背徳のアルカディア

さほり

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Azel

3.

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(もしかしたら、弟の代わりみたいに思ってるのかもしれないな……)

 ルシフェルはアゼルや卵の世話に喜びを感じているように見える。堕天使になってしまっては家族と一緒にいられないだろう。弟に会えなくなった苦しみを、ここで昇華しているのかもしれない。
 アゼルにとっては兄の代わりになる天使などいないが、引き離されるつらさは充分に知っている。

「ありがとうございます」

 もらった服に顔をうずめてふんわりした柔らかさを味わうと、それはどこか懐かしい生活の匂いがした。


 その天使が島に下り立ったのは、ルシフェルのいない朝のこと。横になって休んでいたアゼルの前に、純白の翼を羽ばたかせて屈強な男が現れた。

 嫌な匂いがしている。神殿で浴びるほど飲まされた葡萄酒の匂いだ。アゼルは風に乗って届いたその匂いに眉をひそめた。

「やっぱりまだこの島にいたのか、ガジーナ」

 そう呼ばれハッとする。顔も忘れていたが、彼はアゼルをここに運び乱暴した兵士のひとりだ。もがれた羽の付け根が、ズキンと痛んだ。

「思い出して来てみたら、こんなところに一人で、かわいそうになぁ」

 かわいそうにと言いながら、彼は下卑た視線でアゼルを見下ろして笑っている。じりじりと距離を詰める男に恐怖を感じ、アゼルは警戒の目を向けたまま後ずさった。
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