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手を取る喜び

1 雪溶け 1

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「妃殿下……この小狐達の母親は氷の中にいた模様です。」

(はい?氷、ですか?)

 意味がよく分かっていないと言う公妃シャイリー。

 仕方がないことだが、これが神官ホートネルの希望なのだった。

「ええ、そうです。数ヶ月前に凍土の中から出てきたと言うことと、この地の地魔力量で言えば…ちょうど良いくらいか…では、霊廟の方が……」

(え、と?ホートネル様?地魔力量?霊廟がどうかいたしまして?)

 シャイリーはパチクリとした表情でホートネルの話している事に対し意味が分からない事を物語った。

「あ、失礼いたしました…!いえ、光明が見えましたので、なんとも自分の考えに耽っていましたね。」

(光明ですの?)

「はい、左様です。お喜びください。妃殿下を霊廟から出して差し上げることができると思います。」

(ま………それは、ちゃんとした棺に収めて頂ける、と言うことでしょうか?)


 ちゃんとした葬儀も執り行ってもらえて、この世との、殿下とのお別れを……


「何を言うのです!?そうではありません!妃殿下は妃殿下として、生きて頂かなければ!」

(でも、私はもう……)

「良いですか?私が申したことは、この子狐達の親も今のあなたの様に氷の中で死んだ様になっていたということです。」

(ええ、その様に仰っていましたわね?)

「それが、今はどうです?彼方の方にこの狐が出ただろう氷の洞穴があるのです。妊娠中に凍ってしまったが、氷から出られた後も何事もなかった様に出産しています。」

(子狐達がいますものね。)

「そうです!これが、貴方様にも起こるのです!」

(私に…?だって、私は…氷の中に入る前に、亡くなったのでしょう?)

「ええ。寒さゆえに。病死でありませんでした。」

(どうしてそんなことが起こるのか、全くわかりませんわ!)

「お忘れですか?妃殿下。ここは魔力が宿る地、バルビスです。私は貴方のご遺体に氷の棺に閉じ込めるまでかなりの量の魔力を注ぎ込んでおります。人一人を仮死状態にしても十分に生かせるほどの。」

(なぜそんな事を?)

「私に、見えたからですよ。」

(…………)

 キュッと唇を閉じ、ホートネルの言葉を待つシャイリー。一体自分の身にはこれから何が起こるというのか。

「貴方がお倒れになったあの朝…貴方の他にも見た物がありました。」

(な、何をですの?私には自分以外何も見えませんでしたわ。)

 自分の姿さえ誰もが気づいてもくれなかったのだ。

「我が家の守り神です。」

 にっこりと、自信ありげにホートネルは微笑んだ。








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