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本編
15歳-3
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俺達は訓練用のダンジョンにやって来た。
初日から!?とか思うかもしれないが、災害も人災も予告して来てはくれない。いつ来ても対応出来るスキルを身に付けるのも授業の内だ。
「今日は森林系か」
「草木に隠れる敵対者が厄介だね」
担当教師からの指示によれば、今日は森林に潜む他国からのスパイを見つけ、捕縛するまでが内容だ。ヒントは無し。この森に潜んでるらしいって情報だけで対処を迫られてる。
「とりま探知してみるか」
俺の気配探知は相変わらず大雑把だ。でも人とそれ以外はわかるだけでも随分違う。
「近くには人間はいないな」
「そうだね、敵意も無いし。もっとも簡単にわかる様では授業にならないけれど」
「だべな。ってもスパイがいるのが確定してる以上は何かしらあるだろ」
「何処かしらに潜伏してるとして、索敵範囲に掛からず且つ今日潜伏出来る場所」
「なら東に2キロの窪地か西南西に1.5キロの崖。それと……」
既に詳細まで把握してるダンジョンの地形を思い浮かべて潜伏に適した場所をピックアップしていく。
最後言葉を低くして言い淀んだ内容を、デイヴも同じ事を思ったらしく小さく首肯で同意を示した。これぞ長年の付き合いからなるツーカーってヤツだな(ドヤァ)。
「とりま、他の生徒の出方を待つか」
デイヴとしても王族として将来を担える人材を見定める必要があるだろうしな。
探知を継続しつつ他の生徒の動向を見れば、単独行動する者、チームを組む者其々いる。チームを組む何組かは俺達を仲間に入れたそうにチラチラ見ていたけど、敢えて気付かない振りをした。
ま、王族相手に声は掛けられんだろうな。
「殿下!是非私のチームに入って下さい!
私は本物のスパイを捕らえた事もあります!絶対お役に立ちます!」
うわぁ、とか思ったらいたよオツムお花畑。どういう教育受けてんだろうね。
ナルシス成分を過剰放出してる男子生徒に、俺もデイヴも言葉無く営業スマイルを貼り付けた。目のハイライトが消えているのはご愛嬌。
彼はカーメムー侯爵家の者だったか。成る程、あの家系か。それじゃあ仕方ない。
「カーメムー殿、殿下には私が付いている。貴殿は気にせず授業を全うするように」
「む。そうは言うがね。都心の安全地帯でヌクヌク育った者より辺境の地で文武共に鍛えられた私の方が余程御守り出来る故、オルティス殿こそご自身を優先したまえ」
うーわー。流石カーメムーの系譜。頭悪い。なまじ戦闘力が有るだけに自信過剰が過ぎる。
「特級クラスに入れなかった人のセリフとは思えないな」
「ふん。それこそ何かの間違いというもの。
大方何処ぞの上位貴族が金と権力にモノを言わせて入った所為であろうな」
選択授業は合同クラスで行われてる。
特級以外は選択授業の種類も少ない上に取れるの一教科のみ。その少ない選択授業で被るのが戦闘学。
カーメムー子息は普通クラスでも一応戦闘成績は上位にいたけど、この分じゃ一般常識は赤点だろうな。
冷めた目で見返せば、何を勘違いしたのか勝ち誇った顔で胸を逸らす。
「さあ、殿下。私と共に」
「特級クラスに人数制限は無い。
何より王立である学園に不正が通ると本気でお思いか」
満面の笑みで恭しく手を差し出したカーメムー子息。しかし怒りの顔を見せるデイヴに言葉を途切れさせた。
何時もなら感情を顔に出したりはしない。けどカーメムー子息相手には素直に出さないと全く伝わらないと、デイヴも気付いていたんだなぁ。
俺から見たらワザとらしい怒りに、カーメムー子息は顔面蒼白になって震えている。
「も、申し訳っ……!」
「下がられよ」
「!っひ!はっはひ!!」
謝罪すら真面に発せられなくなったカーメムー子息に、ダメ押しの殺気を放てば屁っ放り腰でアタフタと離れていった。
ありゃチビったな(呆れ目)。
「殺気はやり過ぎじゃね?」
「アレクを貶されたからね。寧ろ足りない位だよ」
トーシロ相手だと嗜めたのに、俺の為に怒ったと言われれば、俺も言葉を詰まらせて視線を逸らすしかない訳で。若干ほおが熱いのも多分仕方ない事だろう。
「今ので完全に声掛けようってヤツいなくなったな」
「そもそも危険人物を捕えようって内容で王族巻き込むのは減点対象なんだけどね」
「おや?んじゃ俺は一人でやった方が良いのか?」
「それはそれ。これはこれ。
まだ良い返事は貰えてないけど、実質的にアレクは私の婚約者候補だからね。ペアで当たり前さ」
微笑み一歩近付く。肩が触れそうな位置に接近したデイヴに熱の篭った視線を寄こされて、心臓が跳ね上がった。
だから。こういうとこ。マジで。
心の語呂力が低下を見せるが、俺は鍛え上げた表情筋をフル稼働させて平静を装った。なのにデイヴにクスリと意味深に笑われ崩れそうになった。
「さて、生徒が誰もいなくなったし、私達も動こうか」
「んだな。って事で先生、最近どう?」
「オルティス、今は授業中だぞ」
俺とデイヴ、そして担当教師だけになったスタート地点。俺はそこから森方面ではなく、教師に向かって行った。
軽い調子で片手を上げて気軽に声を掛けた俺に、始め教師もお説教モードを作り出した。
「授業してますよ」
「ほう?」
けど続く俺の言葉に人が悪い笑みを浮かべるのだった。
初日から!?とか思うかもしれないが、災害も人災も予告して来てはくれない。いつ来ても対応出来るスキルを身に付けるのも授業の内だ。
「今日は森林系か」
「草木に隠れる敵対者が厄介だね」
担当教師からの指示によれば、今日は森林に潜む他国からのスパイを見つけ、捕縛するまでが内容だ。ヒントは無し。この森に潜んでるらしいって情報だけで対処を迫られてる。
「とりま探知してみるか」
俺の気配探知は相変わらず大雑把だ。でも人とそれ以外はわかるだけでも随分違う。
「近くには人間はいないな」
「そうだね、敵意も無いし。もっとも簡単にわかる様では授業にならないけれど」
「だべな。ってもスパイがいるのが確定してる以上は何かしらあるだろ」
「何処かしらに潜伏してるとして、索敵範囲に掛からず且つ今日潜伏出来る場所」
「なら東に2キロの窪地か西南西に1.5キロの崖。それと……」
既に詳細まで把握してるダンジョンの地形を思い浮かべて潜伏に適した場所をピックアップしていく。
最後言葉を低くして言い淀んだ内容を、デイヴも同じ事を思ったらしく小さく首肯で同意を示した。これぞ長年の付き合いからなるツーカーってヤツだな(ドヤァ)。
「とりま、他の生徒の出方を待つか」
デイヴとしても王族として将来を担える人材を見定める必要があるだろうしな。
探知を継続しつつ他の生徒の動向を見れば、単独行動する者、チームを組む者其々いる。チームを組む何組かは俺達を仲間に入れたそうにチラチラ見ていたけど、敢えて気付かない振りをした。
ま、王族相手に声は掛けられんだろうな。
「殿下!是非私のチームに入って下さい!
私は本物のスパイを捕らえた事もあります!絶対お役に立ちます!」
うわぁ、とか思ったらいたよオツムお花畑。どういう教育受けてんだろうね。
ナルシス成分を過剰放出してる男子生徒に、俺もデイヴも言葉無く営業スマイルを貼り付けた。目のハイライトが消えているのはご愛嬌。
彼はカーメムー侯爵家の者だったか。成る程、あの家系か。それじゃあ仕方ない。
「カーメムー殿、殿下には私が付いている。貴殿は気にせず授業を全うするように」
「む。そうは言うがね。都心の安全地帯でヌクヌク育った者より辺境の地で文武共に鍛えられた私の方が余程御守り出来る故、オルティス殿こそご自身を優先したまえ」
うーわー。流石カーメムーの系譜。頭悪い。なまじ戦闘力が有るだけに自信過剰が過ぎる。
「特級クラスに入れなかった人のセリフとは思えないな」
「ふん。それこそ何かの間違いというもの。
大方何処ぞの上位貴族が金と権力にモノを言わせて入った所為であろうな」
選択授業は合同クラスで行われてる。
特級以外は選択授業の種類も少ない上に取れるの一教科のみ。その少ない選択授業で被るのが戦闘学。
カーメムー子息は普通クラスでも一応戦闘成績は上位にいたけど、この分じゃ一般常識は赤点だろうな。
冷めた目で見返せば、何を勘違いしたのか勝ち誇った顔で胸を逸らす。
「さあ、殿下。私と共に」
「特級クラスに人数制限は無い。
何より王立である学園に不正が通ると本気でお思いか」
満面の笑みで恭しく手を差し出したカーメムー子息。しかし怒りの顔を見せるデイヴに言葉を途切れさせた。
何時もなら感情を顔に出したりはしない。けどカーメムー子息相手には素直に出さないと全く伝わらないと、デイヴも気付いていたんだなぁ。
俺から見たらワザとらしい怒りに、カーメムー子息は顔面蒼白になって震えている。
「も、申し訳っ……!」
「下がられよ」
「!っひ!はっはひ!!」
謝罪すら真面に発せられなくなったカーメムー子息に、ダメ押しの殺気を放てば屁っ放り腰でアタフタと離れていった。
ありゃチビったな(呆れ目)。
「殺気はやり過ぎじゃね?」
「アレクを貶されたからね。寧ろ足りない位だよ」
トーシロ相手だと嗜めたのに、俺の為に怒ったと言われれば、俺も言葉を詰まらせて視線を逸らすしかない訳で。若干ほおが熱いのも多分仕方ない事だろう。
「今ので完全に声掛けようってヤツいなくなったな」
「そもそも危険人物を捕えようって内容で王族巻き込むのは減点対象なんだけどね」
「おや?んじゃ俺は一人でやった方が良いのか?」
「それはそれ。これはこれ。
まだ良い返事は貰えてないけど、実質的にアレクは私の婚約者候補だからね。ペアで当たり前さ」
微笑み一歩近付く。肩が触れそうな位置に接近したデイヴに熱の篭った視線を寄こされて、心臓が跳ね上がった。
だから。こういうとこ。マジで。
心の語呂力が低下を見せるが、俺は鍛え上げた表情筋をフル稼働させて平静を装った。なのにデイヴにクスリと意味深に笑われ崩れそうになった。
「さて、生徒が誰もいなくなったし、私達も動こうか」
「んだな。って事で先生、最近どう?」
「オルティス、今は授業中だぞ」
俺とデイヴ、そして担当教師だけになったスタート地点。俺はそこから森方面ではなく、教師に向かって行った。
軽い調子で片手を上げて気軽に声を掛けた俺に、始め教師もお説教モードを作り出した。
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「ほう?」
けど続く俺の言葉に人が悪い笑みを浮かべるのだった。
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