男女について考える（ほとんど憶測と偏見とヒステリー）

まだ男性が怖い

　この連載では女目線の話ばかりしていてフェアじゃないので、ちょっと知恵袋の古い投稿の、男性的意見も覗いてみた。
　が、男性の意見はバラバラに見えるし（女性もだろうけど）、「男尊女卑に戻せばいいのに」みたいなことを言っている人がいて、やっぱり怖い。一定数、「昔の方が景気が良かった。男女平等とか言い出してからおかしくなった」と思っている人がいるのだろうか。

　しかし「町のオバサンたちはなんで働いてんの？　旦那の給料じゃ生きていけないから？」とかいう話題もあり、ザックリ言うと「女は家庭に戻れ」派と「女ももっと働けよ」派に分かれているのかもしれない。いや、もっとバラバラなのか。


　私は男女関係なく社会不適合者を支援したいところだ。「働け」「産め」の世の中は狂っている。ガチガチの概念に侵されれば、次の世代も手駒に取られるだけなのだ。

　しかし「ゆとりってやつは」という意見を見つけてまたしんどくなってきた。何がいけないのか分からない。何だか分からないけど、悪い悪いと言われてばかりか……。


　私は長いこと、どこか、絵本の世界やファンタジーを信じていた。脳内お花畑というやつか。サンタさんを疑うのも人一倍遅かったかもしれない。
　人はみんな一つになれる。動物たちはお友達。空想の中に生きていた。

　そんな幻想は、わりと急に、何もかも崩れ去った。
　大人は子どもを守ってくれない。男は「性犯罪に遭う女が悪い」と思っている。そう刻み込まれた。


　女には隙があってはいけない。腹が立ちながらも、私はどこかあの言葉を、ずっと信じているのだと思う。
　隙を見せないよう気をつけている。きっとみんなそう思っているのだ、と。


　その後はじわじわと、どうしようもなくつまらない現実に首を絞められる。
　世界はどこまで行っても弱肉強食。そしてそんなことより、セクハラを気にするより戦争を恐れるより何より、大人は働かなくてはならない。労働とお金が大事なのだ。結婚しないのは許されるようになってきたけど、理由もなく働かないのは許されない。


　なんで子どもの頃は嘘の夢や希望を教え込まれるんだろう。やがては裏切られるというのに。

　信じた夢を返してほしい。産め、働け、戦えだなんて。何も面白いことがなくなってしまった。


　ただ、幻想というならば、私の言っていることもほぼほぼ幻想である。

　最近職場の人にも甘やかしていただき……いや、優しく構っていただいている。一番簡単なポジションをずっと任せてくださっているように思う。人並みに仕事ができない、いつまで経ってもスピードが上がらないから、簡単な仕事をさせてくださっているのだ。
　私が楽ポジションに居座っていることでベテランさん方から苛つかれているかもしれないが。面と向かってキツくいわれることはそんなにない。

　以前というか最初の頃、「君は別の現場へ行った方が良いのではないか。そっちではここよりは覚えることも少ないし、多少マイペースにやれるから」と勧告（？）された。職場が近いから選んだのであって、遠くなったらしんどいと断ったら、ちょっとキツく「君の努力次第だよ」と言われたように記憶している。が、その後異動勧告（？）はきていない。

　一生懸命やって後輩さんより遅いというのは申し訳ないが、その代わり前職のときよりは仕事内容を理解している。説明はまだ下手だけど、コミュニケーションは以前より取れている。
「分かりません」が減った。質問に答えられる率が上がったし、失敗もするけど自分の判断で動くこともできる。「何が分からないのか分からない」なんてことはだいぶ減った（私は多くの仕事を覚えられなかったから、今は毎日同じ、比較的簡単な範囲を任せていただいているおかげだけど）。


　生きる上で「女だから」「男だから」という空気を感じている人はいるかもしれないが、私は現在は感じない。昔は女だと突き付けられる出来事があったが、今はジェンダーフリーのご時世で、女の私からは差別を感じにくくなった。

　職場では男性でも女性でも仕事がゆっくりな人はいるようだが、それぞれのペースで成長している。仕事の出来は男女関係なさそう（私の職種では）。
　ネットでも、知恵袋とか掲示板を覗くとギョッとする言葉が飛び交っているが、SNSは穏やかな人が多い。男女差別は、ないところにはない。


　ちなみに、「なぜ女性は下ネタが嫌いなの？」という話題をいくらか見かけたが、私の場合、リアルで下ネタを話すと相手が豹変するんじゃないかと思って怖いのだ。性被害直前の会話を思い出す。

　まれに仕事中に、下ネタとまではいかないが男っぽい話をされた場合、「どう答えれば興奮されないんだろう」と考え、ヒヤヒヤしながら無難にそっけなく答えている。別に女扱いされていないはずだし、なんと答えても大丈夫だろうけど……。


　女には隙があってはいけないのか。
　また唐突に、予想外の不意打ちを食らうかもしれない。そのときにぼんやりしていたらまた「隙があるお前が悪い」と罵られるのではないか。


　疲れた。悲しい。怒り。
　私はゆったりリラックスして、微睡むように、隙だらけで、ぼんやりと生きていきたいのだけれど。

「男というのは、機会さえあればヤりたいものなんですよ」みたいな言葉も見た。そしてそういう概念に怯え、「男性は怖い」と警戒することが『男性差別』？

　防御が差別？　でも隙があるのは「悪い」？


　……そうか……「何と言われても、責められても、誰にも守られなくても、たとえ殴られても、隙だらけで生きていくぞ」という覚悟が足りないのかもしれない。私は。


　信頼と不信頼。安心と不安。「築きたい」と、「ぶっ壊したい」。
　感情が交差する。


　口癖のように「差別のない世界……」と言っていたのに、まさか私の恐怖が「差別」だったなんて。私自身が差別主義者だったなんて。私は差別された側であって、差別する側ではないと思っていた。

　私はまだ、悟れないのか……。


　鈍い私は、恩をよく分かっていない。今も、静かに見守ってくださっている人の善意に気づかず、恩を仇で返し、威嚇したりしているかもしれない。視野が狭いのだ。

　けれどもう、良くないか？

　男女関係なく、可愛がってくださっている人がたくさんいる。応援してくださっている人がいる。私の過剰防衛や差別心に怒って距離を置いた人もいるかもしれないけど（なぜ嫌われるのか自覚がないので、距離を置かれても気づかない）、生きていく限り人とは関わる。そのときそのときご縁があり、親切にしてくださる方、可愛がってくださる方、側にいてくださる方に感謝しながら生きていくべきなのだ。