[本編完結]死を選ぶ程運命から逃げた先に

小葉石

文字の大きさ
42 / 46

42

「刀貴…お前良く平気だったな……」


 心からそう思う。もし自分が好きになった女子があんなんだったら?メッチャ、引くと思う……のに………今更ながらに自分の心に不安が走る………


「全ての女達が全く平静だったわけでは無いよ…社に嫁ぐ事は喜びはしても中にはゆうらの様に心を病んでしまう者もいた…」

「それでも…?」

「そう、それでも紫の瞳を持つ娘は神社にとって必要だった。」


 娘達が持つ幸せの裏にある苦悩を刀貴は知っていた。だから頑なに脱走や死ぬ事を選ぼうとするゆうらに寄り添う事もできたのだ。


「俺にとって、ゆうらはかけがいの無い女だった…当時、この手に一度たりとも抱く事が叶わなくても、神主の物と成ろうとも、生きていてさえすれば良かった……」

「……刀貴……」

「だから引かない…お前が、ゆうらがどんな性を背負っているとしても、目の前にお前がいるんだ。それで十分じゃ無いか…」

 
 刀貴のクシャッとなった泣き笑いの様な顔…その瞳は優しくてどれだけ愛してきてくれたかを物語っていて……


「楓矢…お前の望むままに。生きる中でしたい事があったらすれば良い。俺にもそうすれば良い…今までどれだけ願っても叶わなかった事だ。生きて側で笑ってくれるお前がいるのに、何を引く?」


 こいつ、絶対に壊しにきてる………俺の、涙腺破壊魔だ……そんで持って、俺の馬鹿、馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿……大馬鹿だ…!
ゆうらの…大馬鹿野郎……!!

 もう飯どころじゃ無い…食べた物全部涙の味しかしないと思う…






「ずっと、1人だった?」

 またもや刀貴の腕の中…飯食って、大泣きして…抱きしめられて慰められて…散々抱かれた後だったからただ2人で寝転がって…互いにギュッと抱きしめ合った。

 寂しかったのは分かるんだ。けど、誰も慰めてくれる人はいなかったのかと、刀貴の孤独を少しでも……

「嫌、そうでは無い。お前を待ってたから……」


 紫の瞳の娘が生まれるのを待って、期待に裏切られる様にして切ってたのか?


「耐えられずに、抱いた事もある…」

「えぇえ!?」


 初耳なんですけど!?


「まだ記憶がなくてな…それを受け入れてくれるのなら、俺は切らずに済むだろう?」

「それもそうか……」


 刀貴の衝撃の告白だ…健常な男ならちっともおかしい事じゃ無い、うん、おかしい事じゃ無い……過去のことだし…うん、過去………


「だが…」


 ギュウッと引き寄せる刀貴の腕の力が強くなる。


は切れと願った……済まなかった…本当に……」

「いい……刀貴………愛してる……」

 
 言ったことないよな?これ……好き、はあったとしても……懺悔の応酬はもう良いだろう?刀貴がそう思っているみたいに俺だって刀貴に幸せになってもらいたいんだよ……なぁ、もういいよ………







「顔…浮腫んでる………」

 泣きすぎて瞼はパンパン……冷えたタオルで抑えたとしてもいつ腫れが引いて行くか分からないほど腫れている……

「ふ…っくくく………」

「笑うなっつってんだろ!?」

 もう何度目かのやりとりだ。最初は心配そうに申し訳無さそうにしていた筈なのに、何度か目に顔を見つめては耐えられないという様に笑い出す始末……今も必死に笑いを堪えながら頭を撫でてきやがる。

「いいな…いくらでも冷やしてやるからもっと泣いてもいいぞ?」

「あ?何言ってんの?」


(急にいじめっ子モードかよ?)


「お前と居ると何をしてても楽しいな。」

 そう言って刀貴はフワッと笑う。


 それを言ったら、こっちだって同じだっての…!ただ恥ずかしいからそんなこと言えないだけだろ…!


「もう無いだろうな?」

「ん?何?」

 刀貴がヒョイとのぞいてくる。

 
 くっそ!顔がいいな……こっちはブヨブヨの顔してるのに!


「まだ、話してない事…」

「さぁて……」

 愛おしそうにキスを落とす。唇も触ってくる手も、名前を呼ぶ声も全部楓矢が愛しいと物語ってるみたいだ。


 やば…………


 ここにいたら、デロデロに甘やかされて絶対にダメ人間まっしぐらだ。しばらく離れた方がいいのかも……
 
 撫でてくる手にうっとりしながら心の片隅でやりもしない事を思い浮かべてみたりする。


 無理だな………


 自分から離れたって、コイツが駄目だ。もう、絶対に離さないっていう自信とか当然の権利とか、もう俺が自分の一部になったみたいに触れてくる。


「あるんだな……」


 じっとりと恨みがましくつい睨みつけてしまう…

 良いんだ秘密がある事くらい。刀貴は人よりも長く生き過ぎてたんだから仕方ねぇ…あっても良いが、あるならあるって言って欲しい…

 
「今度、挨拶に行こう…」

「ん?何処に?」


 挨拶って?誰に?俺ん家?え?何の?


「ふふふふ………」

「あ!?また笑う!」

「だって、楓矢鳩が豆鉄砲喰らった様な顔して………」

「仕方ないだろ!?刀貴、お前言葉足らずなんだよ!で?どこに行きたいって?」

「桐矢神社の現神主のところ。」

「うわぁ……」

 蒼梧の親父リターン………










感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ
BL
【あらすじ】 高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。 二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。 そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。 青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。 けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――? ※本編完結済み。後日談連載中。

悪の策士のうまくいかなかった計画

迷路を跳ぶ狐
BL
いつか必ず返り咲く。それだけを目標に、俺はこの学園に戻ってきた。過去に、破壊と使役の魔法を研究したとして、退学になったこの学園に。 今こそ、復活の時だ。俺を切り捨てた者たちに目に物見せ、研究所を再興する。 そのために、王子と伯爵の息子を利用することを考えた俺は、長く温めた策を決行し、学園に潜り込んだ。 これから俺を陥れた連中を、騙して嵌めて蹂躙するっ! ……はず、だった……のに?? 王子は跪き、俺に向かって言った。 「あなたの破壊の魔法をどうか教えてください。教えるまでこの部屋から出しません」と。 そして、伯爵の息子は俺の手をとって言った。 「ずっと好きだった」と。 …………どうなってるんだ?

何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。 ……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、 気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。 「僕は、あなたを守ると決めたのです」 いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。 けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――? 身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。 “王子”である俺は、彼に恋をした。 だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。 これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、 彼だけを見つめ続けた騎士の、 世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。

嘘つき王と影の騎士

篠雨
BL
「俺の役割は、貴方を守ることだ。……例え、貴方自身からも」 国の平穏を一身に背負い、十二年間「聖王」という偶像を演じ続けてきたセシル。 酷使し続けた心身はすでに限界を迎え、その命の灯火は今にも消えようとしていた。 そんな折、現れたのは異世界からの「転移者」。 代わりを見つけた国は、用済みとなったセシルからすべてを剥奪し、最果ての地へと追放する。 死を待つためだけに辿り着いた冬の山。 絶望に沈むセシルの前に現れたのは、かつて冷徹に王を監視し続けていた近衛騎士団長、アルヴィスだった。 守るべき王も、守るべき国も失ったはずの二人が過ごす、狭い小屋での夜。 無価値になり、壊れかけた自分を、なぜこの男は、そんな瞳で見つめるのか。 なぜ、そんなにも強く、抱きしめるのか。 これは、すべてを失った「聖王」が、一人の男の熱に暴かれ、再生していくまでの物語。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

計画的ルームシェアの罠

高木凛
BL
両親の転居をきっかけに、幼馴染の一ノ瀬涼の家に居候することになった湊。 「学生のうちは勉強に専念しろ」なんて正論を吐く涼に反発しながらも、湊は心に決めていた。 しかし湊は知らない。一ノ瀬涼の罠に。 【初回3話は毎日更新! 以降は火・木19時更新予定】

いい加減観念して結婚してください

彩根梨愛
BL
平凡なオメガが成り行きで決まった婚約解消予定のアルファに結婚を迫られる話 元々ショートショートでしたが、続編を書きましたので短編になりました。 2025/05/05時点でBL18位ありがとうございます。 作者自身驚いていますが、お楽しみ頂き光栄です。