[完]蝶の精霊と思っていたら自分は龍でした 皆んなとお別れするのは寂し過ぎるのでもう一度殻に閉じこもりますから起こさないでください

小葉石

文字の大きさ
44 / 72

44 古龍の言葉

しおりを挟む
 バルーガは不思議な龍だったと思う。訳の分からない言葉をいくつか残してまた大地の中に潜ってしまった。

「バルーガ殿は瘴気と共に生きる、と…?」

「みたいだね…」

 もう既に興味なさげなリレラン…

「龍には瘴気は毒ではないのか?」

「レギル?今体調は?」

「私は問題ないが…」

「それと同じ、瘴気ごときではは殺せない。バルーガがなぜこの地を選んだのかって言うのは瘴気を気に入ったからだろう?」

 来た道を森の方へ帰りながら、リレランは淡々と話す…

「………バルーガ殿が言っていた事は良く分からないのだが…ん~む……私の瞳はランが知っているマリーアンヌのものなんだろう?」

「……ん、そうだよ……」

「でも、ランはこれを返してもらいたいとは思わないんだな?」

「……………要らない………」

 しばしの沈黙の後にランはキッパリと言う。欲しいのはマリーの輝きだった目だけじゃない…マリーの気配にマリーの意思……全てが大切に感じるのに一つだけもぎ取ろうとは思えない。

「…………困ったな…………」

 レギル王子はため息を吐きながら空を仰ぐ…

「……なんで?」

「両目位なら安過ぎる対価だしな…」

「レギル……」

「目位で済むはずは無いと思ってここまで来ているから、これをランに返すのでも良いと思ったんだが、ランは要らない、と。」

「受け取らないからね…!」

 本気でレギル王子が目玉を抉り出してしまっても困るから、更にキッパリとリレランは拒否する。

「バルーガ殿は理には逆らわないほうがいいと言われていた。」

「…年寄りの戯事だろう?」

「ラン…ランの内にある理とは何だろうか?」

 静かに語るレギル王子の声がリレランの上に擦り注ぐ。

「………」

 レギル王子の言葉にリレランは答えない。

「私の内の理りとは、何を指すのだろうか?」

 レギル王子はリレランよりもずっと若くてリレランからしたらまだまだ卵の域。こんなに幼くして人間は世の理について考えなければならないなんて。リレランは人間が不憫に見えてならない。

 リレランにはバルーガの言いたい事がわかった…自分の魂の中の声に逆らうな、と言う事だろう?なぜ、バルーガが瘴気を選んだのかなんて知りもしないが、そうであったから魔物は湧かずに済んでいる。過去の時代にどんな事があって今に至るのか龍の中ではまだまだ若いリレランにとっては知ることなど出来ない物だが。

 もし、リレランがレギル王子を取ったら?マリーの輝きを抉り取るのも、人に渡す事も許せないとしたらリレランがレギル王子をその輝きごと受け取る事になる。そうしたら………いや、考える間なくレギル王子は人間を求めるだろう?

 そうしたら、僕は……レギルを後ろからただ見送る為に見つめ続ける事になる。マリーが逝ってしまった時のように……それが嫌だから、離れているのに…バルーガのお節介によって自分の心に目を逸らすな、と釘を刺されてしまった。

「ラン?」

 厳しい顔をして黙り込んでしまったリレランを心配してレギル王子が顔を覗き込んでくる。

 パチッと合った視線の中にマリーの輝き。そしてレギル王子の心配が揺れている。自分に向けられて来たこの瞳を離したくないとリレランは感じているのをリレランは自覚していた。

 だからこそ離れるんだ。

「レギル、君の国へ帰るよ。」

「は?何を?」

 リレランを探す為に全てを捨ててまで国から出てきたレギルに、リレランは一緒に帰ろうと持ちかけた。

「僕が帰れって言ったって、君帰らないだろう?」

 呆れた表情のリレランをレギル王子はキョトンとした表情で見つめていた。

「あぁ……だが、我が国にランに出せる対価があるだろうか?」

 金銀財宝ならば、無い。広大な作地はあるが、干魃を脱したばかりで収穫などまだ先の先……リレランは何を……?

「……ランは、治権が欲しいのだろうか?それとも………」

 レギル王子が言い出したのはリレランが考えつきもしない事ばかりで、少しだけ表情を曇らせてから話し出したレギル王子を、アングリと口を開けてリレランはマジマジと見返してしまう。

「…もしや、大勢の生贄を必要としているのだろうか?」

 だから今までレギル王子にリレランが自分の求める物を言わなかったのだろうか?

「うわぁ……レギル…それのどれも要らない……………」

 本当に嫌そうなリレランの顔………

「では、なぜ我が国に?1番カシュクールから遠い国に居たのに………?」  

「確かに、レギルの疑問も分かるけど、僕には僕の都合があるんだ。だから、レギル帰るよ?」

 言うが早いか、レギル王子の目の前で一瞬にして人間の姿から真珠色の龍の姿へとリレランは変化する。目の前で起こった事に目を瞬かせて見つめていたレギル王子に僕は先に行く、と1番最初にあった時と同じ様に急上昇したかと思うと、あっという間に見えなくなってしまった………

「……………」

 またもや置き去りのレギル王子はしばし茫然としていたものの、クスクスと笑い出す。

「また、逃げられたか……ラン…そのまま帰ったら、国中大騒ぎになるよ……」

 本当に国に龍が出現したら酷く困る内容だろうに、レギル王子の表情は深刻では無い。それよりも、どこか安心した様な、期待に満ちたような柔らかい表情でリレランが、去って行った上空を眺めていた。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。 これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。 無自覚両片想いの勇者×親友。 読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

処理中です...