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Azel
2.
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天使は卵に入っている間も、かけられる声を聞き愛情を感じているんだ。それを確信したアゼルは、今までに巣立った子たちを全く気にかけてこなかったことを悔やんだ。兵士になるために生まれる彼らには、感情はないものと思っていたのだ。
(僕もきっと、卵のうちから兄さんに愛情を注いでもらったんだろうな……)
もう会えない彼をいつまでも想っていられるのは、そのおかげなのかもしれない。アゼルは目を閉じて耳を澄ました。
『アゼル、愛してるよ』
耳の奥にはまだ、兄が囁いた優しい声が残っている。
バッコス神が自分を本名で呼ばなかったことに、アゼルは感謝していた。そのおかげで、最後に呼んだ兄の声でそれをずっと胸の奥にしまっておける。もう誰にも、自分の本当の名前を教えるつもりはなかった。
「ガジーナ」
嗄れた声に呼ばれて振り向くと、ルシフェルが畳んだ布のようなものを差し出している。
「洗い替えがあったらいいかと思って持って来たんだ」
アゼルが受け取って開くとそれは、肌触りのよいシャツだった。今着ている粗末な服より肩幅が合う。重ねてみて初めて、自分の服がずいぶん汚れくたびれていることに気がついた。
ルシフェルがなぜ自分によくしてくれるのか、アゼルは分からずにいた。彼は毎日どこからか飛んできて、果物や本を運び、卵に話しかけ、ただそばにいて話をする。もしも身体を求められたらと密かに恐れていたのだが、産卵中の身体に触られたあの日以降、彼がアゼルに何かをしてくることはない。
(僕もきっと、卵のうちから兄さんに愛情を注いでもらったんだろうな……)
もう会えない彼をいつまでも想っていられるのは、そのおかげなのかもしれない。アゼルは目を閉じて耳を澄ました。
『アゼル、愛してるよ』
耳の奥にはまだ、兄が囁いた優しい声が残っている。
バッコス神が自分を本名で呼ばなかったことに、アゼルは感謝していた。そのおかげで、最後に呼んだ兄の声でそれをずっと胸の奥にしまっておける。もう誰にも、自分の本当の名前を教えるつもりはなかった。
「ガジーナ」
嗄れた声に呼ばれて振り向くと、ルシフェルが畳んだ布のようなものを差し出している。
「洗い替えがあったらいいかと思って持って来たんだ」
アゼルが受け取って開くとそれは、肌触りのよいシャツだった。今着ている粗末な服より肩幅が合う。重ねてみて初めて、自分の服がずいぶん汚れくたびれていることに気がついた。
ルシフェルがなぜ自分によくしてくれるのか、アゼルは分からずにいた。彼は毎日どこからか飛んできて、果物や本を運び、卵に話しかけ、ただそばにいて話をする。もしも身体を求められたらと密かに恐れていたのだが、産卵中の身体に触られたあの日以降、彼がアゼルに何かをしてくることはない。
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