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恋人編
6.進展開拓
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裏口から入ったバー。
そこは表とは違った雰囲気があった。
「こちらの方が落ち着いていて好きだな」
響也が言って、俺は確かに響也に合ってると思った。
「いらっしゃい。話は聞いてるよ」
カウンターは表裏繋がっていた。先程の店員が顔を出して手を振ってくれている。
その人とは別のスタッフに案内された場所は聞いていた通り個室で、しかも外の音が聞こえない。
恋人同士が利用する前提で作られた部屋は、2人掛けのソファが一台と楕円形のテーブルが一台あるだけ。座れば奥行きが深く、ゆったり座れた。
「メニューはこちらのタブレットから注文してね」
そう言ってその人は出て行った。
2人の時間を極力邪魔しない姿勢らしい。
席に案内されるまでに気付いた事がある。
「スタッフは男女共にいるけど、見た感じ2人一組って感じだな」
「良く気付いたね。確かに2人一組でお揃いのチョーカーをしていた。それも全て同性で」
表にいたのは全員違うチョーカーをしていた。けど、それと同じチョーカーをしている人が裏にいる。
表で教えてくれたお兄さんと、席に案内してくれたお兄さんが同じチョーカーだ。
2人の間で交わされた温かい視線も、俺は見逃したりなんかしなかった。
「どうやら本当にここはそうらしいな」
変な犯罪にでも巻き込まれるんじゃと警戒していた自分が馬鹿みたいに思えて脱力した。
その隣に座る響也がクスリと笑う。
「確かに偏見や好奇な視線に踊らされるのは気持ちの良いものではない。しかしそう身構え過ぎるのも窮屈だろう。気楽に行こう」
タブレットではなく、備え付けの紙のメニュー表に目を通しながら言う響也は余裕のある大人の男に見えて恰好良い。
まあ俺としても何があっても今更響也と別れる気なんてサラサラ無い訳だけど。こういうふとした時に俺はガキなんだって感じて不甲斐なく思ってしまう。
「ああ……そうだな」
気持ちを誤魔化すようにタブレットに目を通して素っ気無く感じる答え。
響也にはそんな子供じみた思いはお見通しだったらしく、軽く頭を撫でられた。
「私はもう侑真と離れる未来など考えていないよ」
ふいに頬に触れる柔らかい感触。
響也から唇を寄せられた。いつもは俺からで、響也からして貰ったのって……もしかしてお初?
そう思うとガッと熱が上がった。
いや待て俺。確か出張帰りの響也に夜這いキスされた事無かったか?いやいやあの時俺寝てたし、都合の良い夢……にしては感触がリアルだった。同性愛なんて考えても無かったから都合の良い夢か幻覚だと思っていたけどもしかして本当……?
「あの時と同じ感触……」
触れられた頬にそっと手を合わせて思わず呟いた言葉は、どうやら響也の耳にもしっかりと聞こえていたらしい。
俺と同じくガッと目尻を赤くした響也の目が見開かれた。
「起きていたのか」
え?やっぱりリアル?
そうと気付けば嬉しさが極まり、気付いた時にはその戦慄く唇を深く塞いでいた。
「……!?……っ」
驚きに喉を震わせた響也だったけど、俺の目に野獣を見つけたのかビクリと身を固まらせた。それに対して遠慮なくその咥内を暴き吸い付いていると、諦めたのか、その気になったのか。響也の手がおずおずと俺の背に回ると暴れる俺の舌を捕らえて絡めてくれた。
そのまま味わい満足して離れた頃にはお互いに息が上がっていた。
「っふ、はぁ……。侑真……君という人は……」
息と乱れた服を整えて呆れ戸惑い言う響也は、しかし響也自身も俺を求めてくれているのがわかる目をしていた。
「ごめん。暴走しかけた」
「しかけ!?あれでか??若いというのはそうだったかな……」
というより響也が今まで淡泊過ぎたのか、性に興味が無さ過ぎただけな気もする。
尊が生まれた経緯とそれからの奥さんとの生活や仕事状態を鑑みるに、元々響也はこっち方面に疎いんだろうな。初心といか手慣れていない感はするのに応じられる程度には経験している。
あー。その相手があの人だったんだと思うと怒りと嫉妬が湧いてきた。駄目駄目こんな感情は捨てだ捨て!響也に余計な不安や心配を掛けたくない。
「んー、まあこういうのは人それぞれだろ」
自分の過去を振り返ろうとしていた響也の思考を無理矢理断ち切る。
響也もそれはそうかと考えるのを止めて、
「でもこんな暴走したのは響也が初めてだな」
続いた俺の言葉に艶の増した顔で口を引き結んだ。
好きな人からの初めてにこんなに心躍れる自分がいる事に驚き、そして素直に嬉しいと思える。それは響也も同じなんだと思えた。
「このままだと押し倒しちゃいそうだから何か頼もう」
本心からの警告に響也はたじろぎを見せてから大人しくメニュー表に視線を戻した。
その覗く首筋から期待を感じたのは、俺の暴走冷めやらぬ欲目からだろうか。
そこは表とは違った雰囲気があった。
「こちらの方が落ち着いていて好きだな」
響也が言って、俺は確かに響也に合ってると思った。
「いらっしゃい。話は聞いてるよ」
カウンターは表裏繋がっていた。先程の店員が顔を出して手を振ってくれている。
その人とは別のスタッフに案内された場所は聞いていた通り個室で、しかも外の音が聞こえない。
恋人同士が利用する前提で作られた部屋は、2人掛けのソファが一台と楕円形のテーブルが一台あるだけ。座れば奥行きが深く、ゆったり座れた。
「メニューはこちらのタブレットから注文してね」
そう言ってその人は出て行った。
2人の時間を極力邪魔しない姿勢らしい。
席に案内されるまでに気付いた事がある。
「スタッフは男女共にいるけど、見た感じ2人一組って感じだな」
「良く気付いたね。確かに2人一組でお揃いのチョーカーをしていた。それも全て同性で」
表にいたのは全員違うチョーカーをしていた。けど、それと同じチョーカーをしている人が裏にいる。
表で教えてくれたお兄さんと、席に案内してくれたお兄さんが同じチョーカーだ。
2人の間で交わされた温かい視線も、俺は見逃したりなんかしなかった。
「どうやら本当にここはそうらしいな」
変な犯罪にでも巻き込まれるんじゃと警戒していた自分が馬鹿みたいに思えて脱力した。
その隣に座る響也がクスリと笑う。
「確かに偏見や好奇な視線に踊らされるのは気持ちの良いものではない。しかしそう身構え過ぎるのも窮屈だろう。気楽に行こう」
タブレットではなく、備え付けの紙のメニュー表に目を通しながら言う響也は余裕のある大人の男に見えて恰好良い。
まあ俺としても何があっても今更響也と別れる気なんてサラサラ無い訳だけど。こういうふとした時に俺はガキなんだって感じて不甲斐なく思ってしまう。
「ああ……そうだな」
気持ちを誤魔化すようにタブレットに目を通して素っ気無く感じる答え。
響也にはそんな子供じみた思いはお見通しだったらしく、軽く頭を撫でられた。
「私はもう侑真と離れる未来など考えていないよ」
ふいに頬に触れる柔らかい感触。
響也から唇を寄せられた。いつもは俺からで、響也からして貰ったのって……もしかしてお初?
そう思うとガッと熱が上がった。
いや待て俺。確か出張帰りの響也に夜這いキスされた事無かったか?いやいやあの時俺寝てたし、都合の良い夢……にしては感触がリアルだった。同性愛なんて考えても無かったから都合の良い夢か幻覚だと思っていたけどもしかして本当……?
「あの時と同じ感触……」
触れられた頬にそっと手を合わせて思わず呟いた言葉は、どうやら響也の耳にもしっかりと聞こえていたらしい。
俺と同じくガッと目尻を赤くした響也の目が見開かれた。
「起きていたのか」
え?やっぱりリアル?
そうと気付けば嬉しさが極まり、気付いた時にはその戦慄く唇を深く塞いでいた。
「……!?……っ」
驚きに喉を震わせた響也だったけど、俺の目に野獣を見つけたのかビクリと身を固まらせた。それに対して遠慮なくその咥内を暴き吸い付いていると、諦めたのか、その気になったのか。響也の手がおずおずと俺の背に回ると暴れる俺の舌を捕らえて絡めてくれた。
そのまま味わい満足して離れた頃にはお互いに息が上がっていた。
「っふ、はぁ……。侑真……君という人は……」
息と乱れた服を整えて呆れ戸惑い言う響也は、しかし響也自身も俺を求めてくれているのがわかる目をしていた。
「ごめん。暴走しかけた」
「しかけ!?あれでか??若いというのはそうだったかな……」
というより響也が今まで淡泊過ぎたのか、性に興味が無さ過ぎただけな気もする。
尊が生まれた経緯とそれからの奥さんとの生活や仕事状態を鑑みるに、元々響也はこっち方面に疎いんだろうな。初心といか手慣れていない感はするのに応じられる程度には経験している。
あー。その相手があの人だったんだと思うと怒りと嫉妬が湧いてきた。駄目駄目こんな感情は捨てだ捨て!響也に余計な不安や心配を掛けたくない。
「んー、まあこういうのは人それぞれだろ」
自分の過去を振り返ろうとしていた響也の思考を無理矢理断ち切る。
響也もそれはそうかと考えるのを止めて、
「でもこんな暴走したのは響也が初めてだな」
続いた俺の言葉に艶の増した顔で口を引き結んだ。
好きな人からの初めてにこんなに心躍れる自分がいる事に驚き、そして素直に嬉しいと思える。それは響也も同じなんだと思えた。
「このままだと押し倒しちゃいそうだから何か頼もう」
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