379 / 417
春の足音
15.
しおりを挟む
「風井さんね、あたしが帰る時に階下のカフェにいたんですよぉ。それであたし、もしかしてこの人まだ乾主任のこと狙って待ってるのかなって、なんかやだなって思ったから、話しかけたんです。そしたら、薬指に指輪してるのが見えて。あの人、新しい職場の人と結婚したらしいんです。そんでお相手が実は、βの人らしくてぇ、すっごい意外でした!社にいたときは、他のフロアのαまでチェックしてるような人だったのに。でもなんか、幸せそうでしたよぉ」
小さく頷きながら彼女の話を聞いていた津田は、風井の結婚相手がβだと聞いて、微妙な笑顔になった。その生活の厳しさを知っている彼が、風井夫婦の決断に複雑な気持ちになるのも無理はない。
「それでねぇ、話してる間もキョロキョロしてるから誰か待ってるんですかぁって聞いたら、別にって言って…… 『そういえば津田さん元気?』って聞かれたんです。その時あたしまだ津田さん発情休暇だと思ってたんで、月のやつで休んでますよぉって言ったら、じゃあ伝言してって」
そこで増井は津田に向き直り、姿勢を正した。
「ひどいこと言って、ごめんなさい」
風井がしたことの再現だろうか。増井は再びぺこりと頭を下げた。
「…… って。あれホントは、津田さんを待ってたのかもしれないなぁ」
思案顔になった増井に、津田は何も言えずにいる。乾が何かフォローすべきかと思った時、彼の膝にいる律がもぞりと動いた。
「ごめーしゃい、ゆえて、いいこ」
律は頭上に手を伸ばしたが、増井の頭には届かないと分かり、正座した彼女の膝をよしよしと撫でた。
「ほわぁん!」
という増井の声と、
「あっおまえ、手ぇベタベタだっつのに…… っ」
と津田がおしぼりをひっつかむのがほぼ同時だった。
小さく頷きながら彼女の話を聞いていた津田は、風井の結婚相手がβだと聞いて、微妙な笑顔になった。その生活の厳しさを知っている彼が、風井夫婦の決断に複雑な気持ちになるのも無理はない。
「それでねぇ、話してる間もキョロキョロしてるから誰か待ってるんですかぁって聞いたら、別にって言って…… 『そういえば津田さん元気?』って聞かれたんです。その時あたしまだ津田さん発情休暇だと思ってたんで、月のやつで休んでますよぉって言ったら、じゃあ伝言してって」
そこで増井は津田に向き直り、姿勢を正した。
「ひどいこと言って、ごめんなさい」
風井がしたことの再現だろうか。増井は再びぺこりと頭を下げた。
「…… って。あれホントは、津田さんを待ってたのかもしれないなぁ」
思案顔になった増井に、津田は何も言えずにいる。乾が何かフォローすべきかと思った時、彼の膝にいる律がもぞりと動いた。
「ごめーしゃい、ゆえて、いいこ」
律は頭上に手を伸ばしたが、増井の頭には届かないと分かり、正座した彼女の膝をよしよしと撫でた。
「ほわぁん!」
という増井の声と、
「あっおまえ、手ぇベタベタだっつのに…… っ」
と津田がおしぼりをひっつかむのがほぼ同時だった。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
12/10 5000❤️ありがとうございます😭
わたし5は好きな数字です💕
お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭
さよならの向こう側
よんど
BL
【お知らせ】
今作に番外編を加えて大幅に加筆修正したものをJ庭58で販売しました。此方の本編を直す予定は御座いません。
BOOTH
https://yonsanbooth-444.booth.pm/items/7436395
''Ωのまま死ぬくらいなら自由に生きようと思った''
僕の人生が変わったのは高校生の時。
たまたまαと密室で二人きりになり、自分の予期せぬ発情に当てられた相手がうなじを噛んだのが事の始まりだった。相手はクラスメイトで特に話した事もない顔の整った寡黙な青年だった。
時は流れて大学生になったが、僕達は相も変わらず一緒にいた。番になった際に特に解消する理由がなかった為放置していたが、ある日自身が病に掛かってしまい事は一変する。
死のカウントダウンを知らされ、どうせ死ぬならΩである事に縛られず自由に生きたいと思うようになり、ようやくこのタイミングで番の解消を提案するが...
運命で結ばれた訳じゃない二人が、不器用ながらに関係を重ねて少しずつ寄り添っていく溺愛ラブストーリー。
(※) 過激表現のある章に付けています。
*** 攻め視点
※当作品がフィクションである事を理解して頂いた上で何でもOKな方のみ拝読お願いします。
扉絵
YOHJI@yohji_fanart様
(無断転載×)
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
僕を惑わせるのは素直な君
秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。
なんの不自由もない。
5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が
全てやって居た。
そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。
「俺、再婚しようと思うんだけど……」
この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。
だが、好きになってしまったになら仕方がない。
反対する事なく母親になる人と会う事に……。
そこには兄になる青年がついていて…。
いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。
だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。
自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて
いってしまうが……。
それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。
何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。
今からレンタルアルファシステムを利用します
夜鳥すぱり
BL
大学2年の鳴水《なるみ》は、ずっと自分がオメガであることを隠して生きてきた。でも、年々つらくなる発情期にもう一人は耐えられない。恋愛対象は男性だし、男のアルファに会ってみたい。誰でも良いから、定期的に安全に話し相手をしてくれる人が欲しい。でもそんな都合のいい人いなくて、考えあぐねた結果たどり着いた、アプリ、レンタルアルファシステム。安全……だと思う、評価も星5で良いし。うん、じゃ、お問い合わせをしてみるか。なるみは、恐る恐るボタンを押すが───。
◆完結済みです。ありがとうございました。
◆表紙絵を花々緒さんが描いてくださりました。カッコいい雪夜君と、おどおど鳴水くんです。可愛すぎますね!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる