[完]腐違い貴婦人会に出席したら、今何故か騎士団長の妻をしてます…

小葉石

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129、心からのプレゼント 1

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 また、窓の外には雪が降ってきている…けれど流石に室内は暖かくて、ここ数日ウリートはぬくぬくと微睡んで過ごしていた。やはり寒さに当てられたのか、熱が出た。しかし目が覚めた時に側に居てくれたのはリヤーナ夫人だった。ヒュンダルンは雪中訓練に駆り出されていて今は雪の中だ。

 熱がある中、リヤーナ夫人は汗を拭き水を飲ませ、マリエッテと共に母と同じ様に世話を焼いてくれた。

「無理は禁物ね?ウリー?」

 目が覚めてからウリートが貰った第一声だ。額を撫でてくれる手は優しくて、母にされているみたいに甘えそうになる。

「重ね重ね、ご迷惑をおかけします……」

 リヤーナ夫人の部屋で寝てしまったり、賊の討伐に乱入したり…しまいには熱で倒れた…自分がやりたい放題の迷惑者のようにも思えてくる。

「何を言っているの?誰も迷惑なんて思わないわよ?ウリーにはウリーの考えがあってのことでしょう?ならばいい事だわ!ふふふ、私、張り切っちゃったし!」

 張り切った…疾風の如き速さで賊を討ち取りに行っていたのはやはりリヤーナ夫人だろう。女性ながらに見事な胆力だと脱帽する。

「僕の、やるべき事を…見つけたかったのです。」

 上がる息の中からウリートは少しずつ言葉を紡ぐ。

「そうね……一つ、いい事を教えてあげる。」

 リヤーナ夫人はウリートを撫でる手を休めもせずに語り出す。

「自分の敵は常に自分よ。何かを成し遂げるには、まず自分に勝たなくてはならないの。」

 勝つ……自分……

「焦りにも、恐怖にも、怠惰にも、弱さにも…全部自分から出てくるでしょ?」

 確かに……コクンと頷く。

「そして人は皆んな違う。だから、それぞれの場所で自分に打ち勝てばいいのよ。ね?簡単でしょう?」

 簡単、なのか……?それはわからない……

 ウリートは目を瞑る。

「少し、休みなさい。きっとヒュンが嫌と言うほどのスピードで訓練を終わらせて帰ってくるから。ねぇ、ウリー?相手に合わせなくてもいいのよ?自分の良いと思う事を取ってもいいの。ウリーはウリーで物凄く可愛いのだから、心配なんてないわ。ヒュンがいらないって言ったら我が家の養子にもらっちゃおうかな?」

 なんだか色々と大変な事を言われているようだけれど、微睡む意識の中ではまともに返事すらできない。

 そうか…良いんだ…僕の思うようで……
なら、リヤーナ夫人がくれた答えは、僕の中にある……





 部屋の中は白銀一色だった………

 熱が下がって体調も戻り、冬の気候にも身体が慣れたと言う時にゴーリッシュ侯爵夫妻とヒュンダルンに応接間に呼び出された。部屋に入れば、そこは一面の白に銀で埋め尽くされていて、その輝きに暫く目が馴染むまでに時間がかかった。

「来たか。」

 ソファーに座っていたヒュンダルンが素早くウリートの元にきて部屋の中にエスコートしてくれる。

 くれるのだが、これは…

「……ヒュン……?」

 言葉が出てこない。
 部屋の中央、真正面に一対の礼服が立てられていて、周囲には使用するだろう小物類まで、ザァ…と並べられているのだから。

「ゴーリッシュへ嫁いだのだから我が家の家紋を入れたのだが、どうだ?気に入らぬ物はないか?」

 気に入らねば作り直させよう。と、ヒュンダルンは至極簡単に言ってくれる。

 が、一眼見ただけでも、素人の目にもどれもが職人の技術の賜物と分かるほどの素晴らしい出来のものばかりと分かる…作り直させるなんて勿体無いことだ。

「これは………」

 輝く様な白い礼服には小さな輝く無数の石が、刺繍を刺した様に細やかにゴーリッシュ侯爵家の家紋を作りそれらが銀糸で縫い止められている。何処から見てもキラキラと光が弾け散って行く様な美しさだった。

「これ………」

 ウリートは声が出ない。この揃いの礼服は、婚礼用だから…………

「気に入ったか?ウリーの意見を取り入れず、申し訳なかったが、アクロース家の義父母殿とも相談して……驚かせたかった……」

 少し申し訳なさそうなヒュンダルンの照れ臭そうな顔は初めて見る。

「これを…僕に?」

「そうだ。この領ゴーリッシュ領で披露目をしなければならないからな。」

 次期領主の婚礼なのだからそれは盛大なものとなるだろう事は予想がつく。
 真新しい真っ白な衣類に、手袋、シャツに、サッシュに、カフスボタンに、靴に………

 一つ一つ丁寧に見させてもらおうと思ったのに、視界が霞んできて良く見えなくなってくる。

「ウリー?」

 隣に来たヒュンダルンも一緒にお行儀悪く床に座って、一つずつ手に取って二人で確かめ合う。

「ん……」

 胸が詰まって、上手く言葉にできないのがもどかしい…

「ふふ…ウリーを良く知る人達に好みを聞いて用意したの…気に入ってくれた?」

 いつもなら、胸を張って自慢してくるだろうリヤーナ夫人は控えめな笑顔でそう聞いてくる。

 知る人…家族に?わざわざ……?
 そう、そうか……

 心配症のアクロース家の家族の事、きっと物凄い注文をつけてきたのではないかと少々心配になってしまうけれども、遠く離れた地でも家族に愛されている事実はウリートに勇気をくれる。













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