408 / 417
終章
9.
しおりを挟む
「今のどっちだろうな。いっぱいかわいい人がいた、なのか、かわいいって言ってもらった、なのかわかんねぇ。どっちにしても、律の女好きは特別かも」
「男が好きなんじゃなくて良かったですよ。津田さんを真剣に取り合っても勝てる気がしません」
穏やかに微笑みながらそう言われ、津田は思わず緩む顔を伏せた。
「律君、おいで。これ、昨日のお姉さんたちからのプレゼントだよ」
呼ばれた律が乾の隣の椅子によじ登り、ケーキを見て歓声をあげた。興奮した幼児の突飛な行動を、乾に予想しろというのは無理がある。好奇心に後押しされた手の素早さも、想定を超えていただろう。
「あ…… っ!」
と言う間に、律の手のひらはケーキのほぼ中央にめり込み、その腕は肘の上までスポンジに埋もれた。乾がとっさに身体を支えなければ、勢いあまって頭から生クリームに突っ込んでいたに違いない。
「あぁーー…… 」
美しくデコレーションされていたケーキは真ん中が陥没した無残な姿になり、乾に抱えられた律は目をまん丸にして、クリームまみれになった腕を上げている。
「すみません、予想外でした…… 」
乾ががっくりと肩を落とす。律は普段それほどやんちゃではないので、ケーキに手を突っ込むような奇行に走るとは思わなかったのだろう。
津田は、ぱちぱちと瞬きを繰り返す律と情けない顔をした乾に、声を上げて笑った。
「ユキ、わらっちゃらめ!」
失態を笑われた律がばたばたと暴れ、腕についたクリームが飛び散る。
「わっ、ちょ、待って待って!」
慌てた乾の腕を逃れてフローリングの床に着地した律は、クリームにまみれた腕で津田の胸を叩いた。
「らめ!わらっちゃらめ!」
律は目に涙をためて全力で抗議している。
(めんどくせぇなぁ…… )
津田はそう思いながら、愛しさが溢れて笑みが止まらなかった。
「男が好きなんじゃなくて良かったですよ。津田さんを真剣に取り合っても勝てる気がしません」
穏やかに微笑みながらそう言われ、津田は思わず緩む顔を伏せた。
「律君、おいで。これ、昨日のお姉さんたちからのプレゼントだよ」
呼ばれた律が乾の隣の椅子によじ登り、ケーキを見て歓声をあげた。興奮した幼児の突飛な行動を、乾に予想しろというのは無理がある。好奇心に後押しされた手の素早さも、想定を超えていただろう。
「あ…… っ!」
と言う間に、律の手のひらはケーキのほぼ中央にめり込み、その腕は肘の上までスポンジに埋もれた。乾がとっさに身体を支えなければ、勢いあまって頭から生クリームに突っ込んでいたに違いない。
「あぁーー…… 」
美しくデコレーションされていたケーキは真ん中が陥没した無残な姿になり、乾に抱えられた律は目をまん丸にして、クリームまみれになった腕を上げている。
「すみません、予想外でした…… 」
乾ががっくりと肩を落とす。律は普段それほどやんちゃではないので、ケーキに手を突っ込むような奇行に走るとは思わなかったのだろう。
津田は、ぱちぱちと瞬きを繰り返す律と情けない顔をした乾に、声を上げて笑った。
「ユキ、わらっちゃらめ!」
失態を笑われた律がばたばたと暴れ、腕についたクリームが飛び散る。
「わっ、ちょ、待って待って!」
慌てた乾の腕を逃れてフローリングの床に着地した律は、クリームにまみれた腕で津田の胸を叩いた。
「らめ!わらっちゃらめ!」
律は目に涙をためて全力で抗議している。
(めんどくせぇなぁ…… )
津田はそう思いながら、愛しさが溢れて笑みが止まらなかった。
2
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
12/10 5000❤️ありがとうございます😭
わたし5は好きな数字です💕
お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭
さよならの向こう側
よんど
BL
【お知らせ】
今作に番外編を加えて大幅に加筆修正したものをJ庭58で販売しました。此方の本編を直す予定は御座いません。
BOOTH
https://yonsanbooth-444.booth.pm/items/7436395
''Ωのまま死ぬくらいなら自由に生きようと思った''
僕の人生が変わったのは高校生の時。
たまたまαと密室で二人きりになり、自分の予期せぬ発情に当てられた相手がうなじを噛んだのが事の始まりだった。相手はクラスメイトで特に話した事もない顔の整った寡黙な青年だった。
時は流れて大学生になったが、僕達は相も変わらず一緒にいた。番になった際に特に解消する理由がなかった為放置していたが、ある日自身が病に掛かってしまい事は一変する。
死のカウントダウンを知らされ、どうせ死ぬならΩである事に縛られず自由に生きたいと思うようになり、ようやくこのタイミングで番の解消を提案するが...
運命で結ばれた訳じゃない二人が、不器用ながらに関係を重ねて少しずつ寄り添っていく溺愛ラブストーリー。
(※) 過激表現のある章に付けています。
*** 攻め視点
※当作品がフィクションである事を理解して頂いた上で何でもOKな方のみ拝読お願いします。
扉絵
YOHJI@yohji_fanart様
(無断転載×)
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
僕を惑わせるのは素直な君
秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。
なんの不自由もない。
5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が
全てやって居た。
そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。
「俺、再婚しようと思うんだけど……」
この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。
だが、好きになってしまったになら仕方がない。
反対する事なく母親になる人と会う事に……。
そこには兄になる青年がついていて…。
いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。
だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。
自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて
いってしまうが……。
それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。
何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。
今からレンタルアルファシステムを利用します
夜鳥すぱり
BL
大学2年の鳴水《なるみ》は、ずっと自分がオメガであることを隠して生きてきた。でも、年々つらくなる発情期にもう一人は耐えられない。恋愛対象は男性だし、男のアルファに会ってみたい。誰でも良いから、定期的に安全に話し相手をしてくれる人が欲しい。でもそんな都合のいい人いなくて、考えあぐねた結果たどり着いた、アプリ、レンタルアルファシステム。安全……だと思う、評価も星5で良いし。うん、じゃ、お問い合わせをしてみるか。なるみは、恐る恐るボタンを押すが───。
◆完結済みです。ありがとうございました。
◆表紙絵を花々緒さんが描いてくださりました。カッコいい雪夜君と、おどおど鳴水くんです。可愛すぎますね!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる