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67、貴婦人の囀り ⑦
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あの時のあの方々のお言葉に、私はなんと言う感想をつけるべきか、未だに思いあたりません。
我が主人の潤んだ瞳に幸せそうに溶けきったあのお顔……赤獅子と呼ばれた凛々しく逞しいゴーリッシュ騎士団長様のなんとも言い難い、幸せそうな照れ笑いを、私は生涯忘れる事などできようはずもないのです。
あの場の空気、熱、息遣い、全てを込めて、もう一度皆様に再現できぬ事をこれほど悔やんだ事はございません。
我が主人に仕え始めてから今日までの中で、あの場に空気の様に居合わせられた事は、どんな褒賞よりも尊く価値があるものでございました。
興奮冷めやらぬ今、今日この日の感動を忘れるべからず、と筆を取り認めているのでございます。
その後、やはり主人は熱を出してしまわれました。折角回復に近付いておりましたのに、また数日はベッドの中の住人となりましょうに、反して輝くばかりの笑顔には私マリエッテの目が潰れないかと危惧しております。
ゴーリッシュ騎士団長様は実はヘタレではございませんでした。主人の体調を慮り、また体調を崩す事を甚く恐れていた様でございます。過去に主人はゴーリッシュ騎士団長様の前で死の境を彷徨っておりますので、それはそれは慎重に事を運ぼうとのお考えだったご様子。
結果、また体調を崩してしまわれましたけれども、ベッドに伏せる主人を見つめるゴーリッシュ騎士団長様の瞳が熱すぎて、マリエッテがバターの様に溶けるかと思いましたし、直向きにゴーリッシュ騎士団長様をお待ちになっている主人が健気すぎて、お幸せそうでマリエッテは叫びたいのを抑えるのに苦労しております。
思いを通じ合わせたお二人の、なんとも言えない、甘く、限りなく甘いご様子をぜひ共有したくここにお知らせいたします。
追伸
このままではお二人に充てられて、マリエッテは破裂しそうでございます。ぜひ吐き出せる場を頂きとうございます。
「くっ…………」
「なんて事…!」
「ありえませんわ…見れないなんて……!」
王都にある小さなカフェは本日貸切である。数名の令嬢達は色とりどりのお菓子に囲まれ、優雅なお茶の時間を堪能していた。
「これは、叫びたいですわね…」
「目、目のやり場に困りますわ…良く、事細かに焼き付けましたわね?」
「素晴らしいわ…」
「ここにいる事ができなかった事には目を瞑りますわ。マリエッテさん。どうぞ、ここにお座りになって、もっと、詳しく!!」
令嬢達の圧に負け、侍女であるマリエッテはおずおずとお洒落なカフェの椅子に腰掛ける。
あの後、体調の万全でないウリートはベッドの住人となったのは仕方ない。邸の者達はエーベ公爵の命もあり、ウリートの治療には万全を整えて備えているし、ウリートの居心地の良い環境を作るのに尽力を惜しまなかった。
やっと自分の気持ちを自覚したばかりのウリートにとっては思いを通わす一瞬一瞬が新鮮であり、側から見ていてもその喜びは輝かんばかりに見えるのだ。ゴーリッシュ騎士団長は時間さえあれば、いや、無くても無理矢理に時間を作って部屋へ押しかけ、ウリートの顔を破顔させにくる。何の疑いもない真っ直ぐな、信頼と愛情の詰まった態度のウリートは太陽がそこには無いのに輝いている様にしか見えない。
「これは…是非とも、お二人を拝しにいかなくてはいけませんわ…そうでございましょう?レジーネ様?」
「勿論ですわユーリ様。マリエッテさん、お二人のために先日用意した物はここぞと言う時に十二分にご活用くださいませ。」
「ヤキモチのスパイスもたまには良いものですけれど、今はお二人の絆を深めるべきでしょうか?」
「ええ、きっとそうですわ。今度はゴーリッシュ騎士団長様が荒れてしまわない様に、スパイスは後ほど、程々にいたしましょう?」
「ふふふ…どんな睦言を囁かれるのかしら?マリエッテさん、期待していましてよ?」
「はい…私も常にお側にいるわけではございませんが、こう、心に迫る瞬間は書き留めておきとうございます。ウリート様の体調が整い次第、軽いお道具からお勧めしてみようかと…」
「ま!レジーネ様の一押し品ですわね?」
「ゴーリッシュ騎士団長様でしたら、そこは良く心得ていらっしゃるのでは?」
何しろ、騎士団在籍なのだから…
「ええ、それはもう…信頼しておりますけれど、我が主人は全くの素人です故、まずはウリート様にも手ほどきを致しませんと…」
「ふふ、優秀な侍女です事!どの様にあの方が開かれて行くのか…なんとも楽しみですわ!」
色とりどりの茶菓子に香りの良い湯気が上がるティーカップ…うら若き乙女達の楽しそうな話し声は夕暮れまで続いたと言う。
我が主人の潤んだ瞳に幸せそうに溶けきったあのお顔……赤獅子と呼ばれた凛々しく逞しいゴーリッシュ騎士団長様のなんとも言い難い、幸せそうな照れ笑いを、私は生涯忘れる事などできようはずもないのです。
あの場の空気、熱、息遣い、全てを込めて、もう一度皆様に再現できぬ事をこれほど悔やんだ事はございません。
我が主人に仕え始めてから今日までの中で、あの場に空気の様に居合わせられた事は、どんな褒賞よりも尊く価値があるものでございました。
興奮冷めやらぬ今、今日この日の感動を忘れるべからず、と筆を取り認めているのでございます。
その後、やはり主人は熱を出してしまわれました。折角回復に近付いておりましたのに、また数日はベッドの中の住人となりましょうに、反して輝くばかりの笑顔には私マリエッテの目が潰れないかと危惧しております。
ゴーリッシュ騎士団長様は実はヘタレではございませんでした。主人の体調を慮り、また体調を崩す事を甚く恐れていた様でございます。過去に主人はゴーリッシュ騎士団長様の前で死の境を彷徨っておりますので、それはそれは慎重に事を運ぼうとのお考えだったご様子。
結果、また体調を崩してしまわれましたけれども、ベッドに伏せる主人を見つめるゴーリッシュ騎士団長様の瞳が熱すぎて、マリエッテがバターの様に溶けるかと思いましたし、直向きにゴーリッシュ騎士団長様をお待ちになっている主人が健気すぎて、お幸せそうでマリエッテは叫びたいのを抑えるのに苦労しております。
思いを通じ合わせたお二人の、なんとも言えない、甘く、限りなく甘いご様子をぜひ共有したくここにお知らせいたします。
追伸
このままではお二人に充てられて、マリエッテは破裂しそうでございます。ぜひ吐き出せる場を頂きとうございます。
「くっ…………」
「なんて事…!」
「ありえませんわ…見れないなんて……!」
王都にある小さなカフェは本日貸切である。数名の令嬢達は色とりどりのお菓子に囲まれ、優雅なお茶の時間を堪能していた。
「これは、叫びたいですわね…」
「目、目のやり場に困りますわ…良く、事細かに焼き付けましたわね?」
「素晴らしいわ…」
「ここにいる事ができなかった事には目を瞑りますわ。マリエッテさん。どうぞ、ここにお座りになって、もっと、詳しく!!」
令嬢達の圧に負け、侍女であるマリエッテはおずおずとお洒落なカフェの椅子に腰掛ける。
あの後、体調の万全でないウリートはベッドの住人となったのは仕方ない。邸の者達はエーベ公爵の命もあり、ウリートの治療には万全を整えて備えているし、ウリートの居心地の良い環境を作るのに尽力を惜しまなかった。
やっと自分の気持ちを自覚したばかりのウリートにとっては思いを通わす一瞬一瞬が新鮮であり、側から見ていてもその喜びは輝かんばかりに見えるのだ。ゴーリッシュ騎士団長は時間さえあれば、いや、無くても無理矢理に時間を作って部屋へ押しかけ、ウリートの顔を破顔させにくる。何の疑いもない真っ直ぐな、信頼と愛情の詰まった態度のウリートは太陽がそこには無いのに輝いている様にしか見えない。
「これは…是非とも、お二人を拝しにいかなくてはいけませんわ…そうでございましょう?レジーネ様?」
「勿論ですわユーリ様。マリエッテさん、お二人のために先日用意した物はここぞと言う時に十二分にご活用くださいませ。」
「ヤキモチのスパイスもたまには良いものですけれど、今はお二人の絆を深めるべきでしょうか?」
「ええ、きっとそうですわ。今度はゴーリッシュ騎士団長様が荒れてしまわない様に、スパイスは後ほど、程々にいたしましょう?」
「ふふふ…どんな睦言を囁かれるのかしら?マリエッテさん、期待していましてよ?」
「はい…私も常にお側にいるわけではございませんが、こう、心に迫る瞬間は書き留めておきとうございます。ウリート様の体調が整い次第、軽いお道具からお勧めしてみようかと…」
「ま!レジーネ様の一押し品ですわね?」
「ゴーリッシュ騎士団長様でしたら、そこは良く心得ていらっしゃるのでは?」
何しろ、騎士団在籍なのだから…
「ええ、それはもう…信頼しておりますけれど、我が主人は全くの素人です故、まずはウリート様にも手ほどきを致しませんと…」
「ふふ、優秀な侍女です事!どの様にあの方が開かれて行くのか…なんとも楽しみですわ!」
色とりどりの茶菓子に香りの良い湯気が上がるティーカップ…うら若き乙女達の楽しそうな話し声は夕暮れまで続いたと言う。
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