理由がなかった為放置していたが、ある日自身が病に掛かってしまい事は一変する。 死のカウントダウンを知らされ、どうせ死ぬならΩである事に縛られず自由に生きたいと思うようになり、ようやくこのタイミングで番の解消を提案するが... 運命で結ばれた訳じゃない二人が、不器用ながらに関係を重ねて少しずつ寄り添っていく溺愛ラブストーリー。 (※) 過激表現のある章に付けています。 *** 攻め視点 ※当作品がフィクションである事を理解して頂いた上で何でもOKな方のみ拝読お願いします。 扉絵  YOHJI@yohji_fanart様 (無断転載×)

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

旦那様と僕

三冬月マヨ
BL
旦那様と奉公人(の、つもり)の、のんびりとした話。 縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲む感じで、のほほんとして頂けたら幸いです。 本編完結済。 『向日葵の庭で』は、残酷と云うか、覚悟が必要かな? と思いまして注意喚起の為『※』を付けています。

【完結】言えない言葉

未希かずは(Miki)
BL
 双子の弟・水瀬碧依は、明るい兄・翼と比べられ、自信がない引っ込み思案な大学生。  同じゼミの気さくで眩しい如月大和に密かに恋するが、話しかける勇気はない。  ある日、碧依は兄になりすまし、本屋のバイトで大和に近づく大胆な計画を立てる。  兄の笑顔で大和と心を通わせる碧依だが、嘘の自分に葛藤し……。  すれ違いを経て本当の想いを伝える、切なく甘い青春BLストーリー。 第1回青春BLカップ参加作品です。 1章 「出会い」が長くなってしまったので、前後編に分けました。 2章、3章も長くなってしまって、分けました。碧依の恋心を丁寧に書き直しました。(2025/9/2 18:40)

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

薔薇摘む人

Kokonuca.
BL
おじさんに引き取られた男の子のお話。全部で短編三部作になります

処理中です...