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バルビス公国への旅立ち
20 供物姫の結婚 4
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バルビス公邸は広大だった…
邸、と護衛騎士フレイリー卿が言っていたが、最早これは屋敷では無く城であろう。見張り塔が城壁の四隅に高く聳えているのが見える。その城壁の高さを超える横に長い建物が3棟城門に向かい合わせる様に建てられていて…どの棟の屋根も傾斜が付いた形で当たり前のように雪がへばりつき塔の色が何色かさえもわからない。
「まずは妃を休ませよ!」
温かな馬車からまたもや死に物狂いの去勢を張って優雅に邸の中へと入ってきたシャイリー妃は一斉に傅く使用人一同が玄関ホールに並び待っているのを目にすることになった。城の中に入ればそこが石造であるのが分かる。広いホールに辿り着くまで大きな扉を2つ潜った。
「おかえりなさいませ、殿下。妃殿下のお部屋は既に用意されております。こちらへ…」
やっと休むことができる。シャイリーの素直な感想である。アールスト国を出てからずっと旅尽くめ。バルビス公国に入っても1日たりともゆっくりと疲れを癒やす間も無く結婚式だったのだから。
「ありがとう。貴方は?」
並び畏まっている使用人の多い事だが、半数近くは騎士の様だ。
「私は執事長のモーリスと申します。ローニーのご挨拶はお済みですね?」
「ええ。」
「では、追々妃殿下付きの侍女をご紹介致します。先ずは、お身体をお休めください。」
トライトスと執事長モーリスに進められるままシャイリーは部屋へと向かう。ホール中央から2階へ伸びる階段を上がれば暖かそうな絨毯が引き詰められた廊下があり、3階、4階へはそのまま続きの階段を登る。公主の私生活、執務室、客室用の邸は城門から正面に位置する棟で、向かって右側が使用人、左側が騎士団の棟となっており公主の私室は3階に位置する。バルビス公主と妃はそれぞれ部屋があり、それとは別に夫婦の部屋があるのだ。が、モーリスがシャイリーを案内した部屋は妃専用の部屋であった。
「まずは体を休めよとの事。本日はこちらでごゆっくりとお寛ぎ下さいませ。」
「ありがとう。そうするわ。」
クタクタである…
「妃殿下、湯の用意ができております。お身体を温めましょう。」
部屋の前に控えていた3人の侍女の申し出をシャイリーはありがたく受けることにする。
「湯か、それは良いな。まだ妃の顔色が悪い。良く温まってきなさい。」
「お心遣い感謝いたしますわ、殿下。」
「さ、こちらへ。」
侍女達の手伝いを受けながらシャイリーはゆっくりと湯に浸かることができた。身支度を整え終われば部屋には豪華な食事が運ばれて来る。
「本日はこちらでお食事をお取りくださいませ。明日、屋敷の中をご案内いたします。」
神殿から同道していたローニーも疲れているだろうに、疲れも見せずにテキパキとよく働く事だ。
「殿下のお見えです。」
2人分の食卓が整ったところでトライトスが訪室して来たのだが…
(外套を持っていらっしゃる?)
すっかりとトライトスも室内着にでもなってくつろいでいるものと思っていたのだが、トライトスは先程の騎士服から着替えもせず、少し厚手の外套持参で訪れてきたのだ。
邸、と護衛騎士フレイリー卿が言っていたが、最早これは屋敷では無く城であろう。見張り塔が城壁の四隅に高く聳えているのが見える。その城壁の高さを超える横に長い建物が3棟城門に向かい合わせる様に建てられていて…どの棟の屋根も傾斜が付いた形で当たり前のように雪がへばりつき塔の色が何色かさえもわからない。
「まずは妃を休ませよ!」
温かな馬車からまたもや死に物狂いの去勢を張って優雅に邸の中へと入ってきたシャイリー妃は一斉に傅く使用人一同が玄関ホールに並び待っているのを目にすることになった。城の中に入ればそこが石造であるのが分かる。広いホールに辿り着くまで大きな扉を2つ潜った。
「おかえりなさいませ、殿下。妃殿下のお部屋は既に用意されております。こちらへ…」
やっと休むことができる。シャイリーの素直な感想である。アールスト国を出てからずっと旅尽くめ。バルビス公国に入っても1日たりともゆっくりと疲れを癒やす間も無く結婚式だったのだから。
「ありがとう。貴方は?」
並び畏まっている使用人の多い事だが、半数近くは騎士の様だ。
「私は執事長のモーリスと申します。ローニーのご挨拶はお済みですね?」
「ええ。」
「では、追々妃殿下付きの侍女をご紹介致します。先ずは、お身体をお休めください。」
トライトスと執事長モーリスに進められるままシャイリーは部屋へと向かう。ホール中央から2階へ伸びる階段を上がれば暖かそうな絨毯が引き詰められた廊下があり、3階、4階へはそのまま続きの階段を登る。公主の私生活、執務室、客室用の邸は城門から正面に位置する棟で、向かって右側が使用人、左側が騎士団の棟となっており公主の私室は3階に位置する。バルビス公主と妃はそれぞれ部屋があり、それとは別に夫婦の部屋があるのだ。が、モーリスがシャイリーを案内した部屋は妃専用の部屋であった。
「まずは体を休めよとの事。本日はこちらでごゆっくりとお寛ぎ下さいませ。」
「ありがとう。そうするわ。」
クタクタである…
「妃殿下、湯の用意ができております。お身体を温めましょう。」
部屋の前に控えていた3人の侍女の申し出をシャイリーはありがたく受けることにする。
「湯か、それは良いな。まだ妃の顔色が悪い。良く温まってきなさい。」
「お心遣い感謝いたしますわ、殿下。」
「さ、こちらへ。」
侍女達の手伝いを受けながらシャイリーはゆっくりと湯に浸かることができた。身支度を整え終われば部屋には豪華な食事が運ばれて来る。
「本日はこちらでお食事をお取りくださいませ。明日、屋敷の中をご案内いたします。」
神殿から同道していたローニーも疲れているだろうに、疲れも見せずにテキパキとよく働く事だ。
「殿下のお見えです。」
2人分の食卓が整ったところでトライトスが訪室して来たのだが…
(外套を持っていらっしゃる?)
すっかりとトライトスも室内着にでもなってくつろいでいるものと思っていたのだが、トライトスは先程の騎士服から着替えもせず、少し厚手の外套持参で訪れてきたのだ。
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