同じものを見て感想を言っているのになんかまわりの人と気が合わなかったな、ということだけうっすら記憶に残っている

月澄狸

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同じものを見て感想を言っているのになんかまわりの人と気が合わなかったな、ということだけうっすら記憶に残っている

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 ある場面を見て自分は和んだり、なるほどと思ったり楽しくなったりしていたのに、それを見ていた他の仲間があとで「何あれ信じられない」と批判していた……という状況が何度かあった。


 今ならもうちょっと考えるだろう。その人たちが何を言っているのか、私はそれを気にするべきか気にしなくていいのか。そして自分の感性を大事にする。感性の合わない人とは精神的に距離を置く。

 でも昔はもっとボーッと生きていたから、ただ怖かったり自信を失ったりするだけだった。みんな表ではニコニコと人当たりがいいのにあとで裏で陰口叩くよねとか。傷ついて怖くて、みんなと意見が合わないことの多い自分は変人なのだと思っていた。きっと空気が読めない人間なんだと。


 ……空気が読めなかったのは確かだ。ただ問題はそこじゃなかったと今は思う。気持ちがフラフラと右往左往していたことが問題だ。常に心ここにあらずだったのかもしれない。

 でもなぜだかあの時の人生の方が楽しかった記憶もあるのだけど。
 なぜだろう、喉元過ぎれば熱さを忘れるからかな。昔の方がちょっとは人の群れと歩幅を合わせようとしていたから、人間としては正しかったのかな。あの頃の日々は輝いて見えた。今でもあの頃に好きだった歌が好きだ。


 ただもう戻れないだろう。「自分はこう思う」という芯が、良くも悪くも心にできつつある。言いたいことを言えるようになってきた。
 ある日突然大炎上したりしたら、また自分の意見も持てない人間に逆戻りするかもしれないけど。


 結局何が良いんだろうなぁ……。自分の意見を持てってよく聞くけれど、絵や文章で稼ごうとした私は今思うようにいかず、たしかに人生難しいのだと再確認している。

 なんとなくでも人に合わせ続けている方がマシだったんじゃないか? 私は今意見を持っているけれど、今書いているこの作品1編でも良くて10円稼げるかどうかというところだ。

 意見なんて言っただけ・書いただけではお金にならない。それを持って自分の道を生きるのが重要ということか?
 でもどこが自分の道なのか、何が自分の幸せなのか分からなくなってきた。


 やりたいことをやって思うようにいかないか、嫌なことをやらされつつ人とも関わって生き、その中で楽しみを見出すか。どっちが良いんだろう。

 こうしましょうああしましょうと言ってくる文章はあるけれど、どれもこれも方々を向いている矢印のよう。右に行けば左へ行けと言われる。バラバラのそれをなんとか繋ぎ合わせて解読して、言われたとおりやっても何も起こらない。


 もしかしてあの時も同じだったのか。みんながうんうんと同調しあう中で、私だけが感覚がずれていると思ったあの日。
 一見みんな一心同体のようだったけれど、それぞれ裏では仲間の陰口を言い合い、お互い気に入らないところがあったり、その場その場で群れからはぐれないように歩幅を合わせ……心は方々を向く矢印だったのか。
 ああやって上手にやって行く人の方が、今は素敵な場所にたどり着けたのかもしれない。

 ダメだなぁ私は。未だに教科書の1ページ目でつまづいて首を傾げている。問題はそこじゃないだろう。


 これから私という矢印はどこへ向かえば良いのだろう。










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