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揺蕩い行く公主の妻
12 ルシュルー妃の決意 2
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ざっと会場内を見回しても座っている王族の顔ぶれは変わらない。小さかたった兄王の子供達、王子や王女は少しばかり大きくなっただろうかとその場を離れる事が叶わないシャイリーはじっと温かな視線を送っているのだ。その懐かしい顔ぶれの中にアールスト国王の第3側妃ルシュルー妃がいない事で胸が痛み、すぐにまたシャイリーの表情は曇ってしまう。
「無事にお着きになったようで何よりですな。公主殿。」
国王夫妻の座席から兄王の声がした。
「ええ。幸いな事に天候が荒れずに予定よりも早く降りてくることが出来ました。」
「バルビスの天候はどうであろうか?」
「既に雪が降り始めておりますよ、陛下。」
「では、あれにはきつかろう?」
(お兄様……)
あれ、とは勿論嫁いで行ったシャイリーの事。
「暖かいこちらの地でお育ちになったのですからね。」
「なに、普段どの様に過ごしているのか気がかりでね?あれはこの城からほとんど出たこともない様な箱入りの姫だ。奔放な所もあるが、家族思いの優しい所もある。」
「………」
その妹姫が嫁いでから何の便りも寄越さない。親族からも、友人からも、兄王からのものにも…何かあったと思う方が妥当だろう。
この状況で口を閉じ料理に舌鼓を打つトライトスの表情や顔色が一つも変わらなかったのは流石というものだ。
「ええ。ご心配なさっている事と存じております。ですが、ご安心ください。」
「ほう…あれは何と?」
「…シャイリー妃は慣れない氷の地に嫁いできたのです。軽いお風邪を召された上に凍った大地に足を滑らせ手を挫かれてしまいまして。大事をとって療養してもらっております。」
「手を…?」
「はい。運悪く利き手であったためにまだ筆を持つ事を侍医に禁じられております。」
「……代筆者がいないなどとは仰られないだろうな?」
「勿論です。ですが、頂いた手紙の返事にはご自分の筆でお返ししたいと断られまして。」
「なるほどな…奔放な妹だと思っていたのだが、よもや、跳ね回っていたのでは?」
(お兄様!!)
これには王族の誰にも聞いて貰えもしないシャイリーの声も思わず大きくなってしまうというもの。バルビス公主に嫁いで公妃となった身としてはこんな所でそんな話はされたくは無いのだから。
少しばかり自由に過ごしてきた為か、シャイリーには世間知らずで子供かと思う様な無邪気さがある。ルシュルー妃と仲良く接していた時もシャイリーのその様な一面がよく報告されていたのだから。
「無事にお着きになったようで何よりですな。公主殿。」
国王夫妻の座席から兄王の声がした。
「ええ。幸いな事に天候が荒れずに予定よりも早く降りてくることが出来ました。」
「バルビスの天候はどうであろうか?」
「既に雪が降り始めておりますよ、陛下。」
「では、あれにはきつかろう?」
(お兄様……)
あれ、とは勿論嫁いで行ったシャイリーの事。
「暖かいこちらの地でお育ちになったのですからね。」
「なに、普段どの様に過ごしているのか気がかりでね?あれはこの城からほとんど出たこともない様な箱入りの姫だ。奔放な所もあるが、家族思いの優しい所もある。」
「………」
その妹姫が嫁いでから何の便りも寄越さない。親族からも、友人からも、兄王からのものにも…何かあったと思う方が妥当だろう。
この状況で口を閉じ料理に舌鼓を打つトライトスの表情や顔色が一つも変わらなかったのは流石というものだ。
「ええ。ご心配なさっている事と存じております。ですが、ご安心ください。」
「ほう…あれは何と?」
「…シャイリー妃は慣れない氷の地に嫁いできたのです。軽いお風邪を召された上に凍った大地に足を滑らせ手を挫かれてしまいまして。大事をとって療養してもらっております。」
「手を…?」
「はい。運悪く利き手であったためにまだ筆を持つ事を侍医に禁じられております。」
「……代筆者がいないなどとは仰られないだろうな?」
「勿論です。ですが、頂いた手紙の返事にはご自分の筆でお返ししたいと断られまして。」
「なるほどな…奔放な妹だと思っていたのだが、よもや、跳ね回っていたのでは?」
(お兄様!!)
これには王族の誰にも聞いて貰えもしないシャイリーの声も思わず大きくなってしまうというもの。バルビス公主に嫁いで公妃となった身としてはこんな所でそんな話はされたくは無いのだから。
少しばかり自由に過ごしてきた為か、シャイリーには世間知らずで子供かと思う様な無邪気さがある。ルシュルー妃と仲良く接していた時もシャイリーのその様な一面がよく報告されていたのだから。
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