[完]蝶の精霊と思っていたら自分は龍でした 皆んなとお別れするのは寂し過ぎるのでもう一度殻に閉じこもりますから起こさないでください

小葉石

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47 ここにいれば良い

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「ですから、今は私の伴侶を選ぶ時ではありません。先ず、我らは頂いたものに代金を払わなければならないのですから。」

「何故…レギルがやるのかね?」

 静かに聞いていた国王がレギル王子に声をかける。

「私が龍を求め、迷いの森で卵であったランを見つけました。幼かったであろう龍を無理やりに起こし、引きずり出したのは私ですから。この役は私以外いないと思っております。」

「成る程……皆!只今のレギルの言葉を聞いただろう?何か意見がある者は述べよ!」

 しんと静まり返る謁見の間……やれやれと最早リレランは呆れ顔を顕著に表している。

「皇太子レギルの意見に私は従います。」

 静かな、しかし凛とした王妃の声が響き渡った。

「他の者はどうか?」

 王妃の意見後、反対の声は上がる事なく全員が更なる平伏で肯定の意思を伝えるのみであった。

「我らが名を呼ぶにも恐れ多い方よ。この様に我が国の民も貴方様に対価を支払う所存…どうか、遠慮なく申し出て欲しい…そこな王子は命を手放す覚悟の上で国を出ました故、遠慮は無用と願いたい………」



 王との謁見後、リレランは信じられない思いでレギル王子を見つめている。当分ここに滞在されてはどうか、との国王の勧めで今リレランはレギル王子と共に部屋にいる。

「信じられない……親って子供を守る者じゃなかったっけ?」

 なのに国王はレギル王子が死んでも良いと言ってるも同じ……

「人間の親って愛情が希薄なの?」

 リレランとて親の事は知らないが、蝶達が運んでくれた記憶の中には子供の為に命を張る親の姿が多く映し出されていて…子供は大事にされるべき存在なのだと知ったものだ。

「はははっランは父と母が冷酷に映ったのか?」 

 レギル王子は楽しそうに笑い出す。

「違うの?」

「違う違う!あれで堅苦しい立場の人達だからな…もっと子煩悩で、親としても十分愛してもらったと思うよ?ランはそんな子供の命を差し出すに値する事をしてくれたんだ。」

 だから、それだからこそ、ちゃんと支払いたいのだ。レギル王子の目は真剣。

「今すぐではなくても良い。ん~そうだな、私が生きている間であったら、それまでの間には願いを言ってもらえれば良いのだが…どうだ?」

「ふ~~ん……レギル王子が生きている間にねぇ……」

 何やら含みがあるリレランの声にレギル王子は首を傾げた。

「不満か?ラン…もしや、龍にとっては何か失礼な事を我らはしていたのか?何ぶん、資料がないので……何をしてもてなせばいいの皆んな分かっていないのかも………」
  
「いいや、別に悪くは無い。」

「そうか……」

 心底ホッとした様なレギル王子の瞳はやはり虹色で今は暖かなレギル王子本来の人の良さも滲み出している。

 不服がある訳はない………僕はこの瞳が好きなんだから………

「でもやっぱり人間って愚かだ…こんなに簡単に宝を手放そうとするんだから…僕が悪い龍だったら、今頃レギルはどんな目に合わされているかも知れなかったよ?」

「ラン………で?君は悪い龍か?君が悪い龍だと言うのなら今頃この地上から国が一つ綺麗に消えていてもおかしくは無かった…だから、本当に感謝してるんだ。」

「もう、分かったって!レギル聞き飽きたよ!」

 ボブッとリレランの背後にあったベッドへとダイブしていくリレラン…

「うわ!柔らかい…なんだ…これ……」

 リレランの体重を受けて優しくベッドのスプリングが揺れている。掛け物の羽毛の柔らかさが気に入ったのか手足を何度も投げ出してその感触を楽しんでいる。

「ベッドだが?」

「これが……人間の寝床?」

「………聞くがラン、今までどこで寝ていた?」

「森、だね…」

「………その、姿で?」
 
 レギル王子は、良く無事だったものだ、と言う思いに駆られたが、リレランは龍で、最強の種族だった……何かが来ても向こうが逃げる。

「まさか!龍の姿でだよ…これは人間の居住区に行く時だけだから。」

「誰にも見られなかったのか?」

 レギル王子もリレランの隣にお行儀悪くもゴロリと横になる。

「レギルは………古龍を探せる?」

「古龍?バルーガ殿の類か?」

「そう……」
 
 ベッドの寝具の柔らかさが余程気に入ったのだろうリレランの表情がいつもに増して柔らかい…

「いや……私達には到底、探す術もないが……」

 リレランのそんな柔らかい表情を直視してしまってレギル王子は瞬間的に目を逸らした。

…………うれしい……嬉しい……うれしい………

 なんだ?これは?リレランの表情一つでレギル王子の心が躍る。

「そうだろう?レギル…人間には龍を探すことなんて不可能に近いんだ。だから、この国のあの部屋にいた人間以外僕がいる事なんて誰も知らないよ。」

「そう……か……」

 もっと見たい……リレランの喜ぶ顔を………

「ラン……どうすれば、其方を喜ばせる事が出来るかな……?」

 何が望みかと問うても望みを言わないリレランに何とかして喜んでもらおうとするレギル王子。もう一度先程のような顔が見れるなら、命を投げ打っても価値があるとレギル王子は真剣に思っているのだが、リレランにはまだまだ届いていないらしい…
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