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揺蕩い行く公主の妻

11 ルシュルー妃の決意 1

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 彩豊かな花々に飾られた大広間を分断に使用されている照明が昼のように明るく照らし出す中、艶やかなドレスに身を包んだ面々が整然と整えられたテーブルに着座して行く。
 色とりどりのサラダに果物、温かい数種のスープ、見るだけで食欲を刺激してくる肉や魚料理に、多種多彩なスイーツが給仕達の手で運ばれてくる。
 
 この晩餐で招かれる貴賓達はアールスト国王夫妻の側近くに席を設けられ、その他の妃と王の子供達は末席へと着座するのが慣わしであった。
 今晩の賓客はバルビス公国公主トライトス一行である。アールスト国王は暑さに弱い賓客のために着座するテーブルの下には巨大な氷塊を置き暑さを凌ぐ工夫を命じていた。これが無くとも神官であるホートネルがここに会するバルビス公国側の者の衣類には、僅かな冷却魔法をかけていたので暑さに弱い公国の人間であっても晩餐の間くらいは汗もかかずに過ごすことはできただろう。しかしバルビス公主トライトスにとってはこのアールスト国王の心遣いは非常にありがたかったに違いない。なぜなら薄地で作らせたとは言えど正装の上に、トライトスはバルビス公国を象徴するあの狐の毛皮を肩にかけていたのだから。

 穏やかな挨拶が済めば会食が始まる。しかしこの王族全員が着座しているだろう中にルシュルー第3側妃はおらず、その席は空席のままであった。

 アールスト国王子夫妻の前に伸びる長テーブルにはバルビス公主トライトス、神官長ホートネル、公主補佐官クルースの順に座っており、バルビス公国側の者達はこの常夏の暑さにも拘らず皆穏やかな表情で晩餐をとるのだった。

(お懐かしいわね…お兄様…)

 そんな静かな晩餐が続く中、シャイリーはもう何年もここに帰っていなかった様な気持ちで懐かしそうに兄王へ視線を送っていた。懐かしさとすぐにへこたれてしまった情けなさで恥入りそうになりながら、そっと、触れることのできないトライトスの肩に手を当てながら……














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