[完]蝶の精霊と思っていたら自分は龍でした 皆んなとお別れするのは寂し過ぎるのでもう一度殻に閉じこもりますから起こさないでください

小葉石

文字の大きさ
26 / 72

26 再び追って

しおりを挟む
 精霊魔法……リレランを探していた時にも使ったもの。そして、今ならシェルツェインがとして教えてきたものが、精霊魔法に当たる事もレギル王子は十分に理解していた。

"探し物を見つけて"

 レギル王子ははっきりと自信を持ってそう呟いた。
パチンッと目の前で散る火花にはまだ慣れなかったがレギル王子の上空には見たことがある虹色の糸がまたもや北に向かって伸びているのが見えた。迷いの森から少しそれた方角には大国ソラリスに当たるはず…

「そこか…」

 国を出ると行動に移した今朝は、何とも言えない清々しい気分だ。

「ハァッ!」

 掛け声も高くレギル王子は颯爽と駆け出す。不安に慄き焦燥に駆られながら出て行ったあの日とは違う。

「リレラン、私は必ず、もう一度君に…!」

 龍リレランに会う。その希望だけが不思議と胸を支配している。対価を払いに行くのだが、高鳴る胸の鼓動が抑えられないでいる。命以上の物を所望されたら支払い切れないのだが、それさえもなんだかワクワクしてレギル王子は気持ちが昂ぶる…








「へぇ…兄さん見かけない顔だね?どっからきなすった?」

 カシュクールを出てから一番最初の国ガランド、ほぼ一日中走りに走りきって馬が潰れてしまう前に宿に泊まった。手持ちが少ない為、ほぼ素泊まりの状態で外で夕食をとる。そんな中では気さくに声を掛けてくる気の良い親父もチラホラ集まっていて、どっから見ても身なりの良いレギルは注目の的になってしまっていた。

「南の、カシュクールから…」

 暖かい汁物の皿を片手に親父達の会話にレギル王子は引っ張り込まれていく。

「ほぉ!どうだい?今のカシュクールは?雨が降ったって言うじゃねぇか?」

「ああ、やっと東西の山の泉も潤った…」

 レギル王子が食べている物は道端の露店で買った食べ物だが中々の味だ。

「そりゃ、良かったな!ところでよ?」

 ずずいっとハチマキをした男が顔を近づけて小声で聞いてくる。

「兄さん。何やってる人よ?あれか?今流行りのさぁ…」

「…流行り…?」

「なぁんだ、知らないのかよ!カシュクールがあんなだっただろ?死にたくないって奴は五万といてさ?国を出る者もいただろ?」

 それはそうだ。だが、大部分は住み慣れた、代々の土地を離れたくないと言ってその土地から離れた者は多くは無いとレギル王子は聞いている。

「だから、どうせ死んじまうんだったらさ、それらを有効活用しようって言う輩が出てきてもおかしく無いだろう?」

「………有効活用とは?」

「なんだ、本当に知らねぇの?アレだよ、ア、レ!」

「…なんだと言うのだ?」

「はっはっ!おい!この兄ちゃん本当に知らねぇみてぇだぞ?」

 ハチマキの隣にいた色黒の男が横から口を出して来た。

「良いかい。食べられねぇと人は死ぬ。じゃあ、死なねぇ為に何をするか?子供が飢えて死ぬのを見るか、何処かに売っぱらちまうか兄ちゃんだったらどっちが良い?」

 どっちが良いと聞かれても…売っぱらう…子供を人身売買すると言う事だろう。家族が食べていく為には、またその子供が食べていく為には当時は致し方なかったのかも知れない…が。

 ギリッ……レギル王子が持つ皿が軋んで音が鳴る。

「そう言う奴らが国境沿いにウロウロしてんだよ。あんたみたいな小綺麗な格好してな?奴ら羽振りは良いからな身なりは綺麗だけど、中身が腐ってやがる…!!」

 最後の言葉を地面に吐き捨てるように色黒の男は言い捨てた…

「あ~あ、まだ割りきれねぇのか?」

 ハチマキの男はやれやれと言いたげだ。

「はん!無理に決まってるだろうが!!」

 色黒の男はこの辺りの山でキコリをしているザックと言った。いきなりの激昂振りに若干呆気にとられたレギル王子だが、その理由をハチマキの男が教えてくれた。

「こいつの息子もキコリでよ?何時もの様に山で仕事をしてたんだよ。そしたら、奴らが来たのさ、子供達を数人引き連れてな?」

 どうにも様子がおかしいと思った息子は、仕事をしているか風を装って近づいてみる。連れられて来た子供はどの子もみんな泣いていて、見れば山道だと言うのに靴さえ履いていない子供もいた。息子はキコリ仲間の若者に声をかけて、奴らに気が付かれない様に後ろへ回ったそうだ。子供を連れてた大人達は、ちっとも子供を気遣う素振りさえ見せずに子供達を小突き回して歩かせてたそうで、こりゃ、人攫いの一団だ、と若い者達がその大人達に立ち向かったそうな。一方はキコリの若衆、一方は手練れの様な得物を持ったその道に慣れている奴ら。どっちが勝つかなんて考えなくてもわかったろう。子供を助けようとした息子は犠牲となり、一人だけ帰らぬ人となってしまった。
 それからだ、国境付近の村や町では自警団らしき物を作ってはそんな集団から国民を守る為に動き出す。けれどイタチゴッコで実際の被害は減っていない。

「けどよ、お前の息子は立派だったよ…あの子みたいのがいるから腕っ節に自身がある奴らが自警団に名乗り出してくれたんだしな…」

 ハチマキの男はザックの背中をバンバン叩いて慰める。

「あぁ、もうちょっと北に行くとものすげぇ腕の立つ用心棒も出てきたって言うし、無駄じゃなかったよ、な?」

「くぅぅ…」

 男泣きに泣き始めたザックをハチマキの男はひたすらに慰める。

「なぁ、兄さん。あんたは何の為にここに来たんだい?」

 先程から静かに食事をしていた小柄な男が聞いて来た。

「私は、探し者です…とても、大切な者を探しているのです。」

「そうかい…見つかると良いなぁ…」

 そう言うとまた静かに食べ始める。レギル王子も男に倣って食べ始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。 これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。 無自覚両片想いの勇者×親友。 読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

処理中です...