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132、二人の為に 1 *
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「これからもよろしく、夫人?」
寝る前に、ベッドでこんな事を言うヒュンは少し意地が悪い。婚姻宣誓書の事を全て曝け出してしまったからもう隠し立てするものがないと言わんばかりに、ヒュンは夫人を繰り返して迫ってくる。
こっちがまだまだ夫人という立場に慣れていないのに…
「………今日は、しません……」
「え?」
ベッドの中でウリートはクルリと反転し、掛け物の中に潜ってしまう。
「ウリー?」
もう既に夫夫であったなら、立場は対等だと思う。だから、ちょっとだけ、本心ではないけど、ちょっとだけ意趣返ししてもいいかとそう思った。
「しないって…?」
つつ……とヒュンダルンの手がウリートのガウンの上から腰を滑る…
「……そうです、しません。」
余りにヒュンダルンが夫人と連呼するから晩餐の時間も、恥ずかしくて居た堪れなくなって早々に切り上げて逃げる様にして部屋に帰ってきたのだ。沢山泣いてしまったのもあって恥ずかしいからまだ、もう少し時間が欲しいと言ったのに、ヒュンダルンは全くと言っていいほど、引っ込めてくれなくて…少しだけ怒っているんだ、と態度で表そうと思った。
「ふぅん…?初夜なのに、したらダメなのか?」
「初………!!」
「だってそうだろう?まだ式はしていないが、宣誓書は今日確認し、ウリーにも了解をとった。だから、今夜は初夜だ…」
とっくに、初夜らしき行為は今まで散々……けれど、今夜は………分かりきっていた事だけれども、その、準備もしてきたけれども……ヒュンに言われると、素直に振り向けない…
「ウリー…?」
大好きな低い声…ウリートは後ろを向いてしまったのに、ヒュンダルンは大きな身体を寄せてきては擽る様に身体に優しく手が触れてくる。一体この声に何度降参してきたのか分からないくらいだ。きっと、もう、勝てないんだろうな…
「ふふ……」
「ウリー?」
掛け物から出ているウリートの頭に何度も小さく口付けを落としながら、ヒュンダルンも根気よく待ってくれる。
「はぁ……僕、絶対にヒュンには勝てません…多分、一生…」
本当は勝てるなんて思わない、勝とうとも思っていない。ただ、流されていくだけでもいいか、とさえ思ってしまうから、人を愛する事は不思議な事だ。
「何を言う…負けたのは俺が最初だ…」
「違いますよ、絶対僕が最初です。」
「ほう?そう言う割にはかなり戸惑っていただろう?」
「う…それは、気が付いていなかっただけで…僕の心は動いてました!」
大切な日の夜に、何の言い合いが始まったのかきっともう二人にも分からなくなっているだろう。言い合いの最中につい、振り返ってしまったウリートはヒュンダルンの大きな手に顔を挟まれて捕まってしまう。
「そうか…ウリーを一番最初に捉えたのは俺だったな?」
「そうですよ?ヒュンしかいません。」
「なら、これから一生一緒に生きるのだろう?」
「ええ、勿論そのつもりです。」
至極真面目な顔をしてウリートが言い切れば、ヒュンダルンはこれ以上ない程の笑顔を向けてきた。
「…………」
見ているこっちの胸が愛しさでキュッと胸が閉まるくらいのいい笑顔で…
「なら、愛するウリー…もう一度、その約束を確かめさせてくれないか?」
「…………もう………」
もう、そんな事言われて、断れる人がどこにいる?
「もう、僕の方が愛してるって、言ってるじゃないですか…」
クシャッと笑顔で顔を歪ませて、ウリートはヒュンダルンに抱きついていく。
「触れても良いか?」
「先程から触れてますよ?」
「ふふ、そうだな…」
ゆっくり、ゆっくり…確かめるみたいに、ヒュンダルンの手はウリートに触れていく。最初の時は焦って壊しそうだと、己の内の欲望が恐ろしくなった。けれどもウリートはいつもその壁を、ヒュンダルンの恐怖心をヒョイと飛び越えて捕まえてほしいとばかりに身を差し出す。
愛しい愛しい、俺の半身………
ウリートの肌の熱と滑らかさ…その湿り気をヒュンダルンの手はゆっくりと確かめる様にウリートのガウンに侵入し、触れていく。
「………?」
そのヒュンダルンの手がピタリと止まる。
「……ヒュン?」
普段ならば、ここまできて手をひくヒュンダルンではないから、ウリートは不思議に思う。
「ウリー、夜着はどうした?」
「え……」
すっかりと身を任せようとしていた所で、ヒュンの問いにウリートが困惑する。
夜着…?………夜着…!!
「あっ!!」
しまった、とばかりにウリートはヒュンダルンの腕から逃れようとする。夜着は、アレだからだ………
が、反射神経もいい騎士のこと、ウリートの可愛らしい抵抗など抵抗の内には入らない。ウリートはガシッと両手首を掴まれてしまった。
「まさか、着てないのか?」
なんて事を……!
ヒュンダルンの言葉にウリートは自分が常識もない人間の様に感じて一気に顔が熱くなる。
寝る前に、ベッドでこんな事を言うヒュンは少し意地が悪い。婚姻宣誓書の事を全て曝け出してしまったからもう隠し立てするものがないと言わんばかりに、ヒュンは夫人を繰り返して迫ってくる。
こっちがまだまだ夫人という立場に慣れていないのに…
「………今日は、しません……」
「え?」
ベッドの中でウリートはクルリと反転し、掛け物の中に潜ってしまう。
「ウリー?」
もう既に夫夫であったなら、立場は対等だと思う。だから、ちょっとだけ、本心ではないけど、ちょっとだけ意趣返ししてもいいかとそう思った。
「しないって…?」
つつ……とヒュンダルンの手がウリートのガウンの上から腰を滑る…
「……そうです、しません。」
余りにヒュンダルンが夫人と連呼するから晩餐の時間も、恥ずかしくて居た堪れなくなって早々に切り上げて逃げる様にして部屋に帰ってきたのだ。沢山泣いてしまったのもあって恥ずかしいからまだ、もう少し時間が欲しいと言ったのに、ヒュンダルンは全くと言っていいほど、引っ込めてくれなくて…少しだけ怒っているんだ、と態度で表そうと思った。
「ふぅん…?初夜なのに、したらダメなのか?」
「初………!!」
「だってそうだろう?まだ式はしていないが、宣誓書は今日確認し、ウリーにも了解をとった。だから、今夜は初夜だ…」
とっくに、初夜らしき行為は今まで散々……けれど、今夜は………分かりきっていた事だけれども、その、準備もしてきたけれども……ヒュンに言われると、素直に振り向けない…
「ウリー…?」
大好きな低い声…ウリートは後ろを向いてしまったのに、ヒュンダルンは大きな身体を寄せてきては擽る様に身体に優しく手が触れてくる。一体この声に何度降参してきたのか分からないくらいだ。きっと、もう、勝てないんだろうな…
「ふふ……」
「ウリー?」
掛け物から出ているウリートの頭に何度も小さく口付けを落としながら、ヒュンダルンも根気よく待ってくれる。
「はぁ……僕、絶対にヒュンには勝てません…多分、一生…」
本当は勝てるなんて思わない、勝とうとも思っていない。ただ、流されていくだけでもいいか、とさえ思ってしまうから、人を愛する事は不思議な事だ。
「何を言う…負けたのは俺が最初だ…」
「違いますよ、絶対僕が最初です。」
「ほう?そう言う割にはかなり戸惑っていただろう?」
「う…それは、気が付いていなかっただけで…僕の心は動いてました!」
大切な日の夜に、何の言い合いが始まったのかきっともう二人にも分からなくなっているだろう。言い合いの最中につい、振り返ってしまったウリートはヒュンダルンの大きな手に顔を挟まれて捕まってしまう。
「そうか…ウリーを一番最初に捉えたのは俺だったな?」
「そうですよ?ヒュンしかいません。」
「なら、これから一生一緒に生きるのだろう?」
「ええ、勿論そのつもりです。」
至極真面目な顔をしてウリートが言い切れば、ヒュンダルンはこれ以上ない程の笑顔を向けてきた。
「…………」
見ているこっちの胸が愛しさでキュッと胸が閉まるくらいのいい笑顔で…
「なら、愛するウリー…もう一度、その約束を確かめさせてくれないか?」
「…………もう………」
もう、そんな事言われて、断れる人がどこにいる?
「もう、僕の方が愛してるって、言ってるじゃないですか…」
クシャッと笑顔で顔を歪ませて、ウリートはヒュンダルンに抱きついていく。
「触れても良いか?」
「先程から触れてますよ?」
「ふふ、そうだな…」
ゆっくり、ゆっくり…確かめるみたいに、ヒュンダルンの手はウリートに触れていく。最初の時は焦って壊しそうだと、己の内の欲望が恐ろしくなった。けれどもウリートはいつもその壁を、ヒュンダルンの恐怖心をヒョイと飛び越えて捕まえてほしいとばかりに身を差し出す。
愛しい愛しい、俺の半身………
ウリートの肌の熱と滑らかさ…その湿り気をヒュンダルンの手はゆっくりと確かめる様にウリートのガウンに侵入し、触れていく。
「………?」
そのヒュンダルンの手がピタリと止まる。
「……ヒュン?」
普段ならば、ここまできて手をひくヒュンダルンではないから、ウリートは不思議に思う。
「ウリー、夜着はどうした?」
「え……」
すっかりと身を任せようとしていた所で、ヒュンの問いにウリートが困惑する。
夜着…?………夜着…!!
「あっ!!」
しまった、とばかりにウリートはヒュンダルンの腕から逃れようとする。夜着は、アレだからだ………
が、反射神経もいい騎士のこと、ウリートの可愛らしい抵抗など抵抗の内には入らない。ウリートはガシッと両手首を掴まれてしまった。
「まさか、着てないのか?」
なんて事を……!
ヒュンダルンの言葉にウリートは自分が常識もない人間の様に感じて一気に顔が熱くなる。
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