[本編完結]死を選ぶ程運命から逃げた先に

小葉石

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 保健室で、キス以上の初体験を済ませ、その後爽やかな日差しの中で授業を受ける気にもならず、楓矢はそのまま帰宅の途に着く。

 山手が何かと話しかけてくるけどそんなのは頭に入って来なかった。ただ幽霊の様にフラフラと家路に着いたことしか覚えていない。


(山手はゲイじゃ無いけど俺が好き……
 山手はゲイじゃ無いけど俺が好き…?)


 まだ女子にもされもしたここともない告白をただの級友だと思っていた相手から突如として受けた。

 
(それも、保健室であんなことした後で…)


 楓矢が混乱に混乱を極めてても仕方がない。どう家に帰って言ってベッドに潜り込んだのかも分からない程混乱している。


………私は、貴方………

 
 夢の中の少女の声が楓矢の頭の中で木霊する。
 そして、保健室での一件だ……


(気持ち……良かった………けど……)  


 あれは楓矢が今までに体験したことも無いほど気持ちの良いものだった…だったけど、それ以上に怖かった……あのまま快楽の沼にでもズブズブと沈み込んでいきそうで………

 気を抜けば、もっと…もっとして欲しいと口から出そうになってた………


(あれが………俺………?)

 
 乱れまくっていたあの夢の中の……あの少女の姿が鮮やかに楓矢の脳裏に浮かんでくる…








「宝利君…今日、時間ある?」

 ビックゥゥ……ただ後ろから声をかけられただけなのに楓矢の肩は跳ね上がる。

「よ……はよ……」

 後ろに立っているのは山手だ。

「あ、山手君だ~はよ~。」

「あ、レストランの店員さんじゃん。山手君だっけ?」

 みそえと蒼梧もいるし、学校だし、一応学生だし、昨日の事があっても休もうともせずに来てみたら、朝一番に一番逃げたいと思っていた本人から声をかけられる。

「うん。ごめんね?話中に。」

「いいよ。あ、私今日日直!蒼梧、楓、先に行く!」


(あ、みそえ離脱………)


「日直かったるぅ…みそえ真面目だな。」

「元気だね?」

「…………」

「それで、宝利君は放課後暇?」

「………う~~~ん…?」

「暇だよね~?楓部活入ってないし。」


(蒼梧~~~~!!!)


「そう?良かった。少し、話したい事があって…」

「な、何だよ?」

「ん……後でで良いんだ。じゃあ、放課後に。」

 爽やかに少しはにかんだ笑顔を残して山手は去っていく。が、昨日された事の後では少しどころの話じゃ無いほど気まずいものがあると言うのに………

「何の様?楓、山手君とそんなに仲よかった?」

「いや、そーでも………」


(昨日、告白されましたけど…)


 蒼梧からしてみれば山手はただのクラスメイトでつい最近グループワークを一緒に終わらせた位の中でしかない。楓矢だってそうだったはずなのに…それで済むはずだったのに…

「だよねぇ?何々?なんか相談事?女の子関係だったら誰か紹介しようか?」

「蒼梧……お前ね……」

 もうさっきまでの緊張でぐったりきて怒る気力さえ湧いてこない。

「お?なんか深刻そうじゃん?ま、なんかあったらちゃんと言えよ?相談乗るから。」

「はいよ……」






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