[完]腐違い貴婦人会に出席したら、今何故か騎士団長の妻をしてます…

小葉石

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131、その日の夜に向けて

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「マリエッテ…………」

 何、これ?
 これ以上、脱力で声になりそうもない……

 婚姻宣誓書が完成した日の夜、いつもの様に湯浴みをしウリートは着替える所であった。常ならばマリエッテは新しい下着と室内着とを用意してくれるのだが、今夜はどうやらそれが問題である。ので、浴室からウリートは控えめにマリエッテに声をかけた。

「気にいられましたか?」

 気にいるも何も……下着が、下着はどこ?

「僕の下着は?」

「そちらにご用意しておりますでしょう?」

 なんだか含みがあるマリエッテの言い方だ。では、を用意したのはマリエッテに間違えはない……

 いつもの着替えと思ってウリートが手に取ってみた物は、いつもの下着の殆どの布の部分を様なデザインのもので…着用したとするならば、辛うじて局部が隠れる際どいデザインのものだった。下着を止めるものといったら、紐………?恐ろしい事に、良く周囲を見渡してみても、下衣の下着に当たる物はしか見当たらない……他には……いやに透けているこれもまた丈の短過ぎる布が用意されている。これは、上衣、であってるのだろうか?薄過ぎる為か透け過ぎていて向こう側が見える。これをどうやって着ろと?
 
 少しばかり閨事の知識も多くなってきたウリートではあるが、流石にこんな衣装は見た事がない。衣類であっているのかさえもわからない…それ程に面積が小さい布が置いてある…

「よろしいですか?ウリート様!」

 浴室の扉の向こう側から畏まったマリエッテの声がする。何か重要な事が?

と言うものに関して、男性は必要以上に幻想を抱くものです。心に決めた愛しい方をその腕に抱くのですから、さもありなん、と言うところでしょうが。その旦那様のお気持ちを無駄に終わらせてはなりません。ウリート様は後にも先にもたったお一人の若様のご伴侶です。その御存在を、どうぞ若様にいやと言うほど見せつけて、刻みつけて差し上げてくださいませ。どこかの馬の骨がお二人の間に入る隙間もないくらいにお互いに惹かれ合う様に。大切な事でございます。」
 
 最もらしく言われればなるほど、と思わせるマリエッテのご高説だ。

「で、でもマリエッテ!式はまだじゃないか!」

 初夜って結婚式当日でしょう?

「はぁ……お分かりになりませんの、ウリート様。」

 やれやれとマリエッテはため息をつく。

「華やかな結婚式に夢を持つのは女性が多うございます。本日、ウリート様は法的に国王陛下の御名の元に裁可を頂いたものを確認されました。」

 その通りです。それより以前に裁可が降りているとは思わなかったけれど。

「ならば今日この日より、ウリート様が、ヒュンダルン様のものであると心身共に法的にもはっきりとなさった日…」

「うん…」

 そういえばそうだ…

「その日を特別視しなくていつなさいます?結婚式当日はまた考えれば良い事ですし、お式に出席するだけで、疲れ果ててしまうかもしれませんし、今日はどうかお二人だけの特別な一夜となされませ…」

「………うん………」

 マリエッテの言う事にも一理ある。あるけれど……

「マリエッテ…これ、どうやって着るの?」

 どう弄くり回してもどうしても着方が分からずに、一人で着る事は無理だとウリートは判断する。

「ふふふふ、お任せ下さいませ!その為に私がいるのです!では、失礼しますよ、ウリート様!」

 なんともやる気に満ち溢れているマリエッテが浴室に入ってくる。



「こ……これ?」

「はい!とてもお似合いで!」

 浴室の鏡に映る自分の姿を直視できない………本当に、こんな物を着て良いのだろうか?

「殿方はどの様なところで興奮するのかわからないものですわ。」

 マリエッテはそれが真理だ、と言い切るごとくに言葉を紡ぐけれども、僕も男だからね?でも、流石に自分のこんな姿を見て興奮はしないよ?

 そこに映るのは、胸元は透けた布をただ巻いて、余り布で後方で大きくリボンに結んでいる上半身…布の色は重なっている部分でやっと白だと分かるくらい薄い……下履きは…目も当てられない……これが下着って言えるのだろうか…………

「本当に……?」

 フルフルと恥ずかしさで震えが来る。そっとマリエッテに助けを求める様に視線を投げても、コックリと大きく頷くばかりで、きっとこれは嫌だと言っても代わりの着替えを持ってきてはくれないだろう……

「ウリート様、間違えはございません!」

 ガウンを着せられて半ば強引に押し出される様にして、ウリートはヒュンダルンの待つ寝室にと連行されていった。












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