[完]蝶の精霊と思っていたら自分は龍でした 皆んなとお別れするのは寂し過ぎるのでもう一度殻に閉じこもりますから起こさないでください

小葉石

文字の大きさ
43 / 72

43 地の果ての古龍

しおりを挟む
 レギル王子は目のやり場に困りながら、着ていたマントをリレランに渡す。勿論リレランは龍なのだから裸だろうと関係ないとは思うのだが、レギル王子にとっては十分気になる所のようで…差し出されたマントを渋々ながらリレランは身に纏う…

「どうして人の姿に…?」

 リレランは今瞳の色を変えてはいない。龍の時と同じ水晶の様に透き通った瞳でレギル王子を見返してくる。

「バルーガは人間の言葉を操れないから。」

 バルーガはリレランが言っていた通りの太古の古龍で長く生きてはいるが、時代と共に言葉が変わり行く人間に合わせる事に疲弊していると言う。まあ、これだから太古の化石と言われる様なもの達は外界との関わりが更に希薄になっていくのだが…だから、リレランは人型を取る。バルーガに会話が漏れる心配がないから。

「その、太古の古龍がなぜ私に?」

 至極最もな疑問である。龍繋がりで言えば、リレランに用があると言うのならばまだ分かるのだが……?

「さぁ?僕にも分からない…古龍が何処にいるか、何をしているのかは掴めるけど、その意思なんて知らないよ。」

 何処となくぶっきらぼうにリレランは答える。強いて言えば面白く無いらしい。ここまでレギル王子を連れてくれば、異形な生物に恐れをなして帰ってくれるとでも踏んでいたのかもしれないが。それも、なんのその……不安げもなくレギル王子にそれらを片付けられてしまっては次の手を考えないといけなくなった。それなのに、瘴気の森の古龍の横槍も入るし…手元にも置きたく無いのに、自分の手の中にある物に手を出されることへの不満を顔に隠さずリレランは貼り付けている。

 レギル王子は珍しい事がある物だと、歩きながらリレランを見つめた。今までのリレランならば、まず我関せずを貫き通すと思っていたのに…明らかに古龍の招待を嫌がっているし不服そう……

"お若いの……そこな塵が取られそうで不安かね?"

 また、地の底からの様な声がする。…塵、とはレギル王子のことだろうか?

"バルーガ…塵とは誰のことを言っている?"
 嫌そうなリレランの声……

"ハッハッハッ!自分の物で無いのに所有欲か?若いのぉ"

"何を……!"

"まぁ、待てお若いの…そのままここまで進まれよ…"

 バルーガはレギル王子がいる事なんて眼中にも無い体でリレランに話しかけている。

 森に進めば進むほど、木々が枯れ始め、空気は淀み辺りは暗くなっていく…瘴気の中では植物は育たない。一種の毒素の様な物が辺りに立ち込めていることになる。が、レギル王子の身体にはなんら変化はない様だ。苦しみも異常も感じ無い。木が完全に無くなると土がむき出しになっている沼地の様な地が広がって行く…

"そうさな…そこまでじゃ…"

 言われた指示に従って、リレランとレギル王子は足を止めた。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………………………

 地響きと共に目の前に小高い丘が現れる。

「地形が………」

 レギル王子が驚きに目を見開いていると目の前の丘から声がする。

"塵には儂が、大地に見えるか?真実を見る目があるというのに宝が腐っとるのぅ"

"バルーガ……"

 リレランは本当に嫌そう……

"それの光には覚えがあってな、こちらも面倒だか黙ってもおれないのでな"

"何の用?"

"随分とその塵を庇うでは無いか、お若いの?"

"………"

"フン…あの羽虫め……余計な面倒を残していきおって……"

 羽虫とは?今までレギル王子の事は塵と呼んでいたのだから、他の誰かのことを指しているとは分かるのだが、一体誰のことを?

"羽虫とは、マリーのことか?"

 若干リレランの目の色が光った様に感じたが……

"ハッハッハッ…面白いことを言う…羽虫を庇うか?若いの。儂にとっては人も精霊も羽虫も一緒じゃ…"

 物凄く大雑把に一括りにされている様に思うが……人と精霊は随分と違う様に思うのだが………

"一緒じゃよ…儂にはどうでも良いことだからの…"

"ではなぜ、ここに呼んだ?"

"我らとて理の中で生きている…それも長い間のぅ…お若いの、同じじゃ…ここから離れる事はできんのじゃ……自分を満たす物を見つけたならば尚更の…"

"満たすもの?"

"ほっ…塵が意見するか?その瞳の光実に目障りよのぅ……どれ、抉り出してやろうか……"

 ゾゥゥゥゥゥ…と目の前の丘が動く…動き出した塊の先端に二つ光る紫の宝石の様な瞳が見えた…

"龍……………"

 リレラン以外の龍を未だに見たこともないレギル王子は驚愕に目を見開く。それも丘の様に大きな巨龍…………

"如何にも、儂が瘴気の森の古龍、バルーガじゃ…儂はここに沈み瘴気を食ろうて瘴気と共に生きている。"

"なぜ……瘴気と、共に?"

 一般市民の家位あるバルーガの顔がグググッとレギル王子とリレランの前に近付いた。

"儂が瘴気を選んだからじゃ…羽虫が塵を選んだようにな…儂が此処で瘴気を喰らう限り、魔物は湧かぬ……" 

"魔物が消えた理由は、貴方であったのか……"

"フン……塵の分際で魔物を狩りたかったと見える…………理には我らも逆らえぬのよ…お若いの…逆らいたいのならば、その塵から目玉を抉り出して手元に置けば良い……それが出来ねば逆らわぬことじゃ…"

 ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………

 丘が現れた時と同じように唐突に地響きが仕出す。

"番い合わされるのもまた一興ぞ…お若いの…………おおぅ…寒い………瘴気の外は寒くて敵わん……"

 言いたい事はそれだけだと言わんばかりにバルーガは出てきたように瘴気の沼の中にズズズッと潜り、辺りは静けさを取り戻した………
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結·氷の宰相の寝かしつけ係に任命されました

BL
幼い頃から心に穴が空いたような虚無感があった亮。 その穴を埋めた子を探しながら、寂しさから逃げるようにボイス配信をする日々。 そんなある日、亮は突然異世界に召喚された。 その目的は―――――― 異世界召喚された青年が美貌の宰相の寝かしつけをする話 ※小説家になろうにも掲載中

騎士団長の秘密の部屋に匿われています!?

krm
BL
王子なのに魔力が異端!?式典中にまさかの魔力暴走を起こした第三王子アストル。地下室に幽閉されそうになったその時、騎士団長グレンの秘密の部屋にかくまわれることに!けれどそれは、生活感ゼロ、無表情な騎士とふたりきりの、ちょっと不便な隠れ家生活だった。 なのに、どうしてだろう。不器用なやさしさや、ふいに触れる手の温もりが、やけに心に残ってしまう。 「殿下の笑顔を拝見するのが、私の楽しみですので」 「……そんな顔して言われたら、勘違いしちゃうじゃん……」 少しずつ近づいていく二人と、異端の魔力に隠された真実とは――? お堅い騎士×異端の王子の、秘密のかくれ家ラブコメディ♡

ギャップがあり過ぎるけど異世界だからそんなもんだよな、きっと。

一片澪
BL
※異世界人が全く珍しくないその世界で神殿に保護され、魔力相性の良い相手とお見合いすることになった馨は目の前に現れた男を見て一瞬言葉を失った。 衣服は身に着けているが露出している部分は見るからに固そうな鱗に覆われ、目は爬虫類独特の冷たさをたたえており、太く長い尾に鋭い牙と爪。 これはとんでも無い相手が来た……とちょっと恐れ戦いていたのだが、相手の第一声でその印象はアッサリと覆される。

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

ユキ・シオン

那月
BL
人間の姿をした、人間ではないもの。 成長過程で動物から人間に変わってしまう”擬人化種”の白猫青年と、16歳年上のオッサンとのお話。 出会ったのは猫カフェ。白猫従業員としての青年と客としてやってきたオッサン。 次に再会したのは青年が人間として通う大学。オッサンは保健室の先生だった。 青年が金のためにヤバいことをしていて、あるトラブルが起こる。 そこへ見計らったかのようにオッサンが飛び込んで救出したのをきっかけに2人の距離は縮まり…… ※表紙絵は自作。本編は進むにつれてどんどん動物園と化します(笑)

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

処理中です...