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本編

12歳-7

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 『や……ダメっ』
 『何がダメなんだい?』
 『それっ、も、離してぇ』
 『ふふ。こんなに感じてるのに?』
 『気持ち良すぎてっ、もぅ無理ぃ』
 『もう?まだ僕と一つになって無いでしょう?』
 『も……早くぅ』

 「早くぅ。じゃねえええええ!!」
 「ん?何がだい?」

 ついうっかり夢を思い出してしまった俺の心の叫びが表に出てしまった。
 いきなり叫んだ俺の心情を読んだのか読んでないのか。デイヴィッドがどこか嬉しそうに聞き返して来た。

 「いや、何でも無いヨ」

 視線を逸らして言うと目を眇められた。笑顔で。
 読心術使えたりしてないよな?
 
 「アレ」
 「そんな事より!昨日の!キモ侯爵とカマドゥラ子爵どうなったんだ?」

 夢の話は精神的にヤヴァいからデイヴィッドの言葉を遮って無理矢理話題を変えた。
 デイヴィッドは残念そうに苦笑を漏らしている。危ねー危ねー。

 「二人とも取り調べ中だよ。
 と、言ってもアレクに害が有りそうな貴族は全て事前に調べ済みだからね。
 彼等も行動を起こさなければ見逃してあげてたんだけど」

 ……怖っ……。
 いつの間にそんな事してたんだよ。
 え?婚約(仮)した時から?君その時まだ3歳だったよね?
 え?大好きな人を守る為なら歳は関係ない?へーそう。

 ……って、んなわけあるかーーー!!

 「俺だって3歳児ん時は普通に幼児してたぞ!?」
 「え?普通の3歳児は新しい魔術構築したりしないよ?」

 突っ込み返された……。

 「いや、ほら。俺の場合は自分の性別を正す為だったし」
 「その後も結構色々開発したよね」

 ハイ。めっちゃ調子に乗って「憧れの~」なあの技やこの技を再現シマシタ。
 後悔も反省もしてないし、これからもする気は無い!キリッ!
 版権問題さえなければ多様してるところだ。
 ちょこっと弄ってパチモンな魔術に変容させて使ってるけど。

 「よく覚えてるな。幼児の頃ってあんま覚えてないもんじゃねえ?」
 「アレクも覚えてるでしょ」

 俺の場合は前世から記憶持ち越しだから。とは言えないよなー。
 結果的に俺は乾いた笑いしか出来んかった。

 「取り敢えずあれだな。過去は過去だし。
 今は兎に角着替えたい」

 忘れるとこだったけど、現在進行形でスケスケネグリジェなんだよな。
 ちな、デイヴィッドは半裸だ。
 俺より引き締まったボディを殴りたくなる。くそー、もっと鍛えねえとな。

 「とても魅力的なのに勿体無い」
 「デイヴも着るならまた着てやるよ」

 本気で残念そうに言うから反撃してやる。

 「本当?なら用意しとくね」

 全く通じないどころかリフレクされた。何故こうなるし。
 まあいいか。デイヴィッドのスケスケネグリジェは見てみたい気もする様な気がするし。
 ネグリジェって言っても女物じゃ無い。男物のスケスケネグリジェだ。
 何処に需要が有んのか知らんけど、良い素材の所為か割としっくりくんだよな。割と。
 流石に下着まで女物着させられてたらドン引くとこだったけどな!

 俺は残念そうな顔をしたデイヴィッドの侍女に着替えを受け取った。
 そうか、スケスケを用意したのはお姉さんですね。
 それを受け取ったデイヴィッドもデイヴィッドだがな。

 「そんなに良いもんかなー?スケスケ。
 こんなん面白ネタ位にしかならなくね?」

 着替えながら呆れる俺にデイヴィッドは面白そうに笑った。

 「そう?寝心地が良いみたいで割と使用してる人いるみたいだよ」
 「まぢか」

 衝撃の事実ってヤツだな。
 確かに肌触りがサラサラしてるから気持ち良いけど。

 「寧ろ自分に好意を寄せてる者の前で全裸になる事の方が問題じゃない?」

 デイヴィッドが俺の裸体を見ながら言った。

 「そうか?俺達の場合今更じゃね?」

 小っこい頃は一緒に風呂も入ったし。鍛錬後の汗だってパンイチで水流すなんて日常茶飯事だし。
 ここで「きゃーエッチ!」とか言う方がキモイよな。うんキモイわ。
 真顔で答えた俺に、デイヴィッドも真顔で目を眇めて来た。
 あれ?何か怒ってる?

 「……僕だってアレクの体で欲情位するんだよ」
 「へわっ!?」

 デイヴィッドが急に俺の腕を掴んで手繰り寄せてきた。
 素肌がぶつかり合ってもう片方の腕で俺の腰をホールドされる。
 そのまま尻から腿にかけて撫でられて体がビクついた。

 「なっ何だよ急に!」

 身を捩って離れようとしても際どい所を撫でられて快感の波に襲われて止まってしまう。
 ヤバい。さっきの熱がまだ冷め切って無いんだ。それ以上されたら我慢効かなくなる!

 「判った!判ったから!俺が悪かった!今度から別室で着替えるから!」

 腿から腹辺りまでゾクゾクとした快感が走って恥ずかしい。
 密着してるから俺のが立ち上がってんの丸判りだしな!
 でもデイヴィッドは手を止めてくれない。どころか首筋を噛み付く様に舐められた!
 のわああ!ゾワッて来た!でも嫌じゃないのは俺も結局デイヴィッドに心を許してるからだろう。

 「それは却下。僕はただアレクの事をどれだけ愛しているかちゃんと判っていて欲しいだけ」
 「!?」

 腰を更にグイっと密着してくるデイヴィッド。
 俺の猛りが判るという事はデイヴィッドのも判るという事で……。
 うん。ガン立ちってやつかい?
 デイヴィッドの状態が判った途端、俺は判りやすく赤面してしまった。
 俺、ちゃんと判って無かったのかも。
 小っこい頃から愛を囁かれて、日常になってた。
 ちらと見るデイヴィッドは熱に浮かされて蕩けているようで……。怒っているのか目が怖い。

 「う……ん。ごめん。俺恋愛とかしたことなくて……。
 判った様で判って無かった……かも?」
 「うん。僕もそんな(恋愛音痴な)アレクも大好きだけど。
 流石にそろそろ判って欲しいかな」

 素直に謝った事で落ち着いたのか、デイヴィッドの不埒な手は止まってくれた。
 でも腰は未だに密着してていたたまれない。

 「でもな?やっぱ俺は攻めたいんだよ。突っ込まれるより突っ込みたいの」
 「うん。それも判ってる。でも僕もアレクを抱きたい」

 俺が真面目に言えば、デイヴィッドは困った様に笑う。

 「だから僕に抱かれても良いって思って貰えるように頑張るよ」

 全然困って無かった。
 目が怪しく光ってんですけど!?

 「アレクも僕が抱かれても良いって思える様に頑張って?
 先に思った方が敗けって事で」

 そう言って楽しそうに強気に笑うデイヴィッド。
 けれど俺はそれを受けるしかない。
 だって漢として勝負事に逃げる訳にはいかないからなっ!

 「その勝負乗ってやる!そして勝つ!」
 「ふふ。ありがとう、(乗り易くて馬鹿可愛い)アレク愛してるよ」

 こうして俺の尻を掛けた戦いは火蓋を落とされた。

 尚、この後抜き合いっこに発展したけど俺の沽券に関わるので無かったことにする事にした。
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