繋がる想いを

無月

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恋人編

21.温泉旅行

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冬。寒いと欲するものがある。
暖かい炬燵。
暖かい鍋。
そして熱い温泉。

「やっぱり良いもんだな」

都心には無い雪景色を見ながらの露天風呂。空気は冷たいけど湯船の中は熱いから気持ちが良い。

「尊にはわかって貰えなかったがね」

隣で肩を合わせる響也が苦笑いで残念そうだ。

「子供はそもそも体温高いし、寒さに強いからな」

実際に駅のホームで素足を出しているのを見ると心配になる。でも良く考えたら俺も実家じゃ雪の中半袖で走り回っていたな。と不思議な気持ちになるんだよな。
冷える肩に温泉を掛けて温める。これもまた気持ちが良い。
隣を見れば響也も力の抜けた穏やかな顔で温泉を満喫している。

「あ……」

ふと視線を下にずらして見つけてしまった。

「うん?どうしたね」

俺の視線に気付いて訝し気に聞いてくる。
俺は言ったものかどうか逡巡して頭を掻いた。

「ごめん。付いてる」

自分の鎖骨を指でトントンと叩き、響也の耳に顔を近付けて囁いた。
流石にね。人がいるし、聞かれるのはちょっと。俺が付けた跡だし。
響也は俺の意図した事に気が付いて体を赤らめた。そして首まで体を沈めた。

「君が付けたものだ。謝る必要は無い」

恥ずかしそうに。けれど恨みがましくもある目で見上がる響也。上目遣いになってて直前の光景も相まって、下半身にくる。
濁り湯で良かった。でも暫く出られなそうだ。
微妙に居住まいを変えた俺に、響也も気付いたのか視線を一回俺の見えない下半身に向けてから彷徨わせた。

「今度俺にも付けて」

俺も上体を沈めてそっと言った。
響也が彷徨わせていた目を俺に戻して嬉しそうに笑う。

「それは今夜にでもしたい申し出だ」
「尊がいるから無理だろ」
「わかっている。帰ったら存分に楽しませて貰おう」

クスクスと笑って大人の悪戯をしている気分。

温泉以外での体の熱が落ち着いて、やっと部屋に戻った時には半ば湯あたり気味だった。

「お帰り父さん。侑真パパ」

少し遅くなっても尊は追及しないですんなり迎え入れてくれる。小学生なのに俺より大人だと感じる時がある。

「夕食の準備出来てるよ」

見れば畳に置かれた机は片付けられている。もう時期予定された配膳の時間だ。本当に尊は出来た子だ。

「ありがとう尊」

お礼を言って席で待つ。
夏祭りの時とは違い、三人とも温泉宿の浴衣を着ている。
俺は少し前を緩めに着ているが、響也も尊もきっちり着ている。
と思っていたら響也が近寄って来た。

「しっかり着れないかね?目のやり場に困るのだが」

耳元で呟かれて苦笑した。

「響也でも俺の体見て欲情してくれるんだ」

耳元に呟き返すと憮然とした顔をされた。

「私を何だと思っているのか。好いた相手に昂る気持ちはあるよ」

床に置いた手と、胡坐をかいた足に手を置かれ、又しても耳元で呟かれた。
少し悩まし気な吐息に息を呑む。

「?」

ずっと耳元で応酬していたからか、尊が首を傾げているのを見て気持ちを落ち着かせる。

「あー。お酒、は飲まない方が良いか」
「大人って好きだよね。僕はジュース飲むから侑真パパも好きなの飲みなよ」
「そうか?それじゃお言葉に甘えて」

何とか誤魔化すのに成功すると、俺は響也と何を飲もうか相談しだした。

「群馬の酒飲もうぜ」
「勿論だとも」

お互い酒は嗜む。普段飲まない銘柄にワクワクする。
色気を忘れて夜の盃を楽しむ俺達に、尊が呆れた目で見るまであともう少し。

因みに帰ってから響也に跡を付けて貰ったけど、やったことが無かった響也にレクチャーするのは、とても楽しかったです。

これからもこういう穏やかで幸せな日々が続いていきます様に。
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