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恥ずかしい………
非常に恥ずかしい姿を晒したもんだ……
(どこの高校生男子が、友達の腕に縋り付いて泣くかよ………)
結局あれから保健医が戻ってきて、俺に熱がないのとか体調の確認をしてくれてからも山手はまだ俺の側にいた。泣いている俺の様子が不安定で、山手に側にいる様に保険医も山手に頼んでいたしな………
一通り泣いてしまった俺は当然目が腫れて授業に出る所ではないし、保険医の許可の元ゆっくりしていきなさいという事で…
「………ごめん……」
穴があったら入りたい……落ち着いてから、消え入りそうな声でまずは山手に誤った。
「何が?」
「さっき………腕、掴んじゃったし……気持ち悪かったかと……」
「……宝利君はさ?もし、桐谷君が何かで凄く何かで悩んでいたとして、それが泣くほどのものだったら、引く?」
「え…?蒼梧が…?いや、そんな事、あんまり無かったから…でも、蒼梧が泣いてても、引きはしないな…」
「でしょ?僕も君が泣いたくらいじゃ引かないよ。」
「え……わり……」
「謝らなくっていいって。僕は全然嫌じゃなかった。うん…君の力に…違うな…大事な時に、側にいる事ができて良かったと思ってる。」
「俺、自殺とか、しねぇよ?」
「え…ふふふ。そうじゃないよ。そんな心配はしてないよ。」
「そうなの…?」
(大泣きする程の悩みを抱えた不安定な友人を前にしたら、もしかして、とか思ったりしないのか?)
「うん…死にたいって思ってるわけじゃないんでしょ?」
「まぁ、そうだな……」
死にたいわけじゃなくて、どっちかと言うと、申し訳ない感じ……
「謝らなくて良いからね?君は何も悪いことしていない…絶対に…」
座りながら話していた俺の頭を山手が優しく撫でる。事情なんて知らないはずなのに、山手は断言する様にそう言い切った。気が弱くておどおどしている様な奴なのに、なんだか物凄く逞しく見えるのは俺が弱っているせいなのかもしれない。
「ふ……なんで山手君が断言できるのさ……」
山手の言葉がジンと胸に広がって、また涙が出そうになる。もう泣き笑いだ……
「出来るよ。君は悪くない。さっき言ってたでしょ?君は切られたって……」
やはりこんな猟奇的な夢を何度も見るのは、普通の感覚では異常だと思う。現に山手は今酷く眉を寄せていて不快感を顕にしている。
「…あぁ……」
「ほら、だったら悪くないよ。君の瞳は綺麗だし、何も悪いことをしてないし、君は何も悪くない。寧ろ被害者じゃないか。」
被害者なんだからもっと堂々としていたらいいよ、とまだ俺の頭を撫でながら続けてきた。
「山手君ってさ…優しいよね?モテるだろ?」
もう流石に正気になっているので、いくら友達と言っても頭なでなでは照れ臭い。
のに、サラッとこんな事を躊躇なくできてしまう優しい山手はさぞかしモテるのだろう。
「ん?僕?全然だよ。それに、大勢に好意を寄せられても、本当に好きな人にそれが貰えないんじゃ、意味がないだろう?」
整った顔立ちの奴が、少し寂しそうな顔をしてニッコリと微笑む。
「…へぇ、山手君…その口振りだと好きな人いるんだな?」
(良いなぁ…俺はもうとっくに彼女作ろうとさえ思わなくなってるもんなぁ…)
「好きな人がいても、必ず自分のものになるとは限らないさ…」
(めちゃくちゃ辛そうな顔するじゃん……)
「え?何?もしかして、失恋したて?ごめん?」
(悪いこと、聞いたか?)
山手は苦しそうな顔をする。いつもほわっとする様な表情なのに、何かをグッと耐える様な今の表情は一気に精悍さが増した様な男らしい感じで…
「いや……まだ失恋したって決まってもいない。」
「え?これから言う感じ?あ、彼氏持ちとか?人に言えない感じの?」
自分が大泣きしてしまった恥ずかしさから、ここぞとばかりに話題を山手の恋バナの方へと振る。ちょっと必死すぎる話題転換だが、とっととさっきの事は忘れて欲しいと言うのが本心だ。
山手はまだ楓矢の頭をなでなでしている。
その行為から子供みたいに安心感を吸収する様な状態に甘えながらも、そんな恥ずかしい姿からは早く目を背けて欲しいと言う…なんとも矛盾した勝手な心境………
「言うのは簡単…でも、手に入るかは大きな賭け……」
「賭け……?そんなに大事なの?…有名人とか?」
山手くらい整ったら顔立ちをしているのならば、もしかして芸能事務所とかから声がかかっててもおかしくはないのかもしれないし、そんな繋がりで?
(ちょっと、ドキドキしてきた…)
さっきまでは自分を落ち着かせようと山手の行為を甘受してきていたのに、違う意味で興奮してくる。
「………誰……?」
(ここには俺と山手の二人きりだ。暴露したとしても、その秘密は守るぞ?)
「ふふ…興味津々だね?もう、気分は大丈夫?」
「あぁ…大分落ち着いたし……で?誰?」
頭を撫でてる山手の手首をそっと掴んで探る様に楓矢は見上げる。
「知りたいの?」
「そりゃあね?」
(こんな事話すチャンスそうそう無いからな。)
「僕の手は?気持ち悪くは無かった?」
「…全然…?」
「そう?」
ふわっと物凄く嬉しそうに笑った山手の笑顔に、見覚えがある…
「あれ?お前と何処かで会わなかった?」
非常に恥ずかしい姿を晒したもんだ……
(どこの高校生男子が、友達の腕に縋り付いて泣くかよ………)
結局あれから保健医が戻ってきて、俺に熱がないのとか体調の確認をしてくれてからも山手はまだ俺の側にいた。泣いている俺の様子が不安定で、山手に側にいる様に保険医も山手に頼んでいたしな………
一通り泣いてしまった俺は当然目が腫れて授業に出る所ではないし、保険医の許可の元ゆっくりしていきなさいという事で…
「………ごめん……」
穴があったら入りたい……落ち着いてから、消え入りそうな声でまずは山手に誤った。
「何が?」
「さっき………腕、掴んじゃったし……気持ち悪かったかと……」
「……宝利君はさ?もし、桐谷君が何かで凄く何かで悩んでいたとして、それが泣くほどのものだったら、引く?」
「え…?蒼梧が…?いや、そんな事、あんまり無かったから…でも、蒼梧が泣いてても、引きはしないな…」
「でしょ?僕も君が泣いたくらいじゃ引かないよ。」
「え……わり……」
「謝らなくっていいって。僕は全然嫌じゃなかった。うん…君の力に…違うな…大事な時に、側にいる事ができて良かったと思ってる。」
「俺、自殺とか、しねぇよ?」
「え…ふふふ。そうじゃないよ。そんな心配はしてないよ。」
「そうなの…?」
(大泣きする程の悩みを抱えた不安定な友人を前にしたら、もしかして、とか思ったりしないのか?)
「うん…死にたいって思ってるわけじゃないんでしょ?」
「まぁ、そうだな……」
死にたいわけじゃなくて、どっちかと言うと、申し訳ない感じ……
「謝らなくて良いからね?君は何も悪いことしていない…絶対に…」
座りながら話していた俺の頭を山手が優しく撫でる。事情なんて知らないはずなのに、山手は断言する様にそう言い切った。気が弱くておどおどしている様な奴なのに、なんだか物凄く逞しく見えるのは俺が弱っているせいなのかもしれない。
「ふ……なんで山手君が断言できるのさ……」
山手の言葉がジンと胸に広がって、また涙が出そうになる。もう泣き笑いだ……
「出来るよ。君は悪くない。さっき言ってたでしょ?君は切られたって……」
やはりこんな猟奇的な夢を何度も見るのは、普通の感覚では異常だと思う。現に山手は今酷く眉を寄せていて不快感を顕にしている。
「…あぁ……」
「ほら、だったら悪くないよ。君の瞳は綺麗だし、何も悪いことをしてないし、君は何も悪くない。寧ろ被害者じゃないか。」
被害者なんだからもっと堂々としていたらいいよ、とまだ俺の頭を撫でながら続けてきた。
「山手君ってさ…優しいよね?モテるだろ?」
もう流石に正気になっているので、いくら友達と言っても頭なでなでは照れ臭い。
のに、サラッとこんな事を躊躇なくできてしまう優しい山手はさぞかしモテるのだろう。
「ん?僕?全然だよ。それに、大勢に好意を寄せられても、本当に好きな人にそれが貰えないんじゃ、意味がないだろう?」
整った顔立ちの奴が、少し寂しそうな顔をしてニッコリと微笑む。
「…へぇ、山手君…その口振りだと好きな人いるんだな?」
(良いなぁ…俺はもうとっくに彼女作ろうとさえ思わなくなってるもんなぁ…)
「好きな人がいても、必ず自分のものになるとは限らないさ…」
(めちゃくちゃ辛そうな顔するじゃん……)
「え?何?もしかして、失恋したて?ごめん?」
(悪いこと、聞いたか?)
山手は苦しそうな顔をする。いつもほわっとする様な表情なのに、何かをグッと耐える様な今の表情は一気に精悍さが増した様な男らしい感じで…
「いや……まだ失恋したって決まってもいない。」
「え?これから言う感じ?あ、彼氏持ちとか?人に言えない感じの?」
自分が大泣きしてしまった恥ずかしさから、ここぞとばかりに話題を山手の恋バナの方へと振る。ちょっと必死すぎる話題転換だが、とっととさっきの事は忘れて欲しいと言うのが本心だ。
山手はまだ楓矢の頭をなでなでしている。
その行為から子供みたいに安心感を吸収する様な状態に甘えながらも、そんな恥ずかしい姿からは早く目を背けて欲しいと言う…なんとも矛盾した勝手な心境………
「言うのは簡単…でも、手に入るかは大きな賭け……」
「賭け……?そんなに大事なの?…有名人とか?」
山手くらい整ったら顔立ちをしているのならば、もしかして芸能事務所とかから声がかかっててもおかしくはないのかもしれないし、そんな繋がりで?
(ちょっと、ドキドキしてきた…)
さっきまでは自分を落ち着かせようと山手の行為を甘受してきていたのに、違う意味で興奮してくる。
「………誰……?」
(ここには俺と山手の二人きりだ。暴露したとしても、その秘密は守るぞ?)
「ふふ…興味津々だね?もう、気分は大丈夫?」
「あぁ…大分落ち着いたし……で?誰?」
頭を撫でてる山手の手首をそっと掴んで探る様に楓矢は見上げる。
「知りたいの?」
「そりゃあね?」
(こんな事話すチャンスそうそう無いからな。)
「僕の手は?気持ち悪くは無かった?」
「…全然…?」
「そう?」
ふわっと物凄く嬉しそうに笑った山手の笑顔に、見覚えがある…
「あれ?お前と何処かで会わなかった?」
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