TwitterのDMで詐欺師と喋ろう！ 〜月澄狸と3人の詐欺師たち〜

総括

　今回、宝物とHappinessは同じような設定でしたが、宝物の話し方はどうにも自分勝手で、好感が持てませんでした。それに比べるとHappinessにはあまりイラッとこなかったので、Happinessの方がロマンス詐欺が上手なのかもしれません。

　ジョンソン将軍は出会ってすぐに「私は兵士だ、助けてくれ」みたいなストーリーを展開してきました。ウクライナが侵攻されたことに心を痛め、「なんとかしたい」と思う人が多くいる、その親切心につけ込むために量産されたプランなのでしょうが、それにしても会っていきなり「助けてください」とは急すぎます。ウクライナの人という設定でもなく軍人だし。

　あのスピードに比べるとHappinessは時間をかけて演出したので、「実はあなたにしか頼めないことがあるんですが……」という流れの不自然さは減った気がします。おおまかなストーリーと箱の画像は一緒ですけどね。短縮バージョンが、ジョンソン将軍のやつですね。


　詐欺師のストーリーって、小説を書くときの参考にもなりそうです。

「異質な者同士が出会い、絆を深め、やがて相手のことを助けたいとまで思うようになる」
　恋愛に限定しなければ、こういう物語って多いですよね。


　物語では新しいものが好まれます。だから「転校生」の話とか多いですよね。
　転校生以外にもクラスに知らないキャラいっぱいいるんですが、転校生との出会いというのは大切なのか。人には新しい存在と出会い関わりたい欲求があるのかもしれません。

　私の好きなアニメ映画では、「出会い」「絆を深める」過程が丁寧に描かれます。最初はほのぼのとしていて、後半急展開、と、メリハリがあるパターンが多いように思います。
　出会った直後は半信半疑。その後も、半信半疑と信頼の間を揺れ動きつつ、やがて相手がかけがえのない存在になってゆく。その丁寧な描写に惹かれます。


　今回Happiness大尉はジョンソン将軍より時間をかけました。それによって「よく話しかけてくれる優しい人」「彼の言うことは本当かもしれないし……」と、被害者が詐欺師に親近感を持つかもしれません。ブラック心理術の本に載っていた「単純接触効果」を利用していますね。人は何度も接触されると好意を持ちやすくなるそうです。

　でも、宝物もマメだったのに、なんかイラッときました。
「職場や学校に苦手な人がいる」なんてのもよくあることだし、同じように毎日会う関係であっても、それだけで好意にはなりませんよね。下手したら「もう見るのも嫌」となります。


　で、Happinessが時間をかけたのも。ツボる人であれば「軍人なのにマメで謙虚、なんて素敵なの」と思うかもしれませんが、「しつこいな、こっちにはこっちのやりたいことがあるのに、勝手にペラペラ喋ってきて。何コイツ」となる可能性もありますね。ジョンソンのあのスピードは異常な気がしますが、時間をかけるほど良いとも限らないような。

　物語でも、「出会い～絆を深める」のほのぼの路線だけならそれでも良いでしょうが、延々とほのぼのされると、中盤ダレたり、後半の展開によっては「もっと前になんとか対策しておけなかったのかよ。暇そうなときあっただろ」と思われてしまうかも。

　緩急の付け方。丁寧さとダイナミックさ。彼らのストーリーによって、そういうことを改めて考えさせられました。


　このロマンス詐欺（？）って……みんな同じ組織のものなんですかね。画像、同じだったし。この不自然な感じだと、あんまり引っかかる人はいなさそうですが、もっとマメで上手な人もいるんですかね。

　いつか彼らが詐欺師としてたくましく成長し、人の心を巧みに操り、上手に関係性を構築できるようになったなら……。
　彼らと再会したとき、私は騙されてしまうのかもしれません。


【完】