繋がる想いを

無月

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恋人編

閑話.子心親知らず

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僕の父さんは恋愛下手だ。
何せあの碌でも無い母さんに捕まる位だから。
まあ、尤もそんな母さんとも無事離婚してくれたし、僕も紆余曲折はあったけれど父さんの元で暮らせているから良しとしよう。これからは僕が父さんを陰ながら悪い女の魔の手から守れば良いしね。

何より今は……。

「おはよう尊。朝ご飯出来てるから顔と手を洗っておいで」

そう言ってキッチンから顔を向けて笑顔をくれるのは父さんじゃない。
けれど僕にとっては父さんと同じ位に大切な家族。何れ近い内にさっさと結婚してくれれば良いのにと思うけれど、今の日本じゃそれは出来ないのがもどかしい。

だってその人は男の人だから。

「おはよう尊。おはよう侑真。良い匂いだね」

僕の後ろから声を掛けてきた人こそ僕の父さん。

「おはよう響也」

キッチンにいる男の人、侑真パパは僕に向けるより甘い顔で父さんに朝の挨拶を返す。
それにやっぱり甘い笑みで返す父さん。

そう、二人は恋人同士だ。

知り合ったのは僕がいない間だったけど、恋人になったのは僕が父さんの元に戻ってから。何なら付き合うまで誘導した。侑真のご飯に胃袋を掴まれたのは父さんだけじゃなくて僕もだからね。
あとは本当の第二の父さんになってくれればいいけど……、やっぱりカナダが一番かな?
うん。英語もっと頑張ろう。あと何語覚えれば有利かな?

美味しい朝食でお腹を幸せで満たしながら、僕は今後の人生設計を描いた。

そんな朝の幸せを噛み締めながら登校した学校では、少しの奇異の目を感じながら過ごしている。
まあ、理解は出来るけれどね。僕から言わせれば他人の事なんてほっとけば良いのにと思う。

「タケ、またスンって顔してるぞ」

机に教科書を入れていると、数少ない友人の一人が声を掛けて来た。

「潤。おはよう」
「おう。はよ」

朝の挨拶をすれば潤樹じゅんきこと潤は、ニカリと笑って返してくれる。小学入ってからの付き合いだけどいつも人好きのする明るさで好感が持てる。
潤と話してると周囲の視線が強くなる。ひそひそ小声で話しているのはわかっているけど、正直どうでも良過ぎて何話しているのかまでは知らない。

「しょーもな」

潤は知ってるらしくて視線の先を一瞥すると唾棄するように言い捨てた。
僕に顔の事言うけど潤も今の顔は冷たいって気付いてるのかな。僕に向けたものじゃないからどうでも良いけど。

「なあ、今日ってリモッテ先生の日だろ。楽しみだよな」

一瞬出た冷たい顔を感じさせない笑みで言う潤は、もう今日の英語の授業の事で頭がいっぱいになってる。
かく言う僕もリモッテ先生の授業は好きだ。地元の話を織り交ぜてくれて楽しい。僕は隠れ観光名所の話が好きで、潤は地元グルメに夢中。何なら授業終わりに友人達と突撃してもっと話を聞きに行く事もあるくらい。

「この前のは授業中なのにお腹の虫が鳴るかと思ったよ」
「あれな!家帰って速攻で調べて連れてって貰った!旨かったぞ」
「そうなんだ。侑真パパなら言えば作ってくれるかな」

侑真パパの料理の腕は日々上がっているらしい。何でも父さんと並んで作る楽しさと食べさせる喜びに目覚めたんだとか。確かに二人でキッチンに並んでる事多いもんね。

「それはどうでしょうか」

侑真パパの料理を思っていたら後ろから声が掛かった。潤とは別の声だ。
振り向けば後ろの席の龍之輔りゅうのすけが眼鏡をクイッと上げている。

「おはようリュー」
「おはようございます。尊、潤樹」
「はよっす」

挨拶をすれば返してくれる。真面目なリューは名前こそ渾名で呼んでくれないけど、こっちからは呼ばせてくれるし選択授業も被っている事が多いから一緒にいる率は高め。今の学年になってから初めて同じクラスになって、その誰に対しても変わらない態度が居心地良くて直ぐ友人になった。

「侑真さんは話に聞いた限りでは普通の社会人男性でしょう。趣味とはいえ先日の料理は一般家庭で作るには材料の入手が困難ではないかと思われます」
「そうなの?」

教科書を仕舞いながら言うリューに、僕はキョトリと瞬きする。
わかっていない僕にリューが使う材料を説明してくれて、成程。買えたとしても残った材料の消費に苦労しそうだと納得した。
でもそれじゃあ今は諦めかな。お店に連れてって貰う程ではないし、食べたければ自分で稼げるようになったら現地行こう。

そう思っていた数日後の休日。
珍しく少し遠出をして外食をするって言う父さんと侑真パパに着いて行ったその先で、件の料理を食べる事が出来た。

え?何ていうタイミング?
って思っていたら、潤とリューが父さんと侑真パパが揃って買い物している所に突撃してそれとなく話してくれたんだとか。
僕の友達が友情に熱い。
外食明けの登校日に聞いてちょっと感動したのはそのまま本人達に伝えた。

「タケはさ。もっとあの二人に甘えていんじゃねーの」
「そうですね。見た所あの方達は尊に甘えて貰える方が幸せそうです」

笑って言う友人達が大好きだ。
ていうか僕って案外気を使い過ぎてたんだなって気付けた今日この頃だった。
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