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99、マリエッテの逆鱗 3
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マリエッテを先導する騎士達は下へ下へと降っていく。それに伴いどんどん人気は失せていく。係官の姿はあるし、見学者と思しき者の姿もあるのだが、見学者としての様相が階上にいる者達と明らかに違って来ていた。
「この、近辺は、逢引が多いのですか?」
走りながらマリエッテは騎士に問う。
「ええ、以前からその様に利用している方々もいるにはいる様ですが、その、一時を共にする事自体、貴族の中で嫌厭されている訳ではありませんから…」
だから特にそれに対する取り締まりや、罰則などは全くないと言う事なのだ。当人同士が了承しているのならばお好きにどうぞ、と貞操観念は軽く吹き飛んで行ってしまうらしい。
以前やんごとなき方々が、人知れず一時の享楽を求めて人気の無い所で逢瀬を重ねるお遊びが流行した事があった。その話は勿論アクロース侯爵家にいる使用人達にも伝わるし、一般情報として持っておく必要もあったのだが、ウリートには全く関係ない事であった。自分の身体がどうなる事やもわからない日々であったのに、一時の遊びもないだろう。それよりも純粋なウリートにとってそんな遊びなど百害あって一里無し…そう思ってこの様な情報は敢えて伝えて来なかったのに…それが仇になってしまうとは!
「どの様に、待ち合わせるのです?」
「両者間で申し合わせておくようですが、何方でも良い、と言う方は、ある、合図をするのです。」
「どの、ような?」
走りながらでは息が上がる…
「この遺跡ででしたら、家の中を何度も覗き込む様にしていますと、担当の者が声をかける様ですよ?」
「担当って!?」
まさかの現地担当者までいたとは…!
「地元民の、平民の様です。後腐れがないためとか何とか…あ!彼ではないですかね?」
居住区域に差し掛かると更に人影は少なくなる。なのに担当の係官はその場で待機を命令されているためか、通路の開けた所で簡易椅子に腰掛けて座っていた。この区域にはこの者しか係官は居なそうなので、先程ウリートと話をしていたのはこの者に間違えはないだろう。マリエッテは周囲を歩き回り、この区域と彼の側にウリートの姿がない事を確認する。
「この先は?」
「ほぼ何もありませんよ?見学に的する様なものはもうここで終わりですから。」
「そこのお前!」
マリエッテは、いきなり係官を呼びつけた。
「な、何すか!?」
いきなり取り乱した何処かの家の侍女と思われる女と、騎士が走り込んできては怒鳴りつけられたのだから、何が起こったのかと男は訝しんだ。
「ウリート様をどこへお連れした!?」
「は?ウリート様?」
誰だ、それ?と係官の表情が語っている。
「先程ここに来られた、黒髪で青い瞳の非常に美しい方だ!どこへお連れした!?」
食い付かんばかりのマリエッテの迫力に男はタジタジとなる。
「え……あ、え~と、たしかアクロース家からって…」
「その方だ!吐け!!」
ガッとマリエッテは男の胸ぐらを掴んでは揺すり始めた。
「ちょ!ちょっと、待って下さいよ!侯爵家から若様に派遣されて来た子でしょう?」
「………は?………派遣だと?…」
マリエッテの声が信じられないほど低くなった。
「あの方は!誰が何と言おうとも、アクロース侯爵家のご子息様であられるのに!それを、それを………!」
マリエッテは怒りのあまり次の言葉が出てこない。
この男は、あろう事かウリート様をどこぞのボンボンの一時の遊びに付き合わせる、娼夫だと勘違いした………!
ギリギリと男の首を締め出しそうなマリエッテは同道して来た騎士達に止められる。
「おい!シュードよ!その方をどこに案内したんだ!?」
騎士の一人はこの男の名を知っていたらしい。暴れるマリエッテを抑えながら、男に振り向き早く吐けと急かす。
本人同意であれば、貴族間のお遊びで通る事だろうが、その者のお付きの侍女がここまで取り乱していると言うのならば、ここに来た目的が一時の遊びではないのは確かである。そうなると、何か間違えがあった場合、その責めはここにいる者達にも降りかかってくるだろう。
「な、どう言う事っすか!?第3騎士団長様がパナイム商団の若様宛に送って寄越した者とばかり………」
「そんな事、ある訳ないでしょう!何故アランド様が!大切なウリート様を売るような事をすると思うのか!!」
鬼の様に怒りを顕にしたマリエッテは抑えていた騎士の腕を、逆に捻り上げながら更に続ける。
「どこに、案内したか、今すぐ吐け!!」
「ひぃ!…こ、ここから、真っ直ぐ行った所に、ば、馬車が止まってますから…!」
「馬車の中か?」
「そう、そうです!!」
視線で人を殺める者の視線とは今のマリエッテのものを言うのかもしれない。シュードと言う男を一瞥するとマリエッテは一目散に馬車の方へと向かう。
「私は報告に!!」
騎士の一人は指揮官への報告のために取って返していった。
「この、近辺は、逢引が多いのですか?」
走りながらマリエッテは騎士に問う。
「ええ、以前からその様に利用している方々もいるにはいる様ですが、その、一時を共にする事自体、貴族の中で嫌厭されている訳ではありませんから…」
だから特にそれに対する取り締まりや、罰則などは全くないと言う事なのだ。当人同士が了承しているのならばお好きにどうぞ、と貞操観念は軽く吹き飛んで行ってしまうらしい。
以前やんごとなき方々が、人知れず一時の享楽を求めて人気の無い所で逢瀬を重ねるお遊びが流行した事があった。その話は勿論アクロース侯爵家にいる使用人達にも伝わるし、一般情報として持っておく必要もあったのだが、ウリートには全く関係ない事であった。自分の身体がどうなる事やもわからない日々であったのに、一時の遊びもないだろう。それよりも純粋なウリートにとってそんな遊びなど百害あって一里無し…そう思ってこの様な情報は敢えて伝えて来なかったのに…それが仇になってしまうとは!
「どの様に、待ち合わせるのです?」
「両者間で申し合わせておくようですが、何方でも良い、と言う方は、ある、合図をするのです。」
「どの、ような?」
走りながらでは息が上がる…
「この遺跡ででしたら、家の中を何度も覗き込む様にしていますと、担当の者が声をかける様ですよ?」
「担当って!?」
まさかの現地担当者までいたとは…!
「地元民の、平民の様です。後腐れがないためとか何とか…あ!彼ではないですかね?」
居住区域に差し掛かると更に人影は少なくなる。なのに担当の係官はその場で待機を命令されているためか、通路の開けた所で簡易椅子に腰掛けて座っていた。この区域にはこの者しか係官は居なそうなので、先程ウリートと話をしていたのはこの者に間違えはないだろう。マリエッテは周囲を歩き回り、この区域と彼の側にウリートの姿がない事を確認する。
「この先は?」
「ほぼ何もありませんよ?見学に的する様なものはもうここで終わりですから。」
「そこのお前!」
マリエッテは、いきなり係官を呼びつけた。
「な、何すか!?」
いきなり取り乱した何処かの家の侍女と思われる女と、騎士が走り込んできては怒鳴りつけられたのだから、何が起こったのかと男は訝しんだ。
「ウリート様をどこへお連れした!?」
「は?ウリート様?」
誰だ、それ?と係官の表情が語っている。
「先程ここに来られた、黒髪で青い瞳の非常に美しい方だ!どこへお連れした!?」
食い付かんばかりのマリエッテの迫力に男はタジタジとなる。
「え……あ、え~と、たしかアクロース家からって…」
「その方だ!吐け!!」
ガッとマリエッテは男の胸ぐらを掴んでは揺すり始めた。
「ちょ!ちょっと、待って下さいよ!侯爵家から若様に派遣されて来た子でしょう?」
「………は?………派遣だと?…」
マリエッテの声が信じられないほど低くなった。
「あの方は!誰が何と言おうとも、アクロース侯爵家のご子息様であられるのに!それを、それを………!」
マリエッテは怒りのあまり次の言葉が出てこない。
この男は、あろう事かウリート様をどこぞのボンボンの一時の遊びに付き合わせる、娼夫だと勘違いした………!
ギリギリと男の首を締め出しそうなマリエッテは同道して来た騎士達に止められる。
「おい!シュードよ!その方をどこに案内したんだ!?」
騎士の一人はこの男の名を知っていたらしい。暴れるマリエッテを抑えながら、男に振り向き早く吐けと急かす。
本人同意であれば、貴族間のお遊びで通る事だろうが、その者のお付きの侍女がここまで取り乱していると言うのならば、ここに来た目的が一時の遊びではないのは確かである。そうなると、何か間違えがあった場合、その責めはここにいる者達にも降りかかってくるだろう。
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「どこに、案内したか、今すぐ吐け!!」
「ひぃ!…こ、ここから、真っ直ぐ行った所に、ば、馬車が止まってますから…!」
「馬車の中か?」
「そう、そうです!!」
視線で人を殺める者の視線とは今のマリエッテのものを言うのかもしれない。シュードと言う男を一瞥するとマリエッテは一目散に馬車の方へと向かう。
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騎士の一人は指揮官への報告のために取って返していった。
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