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43 地の果ての古龍
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レギル王子は目のやり場に困りながら、着ていたマントをリレランに渡す。勿論リレランは龍なのだから裸だろうと関係ないとは思うのだが、レギル王子にとっては十分気になる所のようで…差し出されたマントを渋々ながらリレランは身に纏う…
「どうして人の姿に…?」
リレランは今瞳の色を変えてはいない。龍の時と同じ水晶の様に透き通った瞳でレギル王子を見返してくる。
「バルーガは人間の言葉を操れないから。」
バルーガはリレランが言っていた通りの太古の古龍で長く生きてはいるが、時代と共に言葉が変わり行く人間に合わせる事に疲弊していると言う。まあ、これだから太古の化石と言われる様なもの達は外界との関わりが更に希薄になっていくのだが…だから、リレランは人型を取る。バルーガに会話が漏れる心配がないから。
「その、太古の古龍がなぜ私に?」
至極最もな疑問である。龍繋がりで言えば、リレランに用があると言うのならばまだ分かるのだが……?
「さぁ?僕にも分からない…古龍が何処にいるか、何をしているのかは掴めるけど、その意思なんて知らないよ。」
何処となくぶっきらぼうにリレランは答える。強いて言えば面白く無いらしい。ここまでレギル王子を連れてくれば、異形な生物に恐れをなして帰ってくれるとでも踏んでいたのかもしれないが。それも、なんのその……不安げもなくレギル王子にそれらを片付けられてしまっては次の手を考えないといけなくなった。それなのに、瘴気の森の古龍の横槍も入るし…手元にも置きたく無いのに、自分の手の中にある物に手を出されることへの不満を顔に隠さずリレランは貼り付けている。
レギル王子は珍しい事がある物だと、歩きながらリレランを見つめた。今までのリレランならば、まず我関せずを貫き通すと思っていたのに…明らかに古龍の招待を嫌がっているし不服そう……
"お若いの……そこな塵が取られそうで不安かね?"
また、地の底からの様な声がする。…塵、とはレギル王子のことだろうか?
"バルーガ…塵とは誰のことを言っている?"
嫌そうなリレランの声……
"ハッハッハッ!自分の物で無いのに所有欲か?若いのぉ"
"何を……!"
"まぁ、待てお若いの…そのままここまで進まれよ…"
バルーガはレギル王子がいる事なんて眼中にも無い体でリレランに話しかけている。
森に進めば進むほど、木々が枯れ始め、空気は淀み辺りは暗くなっていく…瘴気の中では植物は育たない。一種の毒素の様な物が辺りに立ち込めていることになる。が、レギル王子の身体にはなんら変化はない様だ。苦しみも異常も感じ無い。木が完全に無くなると土がむき出しになっている沼地の様な地が広がって行く…
"そうさな…そこまでじゃ…"
言われた指示に従って、リレランとレギル王子は足を止めた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………………………
地響きと共に目の前に小高い丘が現れる。
「地形が………」
レギル王子が驚きに目を見開いていると目の前の丘から声がする。
"塵には儂が、大地に見えるか?真実を見る目があるというのに宝が腐っとるのぅ"
"バルーガ……"
リレランは本当に嫌そう……
"それの光には覚えがあってな、こちらも面倒だか黙ってもおれないのでな"
"何の用?"
"随分とその塵を庇うでは無いか、お若いの?"
"………"
"フン…あの羽虫め……余計な面倒を残していきおって……"
羽虫とは?今までレギル王子の事は塵と呼んでいたのだから、他の誰かのことを指しているとは分かるのだが、一体誰のことを?
"羽虫とは、マリーのことか?"
若干リレランの目の色が光った様に感じたが……
"ハッハッハッ…面白いことを言う…羽虫を庇うか?若いの。儂にとっては人も精霊も羽虫も一緒じゃ…"
物凄く大雑把に一括りにされている様に思うが……人と精霊は随分と違う様に思うのだが………
"一緒じゃよ…儂にはどうでも良いことだからの…"
"ではなぜ、ここに呼んだ?"
"我らとて理の中で生きている…それも長い間のぅ…お若いの、同じじゃ…ここから離れる事はできんのじゃ……自分を満たす物を見つけたならば尚更の…"
"満たすもの?"
"ほっ…塵が意見するか?その瞳の光実に目障りよのぅ……どれ、抉り出してやろうか……"
ゾゥゥゥゥゥ…と目の前の丘が動く…動き出した塊の先端に二つ光る紫の宝石の様な瞳が見えた…
"龍……………"
リレラン以外の龍を未だに見たこともないレギル王子は驚愕に目を見開く。それも丘の様に大きな巨龍…………
"如何にも、儂が瘴気の森の古龍、バルーガじゃ…儂はここに沈み瘴気を食ろうて瘴気と共に生きている。"
"なぜ……瘴気と、共に?"
一般市民の家位あるバルーガの顔がグググッとレギル王子とリレランの前に近付いた。
"儂が瘴気を選んだからじゃ…羽虫が塵を選んだようにな…儂が此処で瘴気を喰らう限り、魔物は湧かぬ……"
"魔物が消えた理由は、貴方であったのか……"
"フン……塵の分際で魔物を狩りたかったと見える…………理には我らも逆らえぬのよ…お若いの…逆らいたいのならば、その塵から目玉を抉り出して手元に置けば良い……それが出来ねば逆らわぬことじゃ…"
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………
丘が現れた時と同じように唐突に地響きが仕出す。
"番い合わされるのもまた一興ぞ…お若いの…………おおぅ…寒い………瘴気の外は寒くて敵わん……"
言いたい事はそれだけだと言わんばかりにバルーガは出てきたように瘴気の沼の中にズズズッと潜り、辺りは静けさを取り戻した………
「どうして人の姿に…?」
リレランは今瞳の色を変えてはいない。龍の時と同じ水晶の様に透き通った瞳でレギル王子を見返してくる。
「バルーガは人間の言葉を操れないから。」
バルーガはリレランが言っていた通りの太古の古龍で長く生きてはいるが、時代と共に言葉が変わり行く人間に合わせる事に疲弊していると言う。まあ、これだから太古の化石と言われる様なもの達は外界との関わりが更に希薄になっていくのだが…だから、リレランは人型を取る。バルーガに会話が漏れる心配がないから。
「その、太古の古龍がなぜ私に?」
至極最もな疑問である。龍繋がりで言えば、リレランに用があると言うのならばまだ分かるのだが……?
「さぁ?僕にも分からない…古龍が何処にいるか、何をしているのかは掴めるけど、その意思なんて知らないよ。」
何処となくぶっきらぼうにリレランは答える。強いて言えば面白く無いらしい。ここまでレギル王子を連れてくれば、異形な生物に恐れをなして帰ってくれるとでも踏んでいたのかもしれないが。それも、なんのその……不安げもなくレギル王子にそれらを片付けられてしまっては次の手を考えないといけなくなった。それなのに、瘴気の森の古龍の横槍も入るし…手元にも置きたく無いのに、自分の手の中にある物に手を出されることへの不満を顔に隠さずリレランは貼り付けている。
レギル王子は珍しい事がある物だと、歩きながらリレランを見つめた。今までのリレランならば、まず我関せずを貫き通すと思っていたのに…明らかに古龍の招待を嫌がっているし不服そう……
"お若いの……そこな塵が取られそうで不安かね?"
また、地の底からの様な声がする。…塵、とはレギル王子のことだろうか?
"バルーガ…塵とは誰のことを言っている?"
嫌そうなリレランの声……
"ハッハッハッ!自分の物で無いのに所有欲か?若いのぉ"
"何を……!"
"まぁ、待てお若いの…そのままここまで進まれよ…"
バルーガはレギル王子がいる事なんて眼中にも無い体でリレランに話しかけている。
森に進めば進むほど、木々が枯れ始め、空気は淀み辺りは暗くなっていく…瘴気の中では植物は育たない。一種の毒素の様な物が辺りに立ち込めていることになる。が、レギル王子の身体にはなんら変化はない様だ。苦しみも異常も感じ無い。木が完全に無くなると土がむき出しになっている沼地の様な地が広がって行く…
"そうさな…そこまでじゃ…"
言われた指示に従って、リレランとレギル王子は足を止めた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………………………
地響きと共に目の前に小高い丘が現れる。
「地形が………」
レギル王子が驚きに目を見開いていると目の前の丘から声がする。
"塵には儂が、大地に見えるか?真実を見る目があるというのに宝が腐っとるのぅ"
"バルーガ……"
リレランは本当に嫌そう……
"それの光には覚えがあってな、こちらも面倒だか黙ってもおれないのでな"
"何の用?"
"随分とその塵を庇うでは無いか、お若いの?"
"………"
"フン…あの羽虫め……余計な面倒を残していきおって……"
羽虫とは?今までレギル王子の事は塵と呼んでいたのだから、他の誰かのことを指しているとは分かるのだが、一体誰のことを?
"羽虫とは、マリーのことか?"
若干リレランの目の色が光った様に感じたが……
"ハッハッハッ…面白いことを言う…羽虫を庇うか?若いの。儂にとっては人も精霊も羽虫も一緒じゃ…"
物凄く大雑把に一括りにされている様に思うが……人と精霊は随分と違う様に思うのだが………
"一緒じゃよ…儂にはどうでも良いことだからの…"
"ではなぜ、ここに呼んだ?"
"我らとて理の中で生きている…それも長い間のぅ…お若いの、同じじゃ…ここから離れる事はできんのじゃ……自分を満たす物を見つけたならば尚更の…"
"満たすもの?"
"ほっ…塵が意見するか?その瞳の光実に目障りよのぅ……どれ、抉り出してやろうか……"
ゾゥゥゥゥゥ…と目の前の丘が動く…動き出した塊の先端に二つ光る紫の宝石の様な瞳が見えた…
"龍……………"
リレラン以外の龍を未だに見たこともないレギル王子は驚愕に目を見開く。それも丘の様に大きな巨龍…………
"如何にも、儂が瘴気の森の古龍、バルーガじゃ…儂はここに沈み瘴気を食ろうて瘴気と共に生きている。"
"なぜ……瘴気と、共に?"
一般市民の家位あるバルーガの顔がグググッとレギル王子とリレランの前に近付いた。
"儂が瘴気を選んだからじゃ…羽虫が塵を選んだようにな…儂が此処で瘴気を喰らう限り、魔物は湧かぬ……"
"魔物が消えた理由は、貴方であったのか……"
"フン……塵の分際で魔物を狩りたかったと見える…………理には我らも逆らえぬのよ…お若いの…逆らいたいのならば、その塵から目玉を抉り出して手元に置けば良い……それが出来ねば逆らわぬことじゃ…"
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………
丘が現れた時と同じように唐突に地響きが仕出す。
"番い合わされるのもまた一興ぞ…お若いの…………おおぅ…寒い………瘴気の外は寒くて敵わん……"
言いたい事はそれだけだと言わんばかりにバルーガは出てきたように瘴気の沼の中にズズズッと潜り、辺りは静けさを取り戻した………
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