[完結]凍死した花嫁と愛に乾く公主

小葉石

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揺蕩い行く公主の妻

10 アールスト国の晩餐 6

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「それは…流石に苦しいのでは?代筆を取る事など珍しくもなんともないでしょうに?」

 何故それを使わずに手紙を書けないと?

「妃殿下はご自分が健勝であられる事をご自分で示したかった。ですから、誰にも代筆を頼まず、手が癒えてから書こうと、思われた……」

 うんうんうん…!何度も肯いているシャイリーにホートネルは渋い表情である。

「…なるほど…下手に誰かが取り繕った様に代筆するよりは…こちら側の不利益を敢えて見せていますから、現実味があると言えばありそうですね。」

(流石補佐官殿ですわ。お兄様も下手に取り繕った手紙などきっと見抜いてしまわれるでしょう。ですから私は自分で書くのです、と言えば信憑生が増しませんか?)

 シャイリーの声は補佐官クルースには聞こえない。けれどシャイリーは自分もこの参議に参加している一員のように嬉しそうに受け応えていた。

「ええ。妃殿下からの強い希望でと押し通してみてはいかがでしょう?」

「妃の希望か……」

 トライトスは静かに目を瞑り、何か思案しているようであった。

(ホートネル様。通常ですと、手を痛めた時の完治にどれくらいかかりましょうか?)

「筋を痛めたとしたら、少なくとも一月ほど安静にしていてほしいものですが……」

「ではホートネル殿。猶予は一月と?」

「あ、いえ…治り方は人によって違いましょうからなんとも…」

(では、その後は雪山を歩き回って風邪が悪化したとお伝えくださればいいわ。)

「………」

 ホートネルは答える代わりに僅かに首を振る。

(大丈夫ですわ。バルビスに来る前に、親しくしていた侍女に話したことがあるのです。バルビスに嫁いだら、思いっきり雪を楽しんでみたいと。ですから、私が外を歩き回ったと言っても私の側にいた者達ならば納得するでしょう。)

 公妃ともなろう人が外で雪を楽しむ……何の為に嫁いだのかと訝しまれてしまいそうな話だが。

「どうあっても、最低一月は猶予がある…」

「左様です、殿下。その間に新たに対策を立てましょう。」

「……分かった…」

 アールスト国王に対する対応が決まり肯くトライトスの表情は、更に険しくなった様に思うのは何故だろう……


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