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揺蕩い行く公主の妻

17 ルシュルー妃の決意 7

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「お待ちくださいませ。陛下。」

 トライトスが黙してしまって直ぐのこと。会場の入り口から懐かしい声が響いてくる。

「な、ルシュ…!!」

 その人物に一番初めに気がついたのはアールスト国王だ。

「どうしてここに来たのだ!其方は休んでいなければ…!」

 そう、休んでいなければ…

 特別な冷却効果がある部屋の中でさえも動き回る事ができないほどルシュルー妃は弱っていたはず。

「……!」

「ルシュ……」

「側妃殿下…」

 トライトスを始めバルビス公国の面々も突然の出席者に目を見張って驚いている。
しかし当のアールスト国王第3側妃ルシュルーは、護衛の騎士にエスコートされつつ凛とした姿勢を保って静かに賓客に対して礼をとった。

「ルシュルー…お前、身体は?」

 礼を受ける為に席を立ったトライトスは病床だという妹の側へと歩み寄る。

(義姉上……!!)

 当然、トライトスト共に移動しているシャイリーもルシュルー妃に近づくのだ。

(また、少し……お痩せになった…?)

 身体があったなら、シャイリーは瞳から涙が溢れるのを堪えきれなかっただろう。もう生きて会えないと思っていた義姉ルシュルーが目の前にいるのだから。

「陛下。貴賓を招かれている晩餐に遅れて出席する無礼をお許し下さいませ。そして、兄上お久しゅうございます。ご健勝そうで何よりですわ。」

 お世辞にも顔色は宜しくないルシュルー妃だ。化粧をしていると言ってもそのやつれ具合には隠しきれないものがある。

「俺のことよりも、其方の方だ…安静にしていなくて良いのか?」

 先程まで、ルシュルーの帰省を拒否していたトライトスの顔色が明らかに変わっている。

「ええ。日々十分良くして頂いていますわ。今日は私の我儘ですの。お許し下さいませね、陛下。」

 寂しそうに笑うのはルシュルー妃の癖だろうか。この笑顔を見る度にシャイリーは別れるのが嫌になったものだ。

「それは構わない。席に着きなさい。賓客を立たせたままにしては失礼だろう。」

「ええ、勿論ですわ。」

 側に付きそうトライトスにエスコートされながらルシュルー妃は末席の第3側妃の席へと向かう。

 




 
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