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新生活
10.
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窓の外で救急車のサイレンが聞こえた。廊下を歩く看護師のサンダルの音がする。答えるつもりはないのだろうと思うような間をおいて、乾は重い口を開いた。
「正直に言うと…… 何度も、夢に見ました。津田さんが大切に、可愛がって世話をしているのが、俺の…… 俺たちの、子どもで…… 津田さんと俺に、ちょっとずつ似たところがある、そんな子が泣いたり笑ったりして、少し大きくなった律君と四人で暮らす未来も、望めば、あるのかなって…… 」
罪を告白するような言い方に、彼がそれを口に出すまいと決めていたことが表れていた。
津田は37歳になっている。子どもを望むのなら、まだ遅くはない。が、悠長に構えてはいられない。微妙な年齢だ。
津田のこれからの人生を第一に考えて、アフターピルを買ってきてくれた乾。その気持ちを知らず、望まれないことに寂しさを覚えた自分は浅慮だったと、津田はため息をついた。
「それ、昨日の夜話してくれてたらよかったのに…… 」
うつむく乾の頭を撫でると、整髪料の残る硬い毛束が指先でぱらりとほぐれた。
「お義父さんにも言われたけどさ、俺たちやっぱ話し合いが足りないんだろうな。俺だって無理なことは無理だって言うし、欲しいもんが何でも手に入るわけじゃない。でも、ハナっから『要らない』って言われるとさ、なんか…… 違うだろ。そういうのは二人で話し合って、ちゃんと、思ってること伝えていかないとな…… 」
乾はフレームの下から差し入れた指で目頭を押さえ、静かに何度も頷いた。
(もう、どこが子宮か分かんねぇな…… )
津田は布巾から手を離し、下腹をさすってみた。
痛みがあるうちは、そこにその臓器があるとはっきり分かる。一度だけ大きく膨らみ、命を育んだことのあるΩの子宮。
掻爬手術の翌日には、乾と津田の心に小さな傷痕だけを残し、物理的な痛みは消えた。
「正直に言うと…… 何度も、夢に見ました。津田さんが大切に、可愛がって世話をしているのが、俺の…… 俺たちの、子どもで…… 津田さんと俺に、ちょっとずつ似たところがある、そんな子が泣いたり笑ったりして、少し大きくなった律君と四人で暮らす未来も、望めば、あるのかなって…… 」
罪を告白するような言い方に、彼がそれを口に出すまいと決めていたことが表れていた。
津田は37歳になっている。子どもを望むのなら、まだ遅くはない。が、悠長に構えてはいられない。微妙な年齢だ。
津田のこれからの人生を第一に考えて、アフターピルを買ってきてくれた乾。その気持ちを知らず、望まれないことに寂しさを覚えた自分は浅慮だったと、津田はため息をついた。
「それ、昨日の夜話してくれてたらよかったのに…… 」
うつむく乾の頭を撫でると、整髪料の残る硬い毛束が指先でぱらりとほぐれた。
「お義父さんにも言われたけどさ、俺たちやっぱ話し合いが足りないんだろうな。俺だって無理なことは無理だって言うし、欲しいもんが何でも手に入るわけじゃない。でも、ハナっから『要らない』って言われるとさ、なんか…… 違うだろ。そういうのは二人で話し合って、ちゃんと、思ってること伝えていかないとな…… 」
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(もう、どこが子宮か分かんねぇな…… )
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