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44 古龍の言葉
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バルーガは不思議な龍だったと思う。訳の分からない言葉をいくつか残してまた大地の中に潜ってしまった。
「バルーガ殿は瘴気と共に生きる、と…?」
「みたいだね…」
もう既に興味なさげなリレラン…
「龍には瘴気は毒ではないのか?」
「レギル?今体調は?」
「私は問題ないが…」
「それと同じ、瘴気ごときでは龍は殺せない。バルーガがなぜこの地を選んだのかって言うのは瘴気を気に入ったからだろう?」
来た道を森の方へ帰りながら、リレランは淡々と話す…
「………バルーガ殿が言っていた事は良く分からないのだが…ん~む……私の瞳はランが知っているマリーアンヌのものなんだろう?」
「……ん、そうだよ……」
「でも、ランはこれを返してもらいたいとは思わないんだな?」
「……………要らない………」
しばしの沈黙の後にランはキッパリと言う。欲しいのはマリーの輝きだった目だけじゃない…マリーの気配にマリーの意思……全てが大切に感じるのに一つだけもぎ取ろうとは思えない。
「…………困ったな…………」
レギル王子はため息を吐きながら空を仰ぐ…
「……なんで?」
「両目位なら安過ぎる対価だしな…」
「レギル……」
「目位で済むはずは無いと思ってここまで来ているから、これをランに返すのでも良いと思ったんだが、ランは要らない、と。」
「受け取らないからね…!」
本気でレギル王子が目玉を抉り出してしまっても困るから、更にキッパリとリレランは拒否する。
「バルーガ殿は理には逆らわないほうがいいと言われていた。」
「…年寄りの戯事だろう?」
「ラン…ランの内にある理とは何だろうか?」
静かに語るレギル王子の声がリレランの上に擦り注ぐ。
「………」
レギル王子の言葉にリレランは答えない。
「私の内の理りとは、何を指すのだろうか?」
レギル王子はリレランよりもずっと若くてリレランからしたらまだまだ卵の域。こんなに幼くして人間は世の理について考えなければならないなんて。リレランは人間が不憫に見えてならない。
リレランにはバルーガの言いたい事がわかった…自分の魂の中の声に逆らうな、と言う事だろう?なぜ、バルーガが瘴気を選んだのかなんて知りもしないが、そうであったから魔物は湧かずに済んでいる。過去の時代にどんな事があって今に至るのか龍の中ではまだまだ若いリレランにとっては知ることなど出来ない物だが。
もし、リレランがレギル王子を取ったら?マリーの輝きを抉り取るのも、人に渡す事も許せないとしたらリレランがレギル王子をその輝きごと受け取る事になる。そうしたら………いや、考える間なくレギル王子は人間を求めるだろう?
そうしたら、僕は……レギルを後ろからただ見送る為に見つめ続ける事になる。マリーが逝ってしまった時のように……それが嫌だから、離れているのに…バルーガのお節介によって自分の心に目を逸らすな、と釘を刺されてしまった。
「ラン?」
厳しい顔をして黙り込んでしまったリレランを心配してレギル王子が顔を覗き込んでくる。
パチッと合った視線の中にマリーの輝き。そしてレギル王子の心配が揺れている。自分に向けられて来たこの瞳を離したくないとリレランは感じているのをリレランは自覚していた。
だからこそ離れるんだ。
「レギル、君の国へ帰るよ。」
「は?何を?」
リレランを探す為に全てを捨ててまで国から出てきたレギルに、リレランは一緒に帰ろうと持ちかけた。
「僕が帰れって言ったって、君帰らないだろう?」
呆れた表情のリレランをレギル王子はキョトンとした表情で見つめていた。
「あぁ……だが、我が国にランに出せる対価があるだろうか?」
金銀財宝ならば、無い。広大な作地はあるが、干魃を脱したばかりで収穫などまだ先の先……リレランは何を……?
「……ランは、治権が欲しいのだろうか?それとも………」
レギル王子が言い出したのはリレランが考えつきもしない事ばかりで、少しだけ表情を曇らせてから話し出したレギル王子を、アングリと口を開けてリレランはマジマジと見返してしまう。
「…もしや、大勢の生贄を必要としているのだろうか?」
だから今までレギル王子にリレランが自分の求める物を言わなかったのだろうか?
「うわぁ……レギル…それのどれも要らない……………」
本当に嫌そうなリレランの顔………
「では、なぜ我が国に?1番カシュクールから遠い国に居たのに………?」
「確かに、レギルの疑問も分かるけど、僕には僕の都合があるんだ。だから、レギル帰るよ?」
言うが早いか、レギル王子の目の前で一瞬にして人間の姿から真珠色の龍の姿へとリレランは変化する。目の前で起こった事に目を瞬かせて見つめていたレギル王子に僕は先に行く、と1番最初にあった時と同じ様に急上昇したかと思うと、あっという間に見えなくなってしまった………
「……………」
またもや置き去りのレギル王子はしばし茫然としていたものの、クスクスと笑い出す。
「また、逃げられたか……ラン…そのまま帰ったら、国中大騒ぎになるよ……」
本当に国に龍が出現したら酷く困る内容だろうに、レギル王子の表情は深刻では無い。それよりも、どこか安心した様な、期待に満ちたような柔らかい表情でリレランが、去って行った上空を眺めていた。
「バルーガ殿は瘴気と共に生きる、と…?」
「みたいだね…」
もう既に興味なさげなリレラン…
「龍には瘴気は毒ではないのか?」
「レギル?今体調は?」
「私は問題ないが…」
「それと同じ、瘴気ごときでは龍は殺せない。バルーガがなぜこの地を選んだのかって言うのは瘴気を気に入ったからだろう?」
来た道を森の方へ帰りながら、リレランは淡々と話す…
「………バルーガ殿が言っていた事は良く分からないのだが…ん~む……私の瞳はランが知っているマリーアンヌのものなんだろう?」
「……ん、そうだよ……」
「でも、ランはこれを返してもらいたいとは思わないんだな?」
「……………要らない………」
しばしの沈黙の後にランはキッパリと言う。欲しいのはマリーの輝きだった目だけじゃない…マリーの気配にマリーの意思……全てが大切に感じるのに一つだけもぎ取ろうとは思えない。
「…………困ったな…………」
レギル王子はため息を吐きながら空を仰ぐ…
「……なんで?」
「両目位なら安過ぎる対価だしな…」
「レギル……」
「目位で済むはずは無いと思ってここまで来ているから、これをランに返すのでも良いと思ったんだが、ランは要らない、と。」
「受け取らないからね…!」
本気でレギル王子が目玉を抉り出してしまっても困るから、更にキッパリとリレランは拒否する。
「バルーガ殿は理には逆らわないほうがいいと言われていた。」
「…年寄りの戯事だろう?」
「ラン…ランの内にある理とは何だろうか?」
静かに語るレギル王子の声がリレランの上に擦り注ぐ。
「………」
レギル王子の言葉にリレランは答えない。
「私の内の理りとは、何を指すのだろうか?」
レギル王子はリレランよりもずっと若くてリレランからしたらまだまだ卵の域。こんなに幼くして人間は世の理について考えなければならないなんて。リレランは人間が不憫に見えてならない。
リレランにはバルーガの言いたい事がわかった…自分の魂の中の声に逆らうな、と言う事だろう?なぜ、バルーガが瘴気を選んだのかなんて知りもしないが、そうであったから魔物は湧かずに済んでいる。過去の時代にどんな事があって今に至るのか龍の中ではまだまだ若いリレランにとっては知ることなど出来ない物だが。
もし、リレランがレギル王子を取ったら?マリーの輝きを抉り取るのも、人に渡す事も許せないとしたらリレランがレギル王子をその輝きごと受け取る事になる。そうしたら………いや、考える間なくレギル王子は人間を求めるだろう?
そうしたら、僕は……レギルを後ろからただ見送る為に見つめ続ける事になる。マリーが逝ってしまった時のように……それが嫌だから、離れているのに…バルーガのお節介によって自分の心に目を逸らすな、と釘を刺されてしまった。
「ラン?」
厳しい顔をして黙り込んでしまったリレランを心配してレギル王子が顔を覗き込んでくる。
パチッと合った視線の中にマリーの輝き。そしてレギル王子の心配が揺れている。自分に向けられて来たこの瞳を離したくないとリレランは感じているのをリレランは自覚していた。
だからこそ離れるんだ。
「レギル、君の国へ帰るよ。」
「は?何を?」
リレランを探す為に全てを捨ててまで国から出てきたレギルに、リレランは一緒に帰ろうと持ちかけた。
「僕が帰れって言ったって、君帰らないだろう?」
呆れた表情のリレランをレギル王子はキョトンとした表情で見つめていた。
「あぁ……だが、我が国にランに出せる対価があるだろうか?」
金銀財宝ならば、無い。広大な作地はあるが、干魃を脱したばかりで収穫などまだ先の先……リレランは何を……?
「……ランは、治権が欲しいのだろうか?それとも………」
レギル王子が言い出したのはリレランが考えつきもしない事ばかりで、少しだけ表情を曇らせてから話し出したレギル王子を、アングリと口を開けてリレランはマジマジと見返してしまう。
「…もしや、大勢の生贄を必要としているのだろうか?」
だから今までレギル王子にリレランが自分の求める物を言わなかったのだろうか?
「うわぁ……レギル…それのどれも要らない……………」
本当に嫌そうなリレランの顔………
「では、なぜ我が国に?1番カシュクールから遠い国に居たのに………?」
「確かに、レギルの疑問も分かるけど、僕には僕の都合があるんだ。だから、レギル帰るよ?」
言うが早いか、レギル王子の目の前で一瞬にして人間の姿から真珠色の龍の姿へとリレランは変化する。目の前で起こった事に目を瞬かせて見つめていたレギル王子に僕は先に行く、と1番最初にあった時と同じ様に急上昇したかと思うと、あっという間に見えなくなってしまった………
「……………」
またもや置き去りのレギル王子はしばし茫然としていたものの、クスクスと笑い出す。
「また、逃げられたか……ラン…そのまま帰ったら、国中大騒ぎになるよ……」
本当に国に龍が出現したら酷く困る内容だろうに、レギル王子の表情は深刻では無い。それよりも、どこか安心した様な、期待に満ちたような柔らかい表情でリレランが、去って行った上空を眺めていた。
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