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45 本編完結
「剣客のその後は誰も分からない…これが桐谷に伝えられている表の伝承。」
蒼梧そっくりの親父さんの顔はさっきと違い物凄い穏やかだ。蒼梧が歳食って親父さんと同年代になったら渋さの中にも甘い魅力があるナイスダンディなやっぱりモテるイケおじになるだろう、なんてしみじみ思う。
「けどね、当主にだけ伝えられてきている物がある。」
「もういいだろう?」
刀貴は早々に帰りたそうにしている。
「山手様、楓君にも聞く権利があると思うんですよ。」
「ん、で何?」
止めようとする刀貴の腕を掴んで先を促す。
「御神体妖刀紫が人の手を取った。持ち主である剣士が無事に帰るまで社を守る様にと。」
蒼梧の親父さんは真っ直ぐに刀貴を見つめる。
「ここまでが私が知って聞いてきた伝承。後の事は私達の知り得る範疇を超えているでしょうからね。」
人の手を取った妖刀で、目の前の刀貴が何をして来たか………
「楓君。紫は非常に退屈を嫌うんだ。だから時として非情な事象が起こってしまう。我ら桐矢はそれを抑えて、ここを守る為にある。」
コク…これは知ってる。代々桐矢家の仕事だと。
「なかなかに、これが厄介な仕事でね。実は今から胃が痛い……」
「楓矢はやらんぞ…」
「ええ、重々承知しておりますよ。これは我が家の仕事ですからね。次に産まれる紫眼の娘にでも期待しましょう…」
「約束は守る。」
「それだけも有難い事です。では、山手様、この度は大変ご足労をおかけしました。楓君また蒼梧の所に遊びにおいで。」
「あ、はい…」
蒼梧の親父さんはそのまま一礼してその場を後にした…
「酷く、疲れてるっぽくなかったか?」
笑顔で去って行ったけど蒼梧の親父さん、なんだかとても疲れて見えて仕方がない…
「あれに触れたからだろうな…」
「あれ?って紫?」
「そうだ。帰ろう楓矢。」
「ん、で、約束って何?」
ガシッと、刀貴が逃げるとも思わなかったが、腕をしっかりと掴んで刀貴に聞く。
「ふ………桐谷の家との約束だよ。楓矢には関係ないもの。」
「何?」
妖刀紫を持って今まで生きて来たのは何のためだ?俺は関係ないって絶対に言えないだろ?
「……はぁ、仕方がないな……俺が生きている限り、紫を押さえ込むって事。」
「うぇ!お前、そんなこと出来んの?て言うか、あの妖刀生きてんの?なぁ!なんか喋ってたのってそれ?」
「聞こえてたか?」
「頭ん中、響いて来てた……」
「紫眼の娘には何らかの力があった…」
ゆっくりポテポテ帰りの道を歩きながら刀貴に聞きたい事、知りたい事次々に聞いていく…
「それは様々で紫はそれを気に入っていた様だ。」
封じられて外に出されることも無くなった妖刀紫。極たまにやってくる娘達から何らかの刺激を受ける事を殊の外楽しみにしていたらしい。らしい、と言うのは人間側で考えていたものであるのだが。娘達を寄越す様になってから怪奇な事象が減ったと言うのだからあながち嘘ではないのだろう。だから綿々と続いていた紫眼の娘の嫁取りなのだ。
「ふ~~ん?で、押さえ込むって?どうやって?」
「………妖刀は妖刀と言われる所以がある。」
諦めたかの様に刀貴は話す。
「時に人を欺き心を奪う。良い刀鍛冶が作る物には命が宿る。それがどんな性質のものだろうとな…使う者がこれに負ければ人が刀に使われる。」
「乗っ取られるって事?」
「手っ取り早く言えばな…」
「刀貴は……?」
じゃ、刀貴も乗っ取られてゆうらを…?
「違うぞ?剣の道に入る者ならば迷わない様に心も鍛える。だから俺は紫を押さえられていた。」
「すげぇな……」
「そうでもない。紫は退屈を嫌うからな。俺の命と繋がっている様な状況を作り出したのもただの退屈凌ぎのうちだろう。俺はゆうらを求めていた。俺と共にいる限り紫は紫眼の娘にも会えるのだ。だから力を貸したのだろう。」
「紫眼の娘が気に入ってるのに、紫はゆうらを切ったのか…?」
ちょっと矛盾してねぇ?
少しだけ、恐怖にまだ心が揺れる。無意識だと思うけど気がついたら刀貴の腕の袖を掴んでた…
「興味があって、切る事を許していたとも言える…」
刀貴はそっと俺の手を取って繋ぎ直した。もうすっかり暗くなってるから周りには見えにくいだろ?
「あれには俺の様な執着がなかったんだ。紫眼の娘が生きていようとも死んで行こうとも…所詮は心など持たぬ造り物だからな…」
俺は違う、とでも言いたげに刀貴はギュッと手を握る。
あぁ、違うさ。造り物なら暖かくない、触れた所から反応もきっと返ってこない、こんなに寄り添おうとして心を砕いてなんかしない…自分の気持ちを殺して、永遠と待っててもくれない…今を、ちゃんと生きることもできないだろう?
「俺、お前で良かったわ…」
「何を今更?俺は既にそれしか思っていないぞ?」
「なぁ、俺に何して欲しい?」
ずっと考えていた事…刀貴がしてくれてた事に少しでも応えたいって、ねぇ?何ができるってもんでもないけどな…
「ずっと一緒に生きて……一緒に死んで欲しい…」
もう、これしか欲しくない。
「しょうがねぇなぁ…全部やるよ…」
グイっと刀貴の腕を引く。少し刀貴が屈んだ所で、襟首も後ろから押さえつけて俺は刀貴に思い切り深いキスをした……
…………本編完…………
蒼梧そっくりの親父さんの顔はさっきと違い物凄い穏やかだ。蒼梧が歳食って親父さんと同年代になったら渋さの中にも甘い魅力があるナイスダンディなやっぱりモテるイケおじになるだろう、なんてしみじみ思う。
「けどね、当主にだけ伝えられてきている物がある。」
「もういいだろう?」
刀貴は早々に帰りたそうにしている。
「山手様、楓君にも聞く権利があると思うんですよ。」
「ん、で何?」
止めようとする刀貴の腕を掴んで先を促す。
「御神体妖刀紫が人の手を取った。持ち主である剣士が無事に帰るまで社を守る様にと。」
蒼梧の親父さんは真っ直ぐに刀貴を見つめる。
「ここまでが私が知って聞いてきた伝承。後の事は私達の知り得る範疇を超えているでしょうからね。」
人の手を取った妖刀で、目の前の刀貴が何をして来たか………
「楓君。紫は非常に退屈を嫌うんだ。だから時として非情な事象が起こってしまう。我ら桐矢はそれを抑えて、ここを守る為にある。」
コク…これは知ってる。代々桐矢家の仕事だと。
「なかなかに、これが厄介な仕事でね。実は今から胃が痛い……」
「楓矢はやらんぞ…」
「ええ、重々承知しておりますよ。これは我が家の仕事ですからね。次に産まれる紫眼の娘にでも期待しましょう…」
「約束は守る。」
「それだけも有難い事です。では、山手様、この度は大変ご足労をおかけしました。楓君また蒼梧の所に遊びにおいで。」
「あ、はい…」
蒼梧の親父さんはそのまま一礼してその場を後にした…
「酷く、疲れてるっぽくなかったか?」
笑顔で去って行ったけど蒼梧の親父さん、なんだかとても疲れて見えて仕方がない…
「あれに触れたからだろうな…」
「あれ?って紫?」
「そうだ。帰ろう楓矢。」
「ん、で、約束って何?」
ガシッと、刀貴が逃げるとも思わなかったが、腕をしっかりと掴んで刀貴に聞く。
「ふ………桐谷の家との約束だよ。楓矢には関係ないもの。」
「何?」
妖刀紫を持って今まで生きて来たのは何のためだ?俺は関係ないって絶対に言えないだろ?
「……はぁ、仕方がないな……俺が生きている限り、紫を押さえ込むって事。」
「うぇ!お前、そんなこと出来んの?て言うか、あの妖刀生きてんの?なぁ!なんか喋ってたのってそれ?」
「聞こえてたか?」
「頭ん中、響いて来てた……」
「紫眼の娘には何らかの力があった…」
ゆっくりポテポテ帰りの道を歩きながら刀貴に聞きたい事、知りたい事次々に聞いていく…
「それは様々で紫はそれを気に入っていた様だ。」
封じられて外に出されることも無くなった妖刀紫。極たまにやってくる娘達から何らかの刺激を受ける事を殊の外楽しみにしていたらしい。らしい、と言うのは人間側で考えていたものであるのだが。娘達を寄越す様になってから怪奇な事象が減ったと言うのだからあながち嘘ではないのだろう。だから綿々と続いていた紫眼の娘の嫁取りなのだ。
「ふ~~ん?で、押さえ込むって?どうやって?」
「………妖刀は妖刀と言われる所以がある。」
諦めたかの様に刀貴は話す。
「時に人を欺き心を奪う。良い刀鍛冶が作る物には命が宿る。それがどんな性質のものだろうとな…使う者がこれに負ければ人が刀に使われる。」
「乗っ取られるって事?」
「手っ取り早く言えばな…」
「刀貴は……?」
じゃ、刀貴も乗っ取られてゆうらを…?
「違うぞ?剣の道に入る者ならば迷わない様に心も鍛える。だから俺は紫を押さえられていた。」
「すげぇな……」
「そうでもない。紫は退屈を嫌うからな。俺の命と繋がっている様な状況を作り出したのもただの退屈凌ぎのうちだろう。俺はゆうらを求めていた。俺と共にいる限り紫は紫眼の娘にも会えるのだ。だから力を貸したのだろう。」
「紫眼の娘が気に入ってるのに、紫はゆうらを切ったのか…?」
ちょっと矛盾してねぇ?
少しだけ、恐怖にまだ心が揺れる。無意識だと思うけど気がついたら刀貴の腕の袖を掴んでた…
「興味があって、切る事を許していたとも言える…」
刀貴はそっと俺の手を取って繋ぎ直した。もうすっかり暗くなってるから周りには見えにくいだろ?
「あれには俺の様な執着がなかったんだ。紫眼の娘が生きていようとも死んで行こうとも…所詮は心など持たぬ造り物だからな…」
俺は違う、とでも言いたげに刀貴はギュッと手を握る。
あぁ、違うさ。造り物なら暖かくない、触れた所から反応もきっと返ってこない、こんなに寄り添おうとして心を砕いてなんかしない…自分の気持ちを殺して、永遠と待っててもくれない…今を、ちゃんと生きることもできないだろう?
「俺、お前で良かったわ…」
「何を今更?俺は既にそれしか思っていないぞ?」
「なぁ、俺に何して欲しい?」
ずっと考えていた事…刀貴がしてくれてた事に少しでも応えたいって、ねぇ?何ができるってもんでもないけどな…
「ずっと一緒に生きて……一緒に死んで欲しい…」
もう、これしか欲しくない。
「しょうがねぇなぁ…全部やるよ…」
グイっと刀貴の腕を引く。少し刀貴が屈んだ所で、襟首も後ろから押さえつけて俺は刀貴に思い切り深いキスをした……
…………本編完…………
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