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40、友人の訪問 1
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ヒュンダルンとの閨教育の開始から数日後、なんとなく照れ臭いやら誇らしいやらの気持ちが落ち着いてきた頃、いつもの様にヒュンダルンを見送って部屋に帰ってきたウリートの元にマリエッテが手紙を載せたトレー持参で来室した。
「ウリート様お手紙ですよ。」
「手紙?誰、誰?」
ここ数日すっかり体調も回復してきたウリートは手紙と聞くと嬉しそうに小走りでマリエッテの所に取りに来る。
「2通ございます。」
ただでさえ手紙を貰えることが嬉しいウリートは二通と言う言葉にパッと顔を輝かせる。エーベ公爵家にいる今は、朝、晩とヒュンダルンに会っているためにこの手紙の相手はヒュンダルンではないだろう。アクロース侯爵家の面々も何くれとなくエーベ公爵家に来訪しては元気になっていくウリートの顔を見て日々顔を綻ばせているのだから侯爵家の者でもない。
ならば、後は友人だ!
ワクワクする心を隠そうともせずにウリートは手紙を受け取った。
予想通り、一通はレジーネ・エリッジ侯爵令嬢、もう一通はライーズ副書記官長からだった。
「ライーズ副書記官長からは初めてだ…」
友人からの初めてが嬉しいウリートは早速手紙を読み始める。
「マリエッテ、エーベ公爵家への訪問客は我が家以外からでも大丈夫だろうか?」
「ご来訪のお伺いですか?」
「うん、そう。友人が顔を見にきたいって…ヒュンダルン様にお伺いしてみなくてはね?」
エーベ公爵家の現当主に代わり今はヒュンダルンが公爵邸の事を任されているからだ。
そう思ってこの事を聞いた時のヒュンダルンの微妙な笑顔にウリートはコテンと首を傾げた。
「はぁ…ウリートの友人達か…」
そして次は苦笑である。
「あの…やはり公爵様のお屋敷ですから御迷惑ですよね?」
初めはニコニコで話していたウリートの表情がどんどん暗くなる。きっと自由に外出できない分、貰った手紙を抱きしめて喜んでいたに違いがないのだ。
だが、友人があの令嬢…………どうやってウリートと友人関係になったのか大いに疑問なあの令嬢達…
そう言えば、叔母上もかんでいた、あの茶会。そこで出会って友人となった…
しゅん、となっていくウリートを見たら、もう自分の中では答えは出ていて、きっとダメだなんて言えやしないのだが…
「ウリート…」
「はい?」
少し残念そうに微笑みながらも、ウリートはヒュンダルンから断りの理由を大人しく聞こうとしている。
我儘を言ってもらっても良いのにな。
ヒュンダルンには自覚がある。自分勝手な方法でウリートを絡め取ろうとしている、卑怯者の自覚が。だからもっと我儘を言って貰いたいというのがヒュンダルンの本心だ。何故エーベの屋敷に留め置くのか、何故自由に客人すら呼べないのか、そんな権利はヒュンダルンには無いと酷く責められても良いくらいな事をしている自覚がある。
けれどもウリートは絶対にヒュンダルンを責める様なことは口にしない。更にはヒュンダルンはやや強引な手段を使っているのに、ウリートはそれに答える事ができて良かったと、やっと恩を返せるとそんな雰囲気まで出してくる。
「いいよ、ウリート。訪問日時だけ家の者に伝えておいてくれ。」
「え、良いんですか?本当に?」
ヒュンダルンの答えを聞いてパッと明るくなる笑顔。顔色も肌艶も申し分ない程に良くなって、食事もしっかり摂れる様になってきている今では少しばかり頬もふっくらとしてきたウリートだ。
そっとその柔らかな頬に触れば暖かく、生きていると実感させてくれる。あの時のあの顔を見てしまった者としては、こちらの方がずっと良い。
「それで、ウリート。来訪される友人に、勉強の成果でも見せてみるか?」
「…?」
きっとレジーネ嬢達は純粋にウリートの顔を見にきたいのだと思う。一緒にお茶をする中だけれども勉強はした事がない。が、一緒に勉強すると言う事もまた一興かも知れない。少し考えてウリートは頷いた。
「ヒュンダルン様、学習題材は何が良いでしょうね?」
皆様と並んで勉強するのもたまには悪くない、そう思えたウリートはニコリとヒュンダルンに微笑みかける。
「………………」
分かっていたけれど、やはりウリートは分かっていなかった…ヒュンダルンが見せてみるかと問うたのは、机上の勉学の方ではない。
「ウリート、こちらの実践の方なのだが?」
ヒュンダルンは探る様にウリートを見つめながら、そっと大きな手をウリートの頬に添えてくる。そのまま近づけば…
あ…口付けされる……
これは、いつもの閨教育開始の距離感…
「しませんよ?」
キッパリと宣言するウリートの言葉を聞いてヒュンダルンの動きはピタリと止まった…
「レジーネ様達は大切な友人ですから。それにきっとご実家の方で教育係が付くのでは?僕は閨のことで相談された事もありませんし…」
なんとなく寂しそうなウリートではあるが…そんな事よりもヒュンダルンが気になるのは、大切な友人の件である。友人ならば、閨事はしないと受け取れるその発言…
では、俺は……?
「ウリート様お手紙ですよ。」
「手紙?誰、誰?」
ここ数日すっかり体調も回復してきたウリートは手紙と聞くと嬉しそうに小走りでマリエッテの所に取りに来る。
「2通ございます。」
ただでさえ手紙を貰えることが嬉しいウリートは二通と言う言葉にパッと顔を輝かせる。エーベ公爵家にいる今は、朝、晩とヒュンダルンに会っているためにこの手紙の相手はヒュンダルンではないだろう。アクロース侯爵家の面々も何くれとなくエーベ公爵家に来訪しては元気になっていくウリートの顔を見て日々顔を綻ばせているのだから侯爵家の者でもない。
ならば、後は友人だ!
ワクワクする心を隠そうともせずにウリートは手紙を受け取った。
予想通り、一通はレジーネ・エリッジ侯爵令嬢、もう一通はライーズ副書記官長からだった。
「ライーズ副書記官長からは初めてだ…」
友人からの初めてが嬉しいウリートは早速手紙を読み始める。
「マリエッテ、エーベ公爵家への訪問客は我が家以外からでも大丈夫だろうか?」
「ご来訪のお伺いですか?」
「うん、そう。友人が顔を見にきたいって…ヒュンダルン様にお伺いしてみなくてはね?」
エーベ公爵家の現当主に代わり今はヒュンダルンが公爵邸の事を任されているからだ。
そう思ってこの事を聞いた時のヒュンダルンの微妙な笑顔にウリートはコテンと首を傾げた。
「はぁ…ウリートの友人達か…」
そして次は苦笑である。
「あの…やはり公爵様のお屋敷ですから御迷惑ですよね?」
初めはニコニコで話していたウリートの表情がどんどん暗くなる。きっと自由に外出できない分、貰った手紙を抱きしめて喜んでいたに違いがないのだ。
だが、友人があの令嬢…………どうやってウリートと友人関係になったのか大いに疑問なあの令嬢達…
そう言えば、叔母上もかんでいた、あの茶会。そこで出会って友人となった…
しゅん、となっていくウリートを見たら、もう自分の中では答えは出ていて、きっとダメだなんて言えやしないのだが…
「ウリート…」
「はい?」
少し残念そうに微笑みながらも、ウリートはヒュンダルンから断りの理由を大人しく聞こうとしている。
我儘を言ってもらっても良いのにな。
ヒュンダルンには自覚がある。自分勝手な方法でウリートを絡め取ろうとしている、卑怯者の自覚が。だからもっと我儘を言って貰いたいというのがヒュンダルンの本心だ。何故エーベの屋敷に留め置くのか、何故自由に客人すら呼べないのか、そんな権利はヒュンダルンには無いと酷く責められても良いくらいな事をしている自覚がある。
けれどもウリートは絶対にヒュンダルンを責める様なことは口にしない。更にはヒュンダルンはやや強引な手段を使っているのに、ウリートはそれに答える事ができて良かったと、やっと恩を返せるとそんな雰囲気まで出してくる。
「いいよ、ウリート。訪問日時だけ家の者に伝えておいてくれ。」
「え、良いんですか?本当に?」
ヒュンダルンの答えを聞いてパッと明るくなる笑顔。顔色も肌艶も申し分ない程に良くなって、食事もしっかり摂れる様になってきている今では少しばかり頬もふっくらとしてきたウリートだ。
そっとその柔らかな頬に触れば暖かく、生きていると実感させてくれる。あの時のあの顔を見てしまった者としては、こちらの方がずっと良い。
「それで、ウリート。来訪される友人に、勉強の成果でも見せてみるか?」
「…?」
きっとレジーネ嬢達は純粋にウリートの顔を見にきたいのだと思う。一緒にお茶をする中だけれども勉強はした事がない。が、一緒に勉強すると言う事もまた一興かも知れない。少し考えてウリートは頷いた。
「ヒュンダルン様、学習題材は何が良いでしょうね?」
皆様と並んで勉強するのもたまには悪くない、そう思えたウリートはニコリとヒュンダルンに微笑みかける。
「………………」
分かっていたけれど、やはりウリートは分かっていなかった…ヒュンダルンが見せてみるかと問うたのは、机上の勉学の方ではない。
「ウリート、こちらの実践の方なのだが?」
ヒュンダルンは探る様にウリートを見つめながら、そっと大きな手をウリートの頬に添えてくる。そのまま近づけば…
あ…口付けされる……
これは、いつもの閨教育開始の距離感…
「しませんよ?」
キッパリと宣言するウリートの言葉を聞いてヒュンダルンの動きはピタリと止まった…
「レジーネ様達は大切な友人ですから。それにきっとご実家の方で教育係が付くのでは?僕は閨のことで相談された事もありませんし…」
なんとなく寂しそうなウリートではあるが…そんな事よりもヒュンダルンが気になるのは、大切な友人の件である。友人ならば、閨事はしないと受け取れるその発言…
では、俺は……?
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