我は最凶の魔王にして腐男子なり!

無月

文字の大きさ
5 / 9

勇者が同情した目でこちらを見ている!仲間になりますか?

しおりを挟む
キン。という澄んだ音で勇者の剣が鞘に収まったことを知る。
そして勇者は空いた両手で我の両肩をそっと優しく掴んで来た。

「寂しかったんだな。でもだからと言って人間の社会を脅かしては誰も友達にはなってくれないぞ」

あれ?これ我ぼっちって勘違いされてる?

「友達はいるぞ?腐海の愉快な仲間達は皆気の良い者達だし、キョーコ先生は尊敬してやまない」

うむ。今では腐男子も徐々に増え始め、たまに一緒に泊まり掛けで聖地巡礼するし、次のオフ会では新たに腐男子が仲間になったから紹介してくれると言ってたし。
我結構充実しておるな。

「洗脳?」
「腐男子たる者姑息な手段は使わぬ!彼等とは正々堂々とした腐男子ライフを謳歌しておる!」

堂々と胸を張る我。ふふんと鼻も鳴らしておこう。

「何故可哀想な者を見る目をする!」
「いや。何か。すまない」

目を逸らしおる。

「おはよーユウー。それ誰だ?」

そんな折にテントから武闘家が出て来た。腹を掻きながら欠伸をしておる。魔導士はまだ出て来ていない。

「おお目を覚ましたか武闘家よ」

尊大に胸を反らせ上から目線で指を差してやる。貴様には後で攻めの何たるかを叩き込んでやらねばならんからな。

「おう。で、いつの間に仲間増えたんだ?」

全く動じず勇者を見て我を指差し返すとは、流石勇者の仲間と褒めてやろう。

「仲間ではない。こいつはま」
「くわーはっはっは!我を仲間と呼称するとは見事と褒めて遣わそう!貴様が望むのであらば間近で貴様と魔導士とのちゅっちゅらぶらぶを見届けてくれようぞ!」

あ。しまった。また勇者の言葉遮っちゃった。てへぺろ。

「すまぬ勇者よ。もう一度言ってくれ」

指をつんつんして聞けば、据わった目で睨まれちゃった。そうだよね。人の話聞いてなかったの二度目だもんね。我が悪いんだわかってる。

「こいつはま」
「へー!すっげえ偉そうな奴だな!どっかの国の偉い人か?」

勇者がもう一度言ってくれようとしたのに今度は武闘家が遮ってしまった。今のは我悪くないぞ。
しかもずかずか我に近寄りバンバンと背中を容赦なく叩いて来る。こやつ、怖いもの知らずか。我一応偉い人認識されてんだよね。

「俺は武闘家やってるゴドウィンってんだ!気軽にゴーって呼んでくれよな!」

尚もバシバシ叩きながらニカッと歯を見せて笑ってくる武闘家。その笑顔は是非とも魔導士に向けて欲しい。

「うむ。我は魔王である。気軽にマー君か腐男子一号と呼ぶ事を許そう」

バシバシ叩いていた方の手を避け、逆に握って握手してやれば、武闘家は一瞬目を見開いてからニヤリと不穏な笑みで握り返して来た。

「やるじゃねえか。マー君か、こりゃ楽しみな仲間が増えたぜ」

うん?血管浮き出る程握り返してきて、そんなに我が仲間になるのが嬉しいのか。よし良い子良い子してやろう。
その短いツンツンとした頭に手を伸ばしたが、手が届く前に阻まれた。

「おい。こいつは魔王と名乗ったのだぞ。何故そんなに悠長に構えている」

勇者である。しっかり我の手首を抑えている。正直これ位無視して手を伸ばせるが、もしやこれは勇者の嫉妬かと思うと手も足も出せぬ。
しかし勇者よ。武闘家の相手は魔導士であるぞ。噛ませ犬は他に任せよ。巫女とか適任ではないか。
とうむうむしてたら目を細めて睨まれた。

「お」
「マオーだろ?ちゃんと聞いてたって。俺そんなに耳悪くねえぞ」

何か言おうとした勇者だったが、その前に心外だという顔で口を尖らせる武闘家が頓珍漢な事を言って遮ってしまった。一度ならず二度までも。貴様さてはお馬鹿ワンコ系だな?
大好物ですありがとうございます!

という訳で。武闘家の勘違いと人の話を聞かないトークで、起きて来た魔導士と巫女を巻き込んだ末に勇者一行に我が仲間に加わった!
身近でBL見れて我感無量である!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

絶対に追放されたいオレと絶対に追放したくない男の攻防

藤掛ヒメノ@Pro-ZELO
BL
世は、追放ブームである。 追放の波がついに我がパーティーにもやって来た。 きっと追放されるのはオレだろう。 ついにパーティーのリーダーであるゼルドに呼び出された。 仲が良かったわけじゃないが、悪くないパーティーだった。残念だ……。 って、アレ? なんか雲行きが怪しいんですけど……? 短編BLラブコメ。

龍は精霊の愛し子を愛でる

林 業
BL
竜人族の騎士団団長サンムーンは人の子を嫁にしている。 その子は精霊に愛されているが、人族からは嫌われた子供だった。 王族の養子として、騎士団長の嫁として今日も楽しく自由に生きていく。

何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。 ……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、 気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。 「僕は、あなたを守ると決めたのです」 いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。 けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――? 身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。 “王子”である俺は、彼に恋をした。 だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。 これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、 彼だけを見つめ続けた騎士の、 世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

猫の黒たんは騎士団長!?

ミクリ21
BL
ある日、青年はボロボロの黒猫を拾いました。 青年は猫に黒たんと名付け、可愛がりました。 だけどその猫は、実は………!?

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

処理中です...