[完]蝶の精霊と思っていたら自分は龍でした 皆んなとお別れするのは寂し過ぎるのでもう一度殻に閉じこもりますから起こさないでください

小葉石

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 ガッシャーン!!!!ガン、バダン!!

 ビクッと寝台で身体が揺れたほどレギル王子は驚いた…城にいるならば就寝中にこんな物音で起こされたことはない。何事かと、急いで剣を持って部屋から出てみた。

「何事だ!」

「あ!起こしちまいましたか?何、心配いりませんぜ、酔っぱらったお客が暴れてるだけですからね?」

 酔った客?どうやら宿屋の受付前で盛大に机と椅子を倒したらしく、机の上に置いてあったと思しき物が床に散らばっている。

「いや、お騒がせしましたね!たまに有るんですよ。こう言うのがさ。さ!旦那!立てますかい?」

 立てるか、と聞かれた客はもう立てそうに無いほどに酔っているようだが…

「何言ってんだ!酔ってねぇって!離せよ!」

 立たせようとした主人の手をはたき落とし
尚自分で立とうとしてまた転ぶ、を数回繰り返していた。転ぶ度に騒音を出すし何かわけわからない事を大声で叫んでいるしで、典型的な酔っ払いだ。他の部屋の客はそれでも慣れているのか、ほぼ誰も出てこない………

「仕方ない……」

 主人に大丈夫だと言われた手前、レギル王子も部屋に帰ることもできたがこの騒音では安眠どころかストレスが溜まる。

「主人…暫く外に連れ出そう……」

 ホゥとため息を吐いたレギル王子は今夜の睡眠を諦めた…

「ほら、立て!」

 酔って、グデグデとくだを巻く男の腕を掴んでグイッと立たせた。宿屋の主人が立たせられなかった程だからかなり重いのかと思っていたら、随分と細身の男の様だった。

「あに、すんだ!離せよぉ~!」

「離すのは構わないのだが、少々お前はうるさいのでな。違う所で離してやろう…主人井戸はどこだ?」

 酔った者ならば騎士訓練時代に何人も見たこともあるし、王子の立場であっても同期の者の介抱位した試しがある。ので、大丈夫だろう。何やら喚き散らす男を軽々と引きずって、裏にあると言う井戸まで連れて来た。井戸の側に男を投げ出す様に座らせると水を汲み容赦なく男の頭にぶちまけた。

「ぶぅあっ!ちべてぃ!!」

「目が覚めたか?まだならもう一杯行くが?」

「まっまっ…待って!つめてぃ!何しやがんだ!!」

「何とは?酔って宿屋で暴れていたぞ?私だとて安眠を邪魔された…もう少しだったのに……」

 後、少しでリレランに触れる事ができたのに…夢の中での事なのだが……

「あんた誰だよ!良くも俺様にこんな事してくれたな!俺の仲間が黙っちゃいねぇぞ!」

「ほう?その仲間とやらは何処に居るんだ?ぜひとも教えていただきたいものだが?宿屋にも弁償をしなくてはならないだろう?」

「は?何言ってんだ!あんなシケタ宿屋なんて知るか!おら、退けよ!」

「お!ここにいたのか、デイル!あ~ぁ、他人様巻き込んじゃだめじゃねぇか。」

 デイルと呼ばれた男がバッと飛びかかるよりも前にレギル王子は剣を素早く抜くとデイルの胴横目掛けて勢い良く突いた。

 シュッ…ガチーン……………

 高い金属音と同時に、ヒッと言う人の悲鳴…ズルズルズルと井戸の前に蹲み込んだのは勢いよく飛びかかろうとしていたデイルだ……

 レギル王子の剣は井戸に当たり止まっていた。

「これでも酔いは覚めないか…?」

 おかしいな?騎士ならば大抵これで目が覚めるのに?酷く真面目そうな顔してやっている事は恐ろしい………デイルの腰帯のみ切れてハラリと地面に落ちた…

「ほ~~~良い腕してるね、あんた!」

「ヒュウ!何処の騎士様だ?」

 今正にその剣で突かれそうになっていたデイルの事は既に横に置かれた状態になっている…

「目は覚めたか?」

 レギル王子は剣を仕舞いながらもう一度聞いた。

「さ、覚めましたで御座います………」

「はっまだ寝てるぞ!こりゃ!」

「なぁなぁあんた!一人かい?だったら良い仕事があるんだがね?」

「お!あんたすげぇ変わった目の色してんな…たまげたわ…初めて見る色だ…」

「どれどれ?」

 あっという間にデイルの仲間であろう男達にレギル王子は囲まれる。

「この男はあなた方の連れか?」

 数人の男に囲まれてもいざ知らず、レギル王子はスタスタと宿屋の方に戻って行こうとしていた。

「そうだが、世話になった様だな?何か礼をするよ?」

 リーダー格の様な男がレギル王子に近付く…焦茶の黒に近い髪に同色の瞳。背は高いが体格はそんなにがっちりとしているわけでもなさそうだ。無駄な筋肉が付いていないそんな印象を受けた。

「要らん。謝罪ならばこの宿屋の主人にしてくれ。破損品が出ているからな。」

「そうかい、そりゃ悪かった。それでなぁ、あんた。どうだ、俺達と組んで一仕事しないか?」

「悪いが先を急いでいる。物見遊山に北へと行くわけでは無い。勿論仕事を探しているわけでも無い。」

「まじか!?残念だな…あんたみたいに腕の立つ奴を探してたんだけどな?向こうにはめっぽう強い奴がいるからよぉ…」

 どうすっかなぁ~と間延びしながら、たいして悩んでもいなさそうな声を出す。

「向こうとは何処だ?」

「ふっ聞いてくれよ!兄弟!ソラリスよ!そこに居るのが俺達の仕事の邪魔すんだよなぁ。兄弟位の腕の漢を探していたのよ。どうだ?」

 リーダー格の男は馴々しくレギル王子の肩を抱く。

「あなた方の仕事を手伝うつもりは無い。面倒毎に巻き込まれている時間が惜しいのだ。」

「まぁまぁ、これも何かの縁だ…一緒に行動しなくても良いからよ。何かあった時は手を貸してくれや?な、兄弟!」

 レギル王子はそっと男の腕を外す。

「それも状況によりけりだ。あなた方の仕事がなんで有るかも分からんうちは手は出さん…」

「俺らはアレよ!大人に夢を売る、夢の販売人よ!」

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