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恋人編
5.新店開拓
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朝。差し込む陽の光で目が覚める。
目の前にはふわりとした毛が俺の鼻腔を擽る。
こんなに心地良い目覚めは初めてだ。
俺の左腕は規則正しく動く響也の胸を起こさない様に抱いている。そして右腕には響也の頭が乗り、その先へ伸びた腕に響也の手が絡んでいてそれだけで幸せだなと思う。
「ん……」
短い声がして腕の中で微睡む響也が身じろぎをした。
暫くその様子を見守っていれば、何度か俺の右腕をにぎにぎしたりすりすりしたりしてから目を覚ます気配を感じた。
「……いま……なんじ……」
ボーっとしている響也可愛い。
そのふわふわした頭にチュッとキスを落とす。
「おはよう響也。今は6時過ぎだよ」
「ろくじ……」
ボーっとしていた響也が呟きと共に何かを確認するように俺の腕を揉んでいる。
あ。動き止まった。お。耳が赤くなってきた。ちぇ。腕離された。
弾けた様に起き上がった響也が俺を見て顔を赤くする。
昨夜の事を思い出し中って感じか。
思い出したらしい響也は平静を装い口をキュッと引き結んだ。
「……おはよう」
「おはよう。良く寝れたみたいだね」
「すっきりとした覚醒をしないのは始めてだな。見苦しいものを見せた。すまない」
「え?何で。可愛かったけど」
「か」
あ。収まり掛けた赤がまたボッと噴き出た。
俺も起き上がって可愛い響也を抱きしめて赤い頬にキスをする。
ピクリと揺れた響也の肩をそっと撫でてベットから立つ。
「さて、朝ご飯作らないとな。尊が起きちまう」
今日は日曜だけど尊は朝から習い事で忙しい。特に昨日は祭りの為に急遽塾を休んだから行きたいだろうしな。
未だに状況に慣れない響也は可愛いしずっと見ていたいが、気持ちを抑えてキッチンに立った。
「昨日は屋台メシだったからな。朝はちゃんと食べさせたい」
冷蔵庫を確認して、尊が出かけるまでまだ余裕があるのも確認して。よし、サラダとスクランブルエッグ、ベーコン、ミネストローネにしよう。
作る物を決めたらサクサク作っていく。その途中で落ち着きを取り戻した響也が混ざって一緒に作った。
出来上がる前に尊が起きてリビングの戸を開ける。
「おはよう。父さん、侑真パパ」
「おはよう。もう直ぐ出来るから顔洗っておいで」
「うん」
昨夜は俺と響也が一緒のベットで寝たなんて知りもしない尊がいつも通りに反応を返した。
顔を洗った尊はいつもどおりテーブルの準備を手伝ってくれる。良い子だ。可愛い。
残さず平らげた尊は食器を片付けると弓道場へと出掛けて行った。
「子供は元気だな」
夜遅くまで遊んだのにケロっとした顔で出掛けてく若さに、俺は自分が年を取った様に感じてしまう。
「侑真も十分若いだろう」
「響也も元気そうだな」
互いにグルメツアーで練り歩く習慣がついていたからか、割と体力がついていた。
2人顔を合わせて笑い合う。
「たまには2人で出掛けようか」
響也の方からの誘いに胸躍る。
「おう。どうする?最近新しいバーが出来たらしいけど、そこ行く?」
「あそこか。同僚が話していたな。昼間からやっているんだとか」
「そう、カクテルが良いらしいけど、俺はマリネが気になってる」
「一品料理がどれも美味しいのだとか」
という訳で珍しく昼間からバーデートに決まり。
別に酔わせて~とかは思っていない。そもそも響也は中々に強い。営業職してるだけあって鍛えてるのか。てか鍛えられるものなのか?
そうして行ったバーは少し入り組んだ所にあった。
「こんな場所じゃ目立たないだろうに」
「なんでも知る人ぞ知るってやつらしい」
入り口は洒落た感じに作られてる。昼間でも奥まった場所にある所為で若干暗いからか、入り口の光が通る人を惹き付けていく。
入ってみると少し変わった間取りをしていた。
入り口からカウンターにかけては一直線に開けていて、その通り沿いにテーブル席がある。気になるのはその狭さ。外から見た感じだともう少し広く感じたけどな。
不思議に思ってグルリと見回して、違和感を覚えた。
「なあ、あの壁」
響也の耳元で小声で話す。視線だけで示した場所を響也も見る。
「うむ。隠し部屋があるな」
響也も気付いたのだろう。小声で返した。
一見、見える範囲だけのスペースに感じさせている。てことはその先は普通は行けないスペースなんだろう。
まあ、食事を楽しみに来ただけの俺達にとって些末な事か。
そう思ってカウンターの席に並んで座ると、何やらバーテンダーのお兄さんが俺達2人を見てきた。その値踏みするような視線に若干の不快感を覚え始めた時、お兄さんが顔を近付けて手招きしてきた。
響也と目を合わせてハテナと思いつつも耳を近付ける。
「お客さん達、そういう関係でしょ」
言われた言葉に体が反応する。俺は公言しても気にしないけど、響也は営業だ。変な噂は立たせないに限る。
警戒心剥き出しに睨み返すと、そんなのお構いなしとばかりにニッコリと笑われ警戒心がピークに達する。
「当店は、裏エリアを設けていまして。そういう人達がゆっくり人目を気にせず語らえる個室を完備しております」
そんな都合の良い話があってたまるか。新宿〇丁目じゃあるまいし。
「と、いうのも。当店のスタッフは全員そうでして。私共のような人達にも場所を選ばず楽しめるバーを、というのをコンセプトにしているんです」
確かに。恋人同士になってもマイノリティが未だ弾かれる日本社会じゃ堂々といちゃつけない。昔に比べれば大分マシになったらしいけど。
他のお客さんが気付かない入り口があって、そこから入ると壁の裏側に行けると聞いた。
もしそれが本当なら、これから気兼ねなく楽しめる場所が出来る。という事で、何もせずに出るのは今いるお客さんに不信に思われるから一杯だけ引っ掛けて店を出た。
「店を出て左……」
言われた通りに行くと細い路地に入る。その途中で裏口に繋がる更に細い路地を見つけた。
目の前にはふわりとした毛が俺の鼻腔を擽る。
こんなに心地良い目覚めは初めてだ。
俺の左腕は規則正しく動く響也の胸を起こさない様に抱いている。そして右腕には響也の頭が乗り、その先へ伸びた腕に響也の手が絡んでいてそれだけで幸せだなと思う。
「ん……」
短い声がして腕の中で微睡む響也が身じろぎをした。
暫くその様子を見守っていれば、何度か俺の右腕をにぎにぎしたりすりすりしたりしてから目を覚ます気配を感じた。
「……いま……なんじ……」
ボーっとしている響也可愛い。
そのふわふわした頭にチュッとキスを落とす。
「おはよう響也。今は6時過ぎだよ」
「ろくじ……」
ボーっとしていた響也が呟きと共に何かを確認するように俺の腕を揉んでいる。
あ。動き止まった。お。耳が赤くなってきた。ちぇ。腕離された。
弾けた様に起き上がった響也が俺を見て顔を赤くする。
昨夜の事を思い出し中って感じか。
思い出したらしい響也は平静を装い口をキュッと引き結んだ。
「……おはよう」
「おはよう。良く寝れたみたいだね」
「すっきりとした覚醒をしないのは始めてだな。見苦しいものを見せた。すまない」
「え?何で。可愛かったけど」
「か」
あ。収まり掛けた赤がまたボッと噴き出た。
俺も起き上がって可愛い響也を抱きしめて赤い頬にキスをする。
ピクリと揺れた響也の肩をそっと撫でてベットから立つ。
「さて、朝ご飯作らないとな。尊が起きちまう」
今日は日曜だけど尊は朝から習い事で忙しい。特に昨日は祭りの為に急遽塾を休んだから行きたいだろうしな。
未だに状況に慣れない響也は可愛いしずっと見ていたいが、気持ちを抑えてキッチンに立った。
「昨日は屋台メシだったからな。朝はちゃんと食べさせたい」
冷蔵庫を確認して、尊が出かけるまでまだ余裕があるのも確認して。よし、サラダとスクランブルエッグ、ベーコン、ミネストローネにしよう。
作る物を決めたらサクサク作っていく。その途中で落ち着きを取り戻した響也が混ざって一緒に作った。
出来上がる前に尊が起きてリビングの戸を開ける。
「おはよう。父さん、侑真パパ」
「おはよう。もう直ぐ出来るから顔洗っておいで」
「うん」
昨夜は俺と響也が一緒のベットで寝たなんて知りもしない尊がいつも通りに反応を返した。
顔を洗った尊はいつもどおりテーブルの準備を手伝ってくれる。良い子だ。可愛い。
残さず平らげた尊は食器を片付けると弓道場へと出掛けて行った。
「子供は元気だな」
夜遅くまで遊んだのにケロっとした顔で出掛けてく若さに、俺は自分が年を取った様に感じてしまう。
「侑真も十分若いだろう」
「響也も元気そうだな」
互いにグルメツアーで練り歩く習慣がついていたからか、割と体力がついていた。
2人顔を合わせて笑い合う。
「たまには2人で出掛けようか」
響也の方からの誘いに胸躍る。
「おう。どうする?最近新しいバーが出来たらしいけど、そこ行く?」
「あそこか。同僚が話していたな。昼間からやっているんだとか」
「そう、カクテルが良いらしいけど、俺はマリネが気になってる」
「一品料理がどれも美味しいのだとか」
という訳で珍しく昼間からバーデートに決まり。
別に酔わせて~とかは思っていない。そもそも響也は中々に強い。営業職してるだけあって鍛えてるのか。てか鍛えられるものなのか?
そうして行ったバーは少し入り組んだ所にあった。
「こんな場所じゃ目立たないだろうに」
「なんでも知る人ぞ知るってやつらしい」
入り口は洒落た感じに作られてる。昼間でも奥まった場所にある所為で若干暗いからか、入り口の光が通る人を惹き付けていく。
入ってみると少し変わった間取りをしていた。
入り口からカウンターにかけては一直線に開けていて、その通り沿いにテーブル席がある。気になるのはその狭さ。外から見た感じだともう少し広く感じたけどな。
不思議に思ってグルリと見回して、違和感を覚えた。
「なあ、あの壁」
響也の耳元で小声で話す。視線だけで示した場所を響也も見る。
「うむ。隠し部屋があるな」
響也も気付いたのだろう。小声で返した。
一見、見える範囲だけのスペースに感じさせている。てことはその先は普通は行けないスペースなんだろう。
まあ、食事を楽しみに来ただけの俺達にとって些末な事か。
そう思ってカウンターの席に並んで座ると、何やらバーテンダーのお兄さんが俺達2人を見てきた。その値踏みするような視線に若干の不快感を覚え始めた時、お兄さんが顔を近付けて手招きしてきた。
響也と目を合わせてハテナと思いつつも耳を近付ける。
「お客さん達、そういう関係でしょ」
言われた言葉に体が反応する。俺は公言しても気にしないけど、響也は営業だ。変な噂は立たせないに限る。
警戒心剥き出しに睨み返すと、そんなのお構いなしとばかりにニッコリと笑われ警戒心がピークに達する。
「当店は、裏エリアを設けていまして。そういう人達がゆっくり人目を気にせず語らえる個室を完備しております」
そんな都合の良い話があってたまるか。新宿〇丁目じゃあるまいし。
「と、いうのも。当店のスタッフは全員そうでして。私共のような人達にも場所を選ばず楽しめるバーを、というのをコンセプトにしているんです」
確かに。恋人同士になってもマイノリティが未だ弾かれる日本社会じゃ堂々といちゃつけない。昔に比べれば大分マシになったらしいけど。
他のお客さんが気付かない入り口があって、そこから入ると壁の裏側に行けると聞いた。
もしそれが本当なら、これから気兼ねなく楽しめる場所が出来る。という事で、何もせずに出るのは今いるお客さんに不信に思われるから一杯だけ引っ掛けて店を出た。
「店を出て左……」
言われた通りに行くと細い路地に入る。その途中で裏口に繋がる更に細い路地を見つけた。
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