[本編完結]死を選ぶ程運命から逃げた先に

小葉石

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「じゃあ、宝利君、桐矢君明日また学校でね?宝利君気をつけて帰って。また、遊びに来てくれたら嬉しいな?」

「おぅ、またな…お邪魔しました。」

「山手君、またね~」

 無事にレポートは終わりそうだがなんともすっきりとしない山手家での滞在だった…

「楓、迎え呼ぶ?」

 迎えとは蒼梧の家の神社で働いている誰かを迎えに寄越すと言うことらしい。

「いいよ、そんなに酷いか?見た目?」

 
 こっちはさっきよりはずっと回復しているんだが…


「んや、大丈夫そ?」

「おう。だからこのまま帰ろうぜ?」

 すっかり暗くなった道をバス停まで蒼梧と歩く。

「……楓。隠してることあるでしょ?」

「…何、突然。」

「突然じゃ無くて、前から思ってだけど今日、確信した感じ?」

  
 勘がいいんだよな……


「蒼梧だって隠し事の一つや二つ、三つや四つあるだろ?」

 
 きっとこいつはありすぎる。


「そりゃあ、誰でもあるでしょ?ん~けど、そう言うんじゃ無いんだよね?けど、俺の勘、当たってると思うよ。」

「……はぁ、当たってたとして?蒼梧には関係なく無い?」

「やっぱ、そうくるか~~なんて言うかさ?周りがおかしいんだよね?」

「何よ?おかしいって……」

「皆んな、何かを隠してる?そんな気がする……」

「どした?被害妄想?」

「違う…雰囲気で…」

「どこの?誰の?俺?」

「楓はわかる。表情とか態度とか、今まで見過ぎて来たからね?ちょっとここん所おかしいって思ってた。けど、楓だけじゃなくてちょっと周りも気持ち悪いんだよね~」


 何だろな?蒼梧の勘も良すぎやしませんかね?


「周りって…?みそえ?」

「ふふ…お前ら双子のことじゃ無いよ。それ以外。」

「ふ~~ん……」


 何をこんなに気にしているのか、蒼梧の事が少し分からない。神社の後継たる何かの力があるんだろうか。


「で、楓は?何に悩んでるの?まさか、童貞の事じゃ無いよね?やだよ、俺。適当な女紹介するの…」

「お…まぇ…いい加減に、その話題頭から消せよな!」


 絶対に蒼梧から女なんて紹介してもらうか!








 暗闇に刀を携えて、微動だにせず座る男が一人…

………おどろいていたな………

「……覚えていないのだろ……」

………速く捕まえてしまえ………

「…お前に言われなくも、誰にもやるつもりはない。」
 
 真っ暗な室内では声無き声に応える声。

………我は退屈だ…………

「外でも見ていろ…随分と、景色も変わった。」

………だろうな、速く我を抜け………

「断る。此度はやらん…!」

………覚悟を決めたか?人はそう変わらんぞ?………

「百も承知…もう黙れ…」

 静かな男の声に、ビリッとした気迫が篭る。それきり、声無き声はピタリと止まった。






 全く、困ったもんだ。蒼梧の何があったか言え攻撃をなんとか躱して家に帰って、俺の顔色を見たみそえからもお小言を食らってからやっとベッドに寝転んだ。

「言えるわけないよな…夢なんだし……」

 切られてゆく紫の瞳の少女達、妖刀紫。見るものは全て夢だが、現に紫の目をした人間と妖刀はある…

「でも、ちょっと怖かったな………」

 山手の家で日本刀を見た時に感じた恐怖はまだ胸の奥に残っている。夢で切られたのは少女達で自分ではないのに、本能的な恐怖が走った。

「やっぱ…苦手なのかも………」

 トラウマ級の夢を見るせいでそれによって恐怖心を煽られたって仕方が無い。本当に刀恐怖症なら神社にある妖刀紫にも反応するものだろうし、だから今まで見たくもなくてただただ嫌だったんだ。

 
「ま、わかった所でこれからは妖刀なんなかに関わっていかないだろうし?問題無い無い。」


 そう、全く問題無いはず…無いはずなのに、胸の奥がうずうずしてちっとも落ち着かない…


「蒼梧になんて話すの癪だしなぁ…」

 
 散々人を童貞と馬鹿にしてくれたのだ。友達の事が心配だと言ってくれても、まだ馬鹿にされた怒りは収まってないぞ。

 むっと不貞腐れたまま目を閉じた。






(…貴方は、私……私は、貴方………)


 ガバッと跳ね起きた。

 今は深夜過ぎて、家族も寝静まった頃だ。どうやらあのまま本格的に寝てしまったようで、睡眠不足を知っている家族は誰も起こしてはくれなかったらしい。


 冷汗……


 気がつけば汗、びっしょりだ。着替えを持ってシャワーを浴びに行く。ついでに台所に寄って夕飯の残りを暗いキッチンで一人で食べる。


 貴方は、私……?


 よく知っている夢の中の紫の瞳は、今日は真っ直ぐに楓矢を見ていた。切られるまでもなく、あの男が出て来る事もなく、ただそう言い放った。


「うちの家系図……あったっけ…?」

 紫の瞳の少女の名前すら知らないから家系図を見ても誰だか分からないだろう。そもそも宝利家の人間じゃないかもしれない。ただの紫の瞳と言うだけでは昔なら宝利家の他にもまだ産まれてくる家があったのだから。

「もぅ……本当に、なんだよ……」












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