[完]幼馴染の結婚式に出たつもりでしたが、なぜか私が幼馴染の隣にいます……

小葉石

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18 ルシーの婚約者 4

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 ルシー達が人混みで見えなくなるまで、何人もの紳士淑女に二人は挨拶されている。その度に立ち止まって何やら言葉を交わし、にこやかに社交を楽しんでいる様にサラータには見えた。挨拶を交わす間、二人はピッタリと寄り添って楽しそうにおしゃべりもし、言うなれば仲睦まじい夫婦の様な雰囲気さえも醸し出していた。

「あの……子爵様……?」

 取り分けてもらった美味しいケーキに舌鼓を打ちながら、サラータはそっと尋ねてみる。

「どうしました?」

「あの、先程のハダートン卿が、あの、ルシーの婚約者の方……?」
 
 多分そうなんだろうとの憶測だが、あんなにも親密そうなのだから、これで違ったら王都の倫理観とか貞操観念とかはどうなっているのだろうか?サラータがこの話題をカザラント子爵キュリオに出せば、キュリオはキュッと眉を顰めるのだった。

(あ、困っておられる?それとも、何やら嫌そうな…?もしかして、キュリオ様はあまりハダートン卿とルシーの親密さがお嫌とか…?)

「なんとも、不快な者を見せてしまいましたね?彼が出てくるのならば、こうなるとは分かっていたのですけれど…」

 ハダートン卿のお茶会への出席をキュリオは快く思っていなかった様だ。それよりも、そもそもルシーの婚約者であれば呼ばわりはしないだろうから、違うのだろうか……?
 表情を曇らせてしまったキュリオにこれ以上追い討ちをかけてサラータは質問するつもりは無かった…

 だって、ここは国の中心部で王城内である。そこに、ただ一人市民が紛れ込んでしまった。目立たず、騒がず、粗相をせずにカザラント子爵邸に帰る事だけを今は目標としよう……


 けれどただ立っているだけでも、キュリオも十分に人目を引くし、何故だか、サラータにもボチボチと声をかけてくる紳士に淑女達。ゆっくりとお茶を堪能しつつルシーの帰りを待とうと気持ちを切り替えたものの、周囲の人々が二人を放っておいてはくれないらしい。

 サラータはキュリオの側を離れず、目が回りそうになりながらも声をかけてくれた方に挨拶を返し笑顔を振り撒き、周囲の淑女と同じように一生懸命に振る舞った。

 気がつけば、周囲を人で囲まれている始末………思わず誰かに助けを求めようにも隣にはカザラント子爵のみだ。

「これは!カザラント子爵も隅には置けないな…!こんなに美しいご令嬢を一体今までどこに隠していたんだい?」

 挨拶を交わした中には、スッと自然に手や髪に触れてくる者もいて…かわすことも出来ずに固まってしまったサラータをキュリオがそっとそこから引き剥がしてくれる。

「……侯爵…お許しを。大切な方からの預かり物ですから…」

「ふふん…君の大切な方とは、彼の方しかいないじゃないか?結婚式を控えているというのに、君はこんな所で油を売っていて良いのかね?そのご令嬢は私が面倒を見よう。君は大切な主人の所にでも帰ったらどうだい?」

 やっと離して貰えたというのに、またもやサラータは手を握られてしまう。

「……………」

(どうしよう?相手は侯爵様のようだし、このまま行くのがいいの?断ってもいいの?それに、キュリオ様の大切な方、結婚を控えたって…ルシーの事よね?では、キュリオ様がルシーの婚約者?え?でも待って?ルシーはハダートン卿と行ってしまった………)

 初めての貴族の社交の場に来ているサラータにとっては侯爵からのこの様なアプローチのかわし方も、後腐れのない断り方もわからない。ニコニコと愛想を振りまいていたのがいけなかったのか?サラータは所在無げに侯爵とキュリオの顔を交互に見つめつつも、侯爵が話していた内容が頭から離れない。

 その時、サラータ達に挨拶しようと遠巻きにしていた人々の輪の外側がざわつき始めた。

「殿下……!?」

 悲鳴のような小さな声が人垣から聞こえたような気がする…………













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