[本編完結]死を選ぶ程運命から逃げた先に

小葉石

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「宝利君は…まだなんだね…?」

「あ……?」


(まだこの話題引っ張る?それに、なんで山手の方が照れ臭そうに俯いて、噛み締める様に言ってる訳?)


 くっそ~!と、ワナワナと羞恥に震えてくる。

「あ~山手君、それ以上はやめたげて。流石にオーバーキルだわ。」

 フルフル震えている俺の横から蒼梧が助け舟を出す。


(元はと言えばお前が原因だろが!)


 思いっきり蒼梧の鼻を摘んでやる。

「いててててて、ごみん、楓ストップ!」

「ほら蒼梧!無駄口叩いている暇があるならキリキリレポート進めろよな!」

「わはった、わはった!」

「そっか…ごめんね、宝利君。」
 
 又もや照れ臭そうに山手は謝ってくる。


(非常に、居た堪れない……)


「もういいから!ほら!昔の祭具について調べるんだろ?どんどん出して!」

「あ……うちにも刀があったんだ。」

 ふと、思い出した様に山手は言う。

「刀?」

「そう。死んだ祖父、あ、ここは元々祖父の家なんだけど、骨董とかの趣味があったみたいで。小さい頃見せてもらった事があってね。」

「へぇ~~~真剣?」

「ん~どうだろ?騙されてなければ?」

「骨董を趣味にしてたんなら、目利きだったんじゃないの?」

「さぁ?それがどんなに価値がある物かは僕にはちょっと分からないなぁ。」

 なるほど、興味無い者にとってはそんなものだろう。

「今もあるの?」

 蒼梧が食いついて来た。

「ん?お前、真剣好きだった?」

「ん~ん。男だったら見てみたいじゃん?」

「そ?」

 そんなものだろうか…?

「二階の納戸かな?もう随分昔の話だから……」

「納屋まであるんだ。」

「お宝発見あるかもね~」

「ふふ…一般家庭に?」

「そういうのって由緒ある所より掘り出されたりするんじゃないの?」

「どうかな?」

 なんて和気藹々、色んな事を話しながらレポートもある程度までまとめ上げた。

「ふ~~~~~…」

 パタン……畳の感触と匂いが心地良い。

「お疲れ様。みんなジュースで良い?」

「あ、買って来たの開けちゃお。」

 お菓子を食べながらやりきった達成感をしばし味わう。

「ほら、これ……」

 しばらく席を外していた山手が何か手に持って帰ってきた。

「何~?山手君トイレだった……?」

「……!」
 
 山手が持っていたのは一本の長い棒…?

「あ、これあったから。」

 ニコリとしながら山手が差し出した物は一本の日本刀だ…

 ゾクリ……一瞬胃の底から嫌な吐き気と寒気が走る…


(夢で、見たから…?)


 夢の中の映像は一部ぼやけてて人物以外ははっきりとしていない事が多い。だから、日本刀があったとしてもどんな色で柄だったかは覚えていない。のに、あんな夢ばかり見るから拒絶反応みたいなものが出てしまってる。

「ふ~~ん?これ、名前ついてる?」

 蒼梧が山手から日本刀を受け取って繁々と見回してて…

「さあ…?本当に知らないんだ…祖父のだからね。桐矢君、扱いに慣れてる?」

「あ、うち神社じゃん?こう言うの時々見るんだよね…」


(妖刀…紫………)


「そうなんだ?宝利君も触る?」

「………あ……」

「どうかした?」

「ん~~~~~…」

 
 何と言ったら良いのか…変な夢を見るから、刀には近寄りたく無いって?蒼梧にも夢の内容は話していないから、いきなりそんな事を話し出してもおかしなことになるしなぁ……


「あ、もしかして、刀恐怖症?」

「ふぇ…?」
 

(何?そんなのあるの?)


「あ、だからか?」

 蒼梧も何か思い当たる事がある様な口ぶりだ。

「え?そうなのか?」

「何?自分でも分かってなかった?」

 山手はそっと蒼梧から日本刀を受け取ると、ここから見えない位置に置いてくれる。

「う~~~~ん…どうだろう…?日本刀が怖いかなんて考えた事なかったしな~」

「じゃあ、見てみる?」

「う……」

 その一瞬で身体が固まるのがわかる。

「あ、ごめんごめん…!別に嫌がらせをしようとしてるんじゃ無いよ?もう仕舞ってくるから…!」

 山手はそのまま日本刀を持って奥へと消えた。

「ふ~~ん。だから楓いっつもいなくなってたの?」

「何が?」

「うちでさ、紫を何度も出す機会あったでしょ?」

「おま、名前言っていいのかよ?」

 蒼梧が妖刀の名前を口にした途端に、俺の方が小声でそう訴える。

「聞こえてても何のことか分からないでしょ?だから良いよ。それより……楓。」

「何?」

「顔色悪い…やっぱ、無理そう?」

 蒼梧が言う無理そう、とは刀の事を受け入れられるかどうかだろうか?

「や、別に俺が無理でも良いんじゃねえ?神社の後継ぐのお前だし。」

「まぁね。もう、帰るか?」

「どうしたんだよ?急に…」

「急も何もないでしょ?もうほとんどレポート終わったし…そんな顔で帰ったらみそえが怒るな~。」

「大丈夫じゃね?」

「多分怒る…物凄く…」

「そんなひどい顔してる?」

「真っ青………」

「そんなに…?」


(怖かったのか、俺………)


「宝利君?大丈夫…?ごめんね、余計な事したみたいで……」

 物凄く申し訳なさそうな山手の顔。俺よりもずっと、泣きそうな顔に見える。

「あ~~大丈夫、大丈夫!レポートも大筋完成だし?不安要素は無くなったよね。」

「そう?なら、良かったんだけど…あ、帰るなら送っていく?それともタクシー呼ぶ?」

「あ~~山手君、いい、いい。俺いるしね~もし無理そうなら迎え呼ぶから。ほら、楓行くぞ?」

「あ、うん…」


 そんなに酷い顔をしてたんだろうか…蒼梧に促されるまま山手の家を後にする事になった。






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