[完]腐違い貴婦人会に出席したら、今何故か騎士団長の妻をしてます…

小葉石

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100、マリエッテの逆鱗 4

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 シュードに言われた通り、真っ直ぐに進むと木造りの塀の一部には通行可能な出入り口が見える。ここにも一人係官がいるにはいるが、マリエッテはこの男の存在を無視して、外へ出るとパナイム商団の馬車を探し出す。

「あ!ちょっと!!おねぇさん?おじょうさん?……あ!騎士の旦那!今物凄いスピードで、どっかの侍女らしい女が走って行ったけど、ここには何の用事で?」

 大きな声では言えないが、貴族や金を持っている商家の馬車が停まっているのだ。変な人物を野放しにしたとあっては後からお叱りがあるだろう。そんな事はごめん被りたい。

「緊急だ!ここに黒髪で青い瞳の麗人が来なかったか?」

「黒髪…さっき連れてこられた子かな?」

「確かだな?」

「ええ、その子が?もう若様のお相手をしていると思いますよー?」

 走り去っていくマリエッテと騎士に向かって、大きな声でそう伝えた。その声が聞こえたかどうか、マリエッテの肩がビクッと震える…
 
 ウリート様…!

 パナイム商団、パナイム商団!一輌一輌パナイム商団の印を求めてマリエッテは走り続ける。

「侍女殿!こちらです!」

 反対方向に走り出していた騎士がパナイム商団の馬車を見つけた様で急いでマリエッテを呼びにくる。

「ちょ、ちょっと!あんた達!分かっているのか?ここで騒ぎなんか起こしでもしたら、多数の貴族家を敵に回すことになるんだぞ!」

 出入り口にいた見張りの男も追いかけて来てマリエッテ達を止めに入る。

「公爵家と縁続きになるアクロース家にどの家が立てつくと言うのか!今ここで何もないうちに止められた方が全ての家の為になる!」

 男の静止もスッパリと切り捨ててマリエッテは騎士の案内についていく。

 あった!!
 
 騎士がどうするのを待たずに、マリエッテはいきなり馬車のドアを

「侍女殿!!」

 これには同道していた騎士も面食らった様子であった。

 もし、もしである。事が進んでいたならばどうするつもりであったのだろうか…一瞬ポカンとマリエッテを見つめていた騎士も、一瞬で復活しマリエッテに続き、馬車の扉に慌てて駆け寄った。

 馬車の中から漏れ出る独特な匂いが鼻をくすぐる…

 バシン!!

 マリエッテはウリートに覆いかぶさろうとしている男の襟を掴み上げると、思いっきり頬を叩く。男が何か言いそうな所で更にもう一発、軽やかな音が響き渡った。

「な!!」

 いきなり馬車を開けられた事と同時に、頬に二発も平手を食らった男は、口をアングリと開けてその場で尻餅を突き頬を押さえている。男が反撃に転じる前に、騎士がマリエッテを押さえて、馬車に乗り込んでくれた。

「誰だ!お前達!」

 騎士の制服には見覚えくらいあるが、いきなり馬車に乗り込んできて人の頬を叩くなど失礼にも程がある。叩いて来た方の女は何処かの家の侍女らしいが、こんなに髪を振り乱して人に迫ってくる様な不作法を許す家など知らない。  

「御子息様!しっかり!!」

 騎士はフルフルと怒りで震えている男を無視して、椅子の上にグッタリと横になっているウリートの確認をしているし、マリエッテはマリエッテで隙あらばまた男に襲いかかって来そうな目つきで睨みつけてくる。

「だから、お前達は誰だと言うのだ!」

「ウリート様は!?」
 
「一度、外に出します!!」

 やや緊迫した様な騎士の声に、一瞬でマリエッテが泣きそうな表情になる。

「お、おい!僕の相手をどこへ連れて行く!」

 流石に無視され続けて堪忍袋が切れる寸前の男は騎士の肩を掴みにかかる。折角楽しもうとしていた上玉を誰とも分からない騎士如きに連れ去られては面白くはないからだ。

「お静かに願います。貴殿はこの方に何を使用されたのか?」

 掴みかかかる男を容易く押さえにかかって騎士はウリートをマリエッテに託す。

「なるべく、新鮮な空気を吸わせて下さい。」

 言われてみれば馬車の中は空気が悪い…と言うか嫌な匂いがするものだから、マリエッテは必死にウリートの身体を抱き止めながら、馬車から引き摺り下ろして地面に横たえる。

「ウリート様!ウリート様!!」

 浅く呼吸をしている事が分かるので生きてはいるのだろうが、何度呼びかけても返事がない。マリエッテはひざの上にウリートの頭を乗せて、必死に呼びかける。口惜しい事に、胸元やらベルトやらはきっとあの男が外していたのだろう、既に緩められていてこれ以上マリエッテにもできることがない。

「何をされたのです!?ウリート様!」

「おい!いい加減にしろよ!お前達!何の権限があって人の馬車を荒らそうって言うんだ!」

 状況を把握し出した男は怒りが収まらない。騎士に詰め寄られているのにそれには応えず食ってかかってくる始末。

「あのお方は、アクロース侯爵家の御子息で御次男のウリート様だ。貴殿はそれを知っていて、この様な無体を強いたのか?」

 騎士の表情は真剣そのものだ。嘘偽りを言ってこの場をどうこうしようとしている訳では無さそうであった。

「な……な………!」

 言葉が出てこない男をそのまま馬車へ閉じ込めて、騎士はウリートの様子を確認しにマリエッテの横にしゃがみ込む。

 










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