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「楓矢、怖いか?」
「い、いや、別に…!」
一歩下がるというより三歩位下がって刀貴の後ろからついていく。蒼梧の神社までバスに乗って行かなければならないけど、あれ、良いのか?銃刀法なんたらに引っかからないのか?人を切れる真剣だろ?
考えただけでもゾワッと鳥肌が全身を覆う。
ゆうらの時の記憶は全てがはっきりとしているわけじゃ無い。所々スッポリと抜け落ちているものもあって…妖刀紫に切られた事は覚えてる、がその時の痛みなんかは覚えていない。けど、切られて死んだって言う現実はしっかり頭にあって、心底張り付いてしまってる恐怖はなかなか抜けないみたいだ。
「俺と一緒の時には大丈夫。これには何もできないから。今だって、楓矢がどれだけ望んでも絶対にこれを抜かない…!」
もう絶対に楓矢を傷つけない。確固たる刀貴の決意表明は分かった……て、刀貴と一緒じゃなきゃ何するの?それ……………
「着いたな……」
ジリジリとろくでもない事を考えているうちに蒼梧の実家桐矢神社に到着してた…
「裏から回ろう…」
桐矢神社では参拝者が拝礼できる様になっている表と、神主の住居や御神体を祀っている社が裏にある。刀貴は流石に勝って知ったる者の様で、案内もなくスタスタと奥へ入っていった。
社の中には既に火が灯されて灯りが漏れる。中は数人の大人が楽に座れるほどの小さめの小屋くらいの大きさだ。すべて木造りで何度かの火事で建て直されてもいる。
「約束を果たしに参った!!」
凛と響く腹から出る刀貴の声。普段こんな声しないから目が覚める様な気さえする。
ギィィィィィィ……
音を立てて社の扉が開かれればそのには神主装束を身につけた蒼梧の親父が深く頭を下げ手をついて出迎えていた。
「永らくお帰りをお待ち申し上げておりました。我ら桐矢の面々は謹んでお迎え致す所存故、ごゆるりとお納まり下さいませ。」
台詞がかった物言いと衣装で現実の事というより、舞台で劇でも見ているかの様だった。
「神主よ、覚悟は良いか?」
いつも飄々としている蒼梧の親父の見たこともない様な緊張を孕んだ顔……いささか青白くも見えるけど大丈夫か?それに相対する刀貴はTシャツにGパンっていう、ラフな格好をしていてこの場にそぐわない様な気さえするのに、蒼梧の親父に負けず劣らずの刀貴の気迫が怖いくらいに張り詰めていて声が出せない……
「万事に於いて心得まして御座います。山手様におかれましては永きにおけるお役目誠に有り難く存じます。」
「ならば受け取るが良い。」
そう言うが早いか、刀貴は手に持つ包みをスルスルと開け出した。
ビクッ……
何をされたわけでも無い、もう切らないと、刀貴はそう約束してくれた。けれど反射的に身体が跳ねる……
「怖いなら、目を瞑っていろ楓矢…」
その場に漂う緊張感似合わない優しい声が聞こえて来る。変な恐怖も相待って、その声が刀貴の物なのか蒼梧の親父の物なのか判別出来ない位に緊張してた……
刀が…抜かれる………
…………我を抜け…………
「これより先は、お前を抜かん!」
「…な……?」
頭の中に直接響く様な声…?
…………口惜しい、つまらぬのう………
「……!?」
刀貴が持っている黒々と鞘が怪しく光る刀を蒼梧の父である神主が恭しく両手で受ける。粛々と進んでいく儀式の中で何度となく聞こえたのは誰の声なのか………
神主の腕に収まった妖刀紫に異変はない。社の奥へと納められていく刀は怪しい程に鞘が光を反射して黒々と鈍く光っているだけだった…
「こっっっわ…………!」
社の扉が閉められて全てが終わった事を知った後に、一気に気が抜けた…今更ながら変な汗が出てくる。
「楓君、やはり素質があるねぇ…うん、惜しい…」
先程の緊張感はどこへいったのか…蒼梧の父は飄々としたいつもの柔らかい表情に戻っていた。
「やらんぞ、神主………」
それに反して刀貴の低い声……いつもの刀貴の雰囲気がガラッと変わっているからなんだか近寄り難いんだけど……?
「勿体無いねぇ。楓君が女の子なら万々歳なのに…」
「ならば今度こそ連れて逃げる…」
「と、刀貴?」
ビリビリとした雰囲気はなんだろうか…? さりげなく刀貴が前に立ちはだかる様にして立ってるし…
「こればかりは運命と思って諦めるしかないかな…ね、楓君。」
「え、と親父さん?全く話が見えねぇ……」
「ん~~~楓君、紫眼の花嫁の話は聞いていただろう?」
「そりゃあもう……」
(嫌って言うほど……)
「彼女達はね、納められた妖刀紫の慰め役でもあったんだ。」
「慰め…?」
「そ、皆それぞれちょっとした能力があってね?楓君心当たりは?」
「あ~俺?能力なんて………?」
何かあったか…?
「良くわからない感じかな?ま、それもいいだろうね。時代の流れって言うものもある。」
「で…?」
「紫は退屈を嫌う。」
黙って聞いていた刀貴が口を挟んだ。
「そう、だから彼女達の能力で時折妖刀を慰めていたのさ。」
「へ~~…」
「しかし、昔々この地域一帯を飲み込むほどの大火があってね。この社も妖刀もろとも焼け落ちるところだったのを1人の剣客が妖刀を持ち出してくれた。」
「………」
「辺り一面焼け落ちた後だ。直ぐには復興なんてできなくてね。しばらくは社自体東家の様なものだったらしいよ?」
だからこの妖刀を守る者が必要だった桐矢神社はその剣客を雇い、刀と社また嫁ぐべき娘達の用心棒としたと言うのだ。その後この剣客は姿を消し、桐矢神社は復興を遂げ現在まで受け継いで来られたらしい。
「い、いや、別に…!」
一歩下がるというより三歩位下がって刀貴の後ろからついていく。蒼梧の神社までバスに乗って行かなければならないけど、あれ、良いのか?銃刀法なんたらに引っかからないのか?人を切れる真剣だろ?
考えただけでもゾワッと鳥肌が全身を覆う。
ゆうらの時の記憶は全てがはっきりとしているわけじゃ無い。所々スッポリと抜け落ちているものもあって…妖刀紫に切られた事は覚えてる、がその時の痛みなんかは覚えていない。けど、切られて死んだって言う現実はしっかり頭にあって、心底張り付いてしまってる恐怖はなかなか抜けないみたいだ。
「俺と一緒の時には大丈夫。これには何もできないから。今だって、楓矢がどれだけ望んでも絶対にこれを抜かない…!」
もう絶対に楓矢を傷つけない。確固たる刀貴の決意表明は分かった……て、刀貴と一緒じゃなきゃ何するの?それ……………
「着いたな……」
ジリジリとろくでもない事を考えているうちに蒼梧の実家桐矢神社に到着してた…
「裏から回ろう…」
桐矢神社では参拝者が拝礼できる様になっている表と、神主の住居や御神体を祀っている社が裏にある。刀貴は流石に勝って知ったる者の様で、案内もなくスタスタと奥へ入っていった。
社の中には既に火が灯されて灯りが漏れる。中は数人の大人が楽に座れるほどの小さめの小屋くらいの大きさだ。すべて木造りで何度かの火事で建て直されてもいる。
「約束を果たしに参った!!」
凛と響く腹から出る刀貴の声。普段こんな声しないから目が覚める様な気さえする。
ギィィィィィィ……
音を立てて社の扉が開かれればそのには神主装束を身につけた蒼梧の親父が深く頭を下げ手をついて出迎えていた。
「永らくお帰りをお待ち申し上げておりました。我ら桐矢の面々は謹んでお迎え致す所存故、ごゆるりとお納まり下さいませ。」
台詞がかった物言いと衣装で現実の事というより、舞台で劇でも見ているかの様だった。
「神主よ、覚悟は良いか?」
いつも飄々としている蒼梧の親父の見たこともない様な緊張を孕んだ顔……いささか青白くも見えるけど大丈夫か?それに相対する刀貴はTシャツにGパンっていう、ラフな格好をしていてこの場にそぐわない様な気さえするのに、蒼梧の親父に負けず劣らずの刀貴の気迫が怖いくらいに張り詰めていて声が出せない……
「万事に於いて心得まして御座います。山手様におかれましては永きにおけるお役目誠に有り難く存じます。」
「ならば受け取るが良い。」
そう言うが早いか、刀貴は手に持つ包みをスルスルと開け出した。
ビクッ……
何をされたわけでも無い、もう切らないと、刀貴はそう約束してくれた。けれど反射的に身体が跳ねる……
「怖いなら、目を瞑っていろ楓矢…」
その場に漂う緊張感似合わない優しい声が聞こえて来る。変な恐怖も相待って、その声が刀貴の物なのか蒼梧の親父の物なのか判別出来ない位に緊張してた……
刀が…抜かれる………
…………我を抜け…………
「これより先は、お前を抜かん!」
「…な……?」
頭の中に直接響く様な声…?
…………口惜しい、つまらぬのう………
「……!?」
刀貴が持っている黒々と鞘が怪しく光る刀を蒼梧の父である神主が恭しく両手で受ける。粛々と進んでいく儀式の中で何度となく聞こえたのは誰の声なのか………
神主の腕に収まった妖刀紫に異変はない。社の奥へと納められていく刀は怪しい程に鞘が光を反射して黒々と鈍く光っているだけだった…
「こっっっわ…………!」
社の扉が閉められて全てが終わった事を知った後に、一気に気が抜けた…今更ながら変な汗が出てくる。
「楓君、やはり素質があるねぇ…うん、惜しい…」
先程の緊張感はどこへいったのか…蒼梧の父は飄々としたいつもの柔らかい表情に戻っていた。
「やらんぞ、神主………」
それに反して刀貴の低い声……いつもの刀貴の雰囲気がガラッと変わっているからなんだか近寄り難いんだけど……?
「勿体無いねぇ。楓君が女の子なら万々歳なのに…」
「ならば今度こそ連れて逃げる…」
「と、刀貴?」
ビリビリとした雰囲気はなんだろうか…? さりげなく刀貴が前に立ちはだかる様にして立ってるし…
「こればかりは運命と思って諦めるしかないかな…ね、楓君。」
「え、と親父さん?全く話が見えねぇ……」
「ん~~~楓君、紫眼の花嫁の話は聞いていただろう?」
「そりゃあもう……」
(嫌って言うほど……)
「彼女達はね、納められた妖刀紫の慰め役でもあったんだ。」
「慰め…?」
「そ、皆それぞれちょっとした能力があってね?楓君心当たりは?」
「あ~俺?能力なんて………?」
何かあったか…?
「良くわからない感じかな?ま、それもいいだろうね。時代の流れって言うものもある。」
「で…?」
「紫は退屈を嫌う。」
黙って聞いていた刀貴が口を挟んだ。
「そう、だから彼女達の能力で時折妖刀を慰めていたのさ。」
「へ~~…」
「しかし、昔々この地域一帯を飲み込むほどの大火があってね。この社も妖刀もろとも焼け落ちるところだったのを1人の剣客が妖刀を持ち出してくれた。」
「………」
「辺り一面焼け落ちた後だ。直ぐには復興なんてできなくてね。しばらくは社自体東家の様なものだったらしいよ?」
だからこの妖刀を守る者が必要だった桐矢神社はその剣客を雇い、刀と社また嫁ぐべき娘達の用心棒としたと言うのだ。その後この剣客は姿を消し、桐矢神社は復興を遂げ現在まで受け継いで来られたらしい。
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