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Azel
4.
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「あ……っ」
兵士と自分の間に、昨夜生まれたばかりの卵がある。気づいたアゼルが手を伸ばすと、その指先で、男の靴底が卵を踏み潰した。
小さな命が潰れた音が、アゼルの鼓膜を揺らす。
男は自分が何かを踏んだことにも気づかない様子で背を屈め、呆然と地面を見つめるアゼルに酒臭い息をかけた。
「うああああぁぁっ!!」
アゼルは腹の底から突き上げるような怒りに任せ、固く握った拳を男の横っ面に叩き込んだ。
ゴッと鈍い音がして、梢から小鳥たちが飛び立つ。
渾身の力で殴ったのに、彼は衝撃で少し顔を横向けただけだ。赤ら顔がゆっくりと向き直ったとき、その目には怒りが滲んでいた。
「い……っ!」
アゼルは全身に衝撃を受けた。なぎ倒されたと分かったのは、地面に押しつけられた頭に鋭い痛みを感じてからだ。酔っているとはいえ訓練された兵士の力と速さに、抵抗などまるでできなかった。
馬乗りになった男が、頭蓋を押さえつける手に体重をかける。こめかみに指がめり込むミシッという音に、背筋が冷たくなった。
(あの卵みたいに、潰されちゃうのかな……)
薄れかけたアゼルの意識を、嗄れた低い声が呼び戻した。
「アゼル!」
次の瞬間、頭と身体にかかっていた圧が消えた。
激しい頭痛で目を開けることもできず、のしかかっていた兵士がどこに行ったのか分からない。暗闇に響く耳鳴りと自分の鼓動の向こうに、男の悲鳴が聞こえた。
「ぎゃああぁぁっ!!」
「貴様……っ! アゼルに、何を!」
「ひっ! あ、悪魔……っ!?」
兵士と自分の間に、昨夜生まれたばかりの卵がある。気づいたアゼルが手を伸ばすと、その指先で、男の靴底が卵を踏み潰した。
小さな命が潰れた音が、アゼルの鼓膜を揺らす。
男は自分が何かを踏んだことにも気づかない様子で背を屈め、呆然と地面を見つめるアゼルに酒臭い息をかけた。
「うああああぁぁっ!!」
アゼルは腹の底から突き上げるような怒りに任せ、固く握った拳を男の横っ面に叩き込んだ。
ゴッと鈍い音がして、梢から小鳥たちが飛び立つ。
渾身の力で殴ったのに、彼は衝撃で少し顔を横向けただけだ。赤ら顔がゆっくりと向き直ったとき、その目には怒りが滲んでいた。
「い……っ!」
アゼルは全身に衝撃を受けた。なぎ倒されたと分かったのは、地面に押しつけられた頭に鋭い痛みを感じてからだ。酔っているとはいえ訓練された兵士の力と速さに、抵抗などまるでできなかった。
馬乗りになった男が、頭蓋を押さえつける手に体重をかける。こめかみに指がめり込むミシッという音に、背筋が冷たくなった。
(あの卵みたいに、潰されちゃうのかな……)
薄れかけたアゼルの意識を、嗄れた低い声が呼び戻した。
「アゼル!」
次の瞬間、頭と身体にかかっていた圧が消えた。
激しい頭痛で目を開けることもできず、のしかかっていた兵士がどこに行ったのか分からない。暗闇に響く耳鳴りと自分の鼓動の向こうに、男の悲鳴が聞こえた。
「ぎゃああぁぁっ!!」
「貴様……っ! アゼルに、何を!」
「ひっ! あ、悪魔……っ!?」
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