49 / 72
49 リレランの思い 2
しおりを挟む
"何をするつもりかな?"
人間ならば立って居られないどころか最早、既に飛ばされていてもおかしくは無いほどの強風……
"出来れば、貴方がレギルから離れない様に…頼まれているのよ……"
"契約者の名前も挙げられない様な精霊が僕に何かできるとでも?"
空中で静止している様なリレランはまるで吹き荒ぶ強風は全くの幻影かと思われる位にシェルツェインの風にもピクリともしない。
"何かをしようと言うのではないわ…貴方もわかっているのでしょう?"
"…………"
シェルツェインの言葉にリレランは答えない…ジッと何かを考えている様だ。
"シェル…!誰からの頼みなのだ?其方がこんな事をするなんて…!"
"レギル、そこから動かないでね?リレランは貴方を飛ばさないから大丈夫よ………ごめんなさい、誰からの頼みかは、言いたくないのよ…"
音もなく、レギル王子の前に現れたシェルツェインの表情がどこか少し困った様に歪められている。そんなシェルツェインの前で、レギル王子は強風に顔をしかめてはいたが、どれだけ風が当たってきてもシェルツェインが言う様に吹き飛ばされることはなかった。風が吹いている間中、レギル王子の身体の上には柔らかく包み込む様な力が加えられていて優しく押さえられていたからだ。
"リレラン……貴方が離れれば、レギルは直ぐに飛ばされるわ……"
精霊は嘘を言わない。シェルツェインの言葉は嘘ではなく、本当にそうするとリレランに忠告をしている。
"……僕を脅すとは、凄い度胸の精霊だね…シェルツェイン?"
リレランはスゥッと瞳を細めてシェルツェインを見つめる。
"脅す?まさか…貴方に私の力が通じるはずなんて無いでしょう?一言命令するだけで私は消え失せる事もできる……"
まさか!リレランがシェルツェインを消す?レギル王子は上にいるリレランを見上げる。
"ラン…何をしようと言うのだ?シェルももうやめてくれ!"
二人を止めたいのだが、どうしても身体が動かない……
"リレラン…貴方はあの子の希望だった…それは、私達の希望ともなった…だから…貴方はここを離れては駄目なのよ…"
離れる…?……リレランが?
また、私から離れようと…?
ジッとリレランが見つめているのは目の前のシェルツェイン…そのリレランを見つめているのは床に這いつくばったレギル王子だ。ジッと見つめていてもリレランの龍の表情は読み取れない…
"ラン……?ここから、出ていきたいのか…?"
すっかりと抵抗するのを諦めたレギル王子はそのまま仰向けになり、リレランをしっかりと見上げる。
"……この地は嫌いでは無い…"
嫌いじゃ無い…だから、困るんだ。
"ふふ…では逃げたい理由は、私か?ラン……"
"………"
"だったら、直ぐにでもこの命を取ればいいのに…?そうしたらランは自由だろう?"
"……君の命は要らないと何回言えば済むんだ?レギル……"
"じゃあシェル、風を止めて……逃げてもいいよ……ラン……私が、また追うから!"
ピクッとリレランの羽が震えた様に思った…
"何度でも、逃げればいい…何処へでも……私の顔が見たく無いのなら、私を食べればそれで終いだ…違うか?ラン……そうしなければ私はお前を追う……どこまでも、どこまでも……"
リレランを見つめているレギル王子の目線は真剣だ。龍リレランを卵の外から呼び起こした時そのもので……マリーの輝きの虹色の瞳がレギル王子の意志の強さで今キラキラと光っている。
どこまでも、追ってくる……そうだろう…きっとレギル王子は言った通りにする。そしてその方法も力も持っているし、何故だが周りの精霊が手を貸している。リレランが精霊を止めたところで、いつかその歪みがどこかで溢れ出して余計な事態を引き起こす、嫌な結果にしかならないのが良く分かるから尚の事それを選択できない…
スッと真上に伸ばされたレギル王子の腕は強風で着ている衣類が引き裂かれそうになっているのに、手を引っ込めることさえしない…
"どうしろって、言うんだ………"
龍リレランが、初めて苦悶の表情を見せたように思う。悩み、苦しんで、答えを一生懸命に考えている…
"リレラン……貴方の心のままに、求める者を求めればいいわ………"
"僕の…心…ね…人間には重過ぎると思うよ?"
"今更でしょう?リレラン…それに、レギルは一人じゃ無い…生まれた時から、彼は一人じゃ無かったのよ…"
"………なる程?君もマリーの友人か………"
精霊語を操るリレランの言葉に覇気がない…半ば、諦めの色さえ見えた。
"ラン…君の心が重いかなんて、君が決めることではない。それは、私が決める事だろう?私は、命を投げ捨てる覚悟さえしていたんだ。これ以上の事なんて人間の身には無いだろう?"
どうあっても、シェルツェインの風と、リレランの護りの所為で起き上がることができないレギル王子は、今も尚真っ直ぐにリレランに向かって両手を上げていた。
人間ならば立って居られないどころか最早、既に飛ばされていてもおかしくは無いほどの強風……
"出来れば、貴方がレギルから離れない様に…頼まれているのよ……"
"契約者の名前も挙げられない様な精霊が僕に何かできるとでも?"
空中で静止している様なリレランはまるで吹き荒ぶ強風は全くの幻影かと思われる位にシェルツェインの風にもピクリともしない。
"何かをしようと言うのではないわ…貴方もわかっているのでしょう?"
"…………"
シェルツェインの言葉にリレランは答えない…ジッと何かを考えている様だ。
"シェル…!誰からの頼みなのだ?其方がこんな事をするなんて…!"
"レギル、そこから動かないでね?リレランは貴方を飛ばさないから大丈夫よ………ごめんなさい、誰からの頼みかは、言いたくないのよ…"
音もなく、レギル王子の前に現れたシェルツェインの表情がどこか少し困った様に歪められている。そんなシェルツェインの前で、レギル王子は強風に顔をしかめてはいたが、どれだけ風が当たってきてもシェルツェインが言う様に吹き飛ばされることはなかった。風が吹いている間中、レギル王子の身体の上には柔らかく包み込む様な力が加えられていて優しく押さえられていたからだ。
"リレラン……貴方が離れれば、レギルは直ぐに飛ばされるわ……"
精霊は嘘を言わない。シェルツェインの言葉は嘘ではなく、本当にそうするとリレランに忠告をしている。
"……僕を脅すとは、凄い度胸の精霊だね…シェルツェイン?"
リレランはスゥッと瞳を細めてシェルツェインを見つめる。
"脅す?まさか…貴方に私の力が通じるはずなんて無いでしょう?一言命令するだけで私は消え失せる事もできる……"
まさか!リレランがシェルツェインを消す?レギル王子は上にいるリレランを見上げる。
"ラン…何をしようと言うのだ?シェルももうやめてくれ!"
二人を止めたいのだが、どうしても身体が動かない……
"リレラン…貴方はあの子の希望だった…それは、私達の希望ともなった…だから…貴方はここを離れては駄目なのよ…"
離れる…?……リレランが?
また、私から離れようと…?
ジッとリレランが見つめているのは目の前のシェルツェイン…そのリレランを見つめているのは床に這いつくばったレギル王子だ。ジッと見つめていてもリレランの龍の表情は読み取れない…
"ラン……?ここから、出ていきたいのか…?"
すっかりと抵抗するのを諦めたレギル王子はそのまま仰向けになり、リレランをしっかりと見上げる。
"……この地は嫌いでは無い…"
嫌いじゃ無い…だから、困るんだ。
"ふふ…では逃げたい理由は、私か?ラン……"
"………"
"だったら、直ぐにでもこの命を取ればいいのに…?そうしたらランは自由だろう?"
"……君の命は要らないと何回言えば済むんだ?レギル……"
"じゃあシェル、風を止めて……逃げてもいいよ……ラン……私が、また追うから!"
ピクッとリレランの羽が震えた様に思った…
"何度でも、逃げればいい…何処へでも……私の顔が見たく無いのなら、私を食べればそれで終いだ…違うか?ラン……そうしなければ私はお前を追う……どこまでも、どこまでも……"
リレランを見つめているレギル王子の目線は真剣だ。龍リレランを卵の外から呼び起こした時そのもので……マリーの輝きの虹色の瞳がレギル王子の意志の強さで今キラキラと光っている。
どこまでも、追ってくる……そうだろう…きっとレギル王子は言った通りにする。そしてその方法も力も持っているし、何故だが周りの精霊が手を貸している。リレランが精霊を止めたところで、いつかその歪みがどこかで溢れ出して余計な事態を引き起こす、嫌な結果にしかならないのが良く分かるから尚の事それを選択できない…
スッと真上に伸ばされたレギル王子の腕は強風で着ている衣類が引き裂かれそうになっているのに、手を引っ込めることさえしない…
"どうしろって、言うんだ………"
龍リレランが、初めて苦悶の表情を見せたように思う。悩み、苦しんで、答えを一生懸命に考えている…
"リレラン……貴方の心のままに、求める者を求めればいいわ………"
"僕の…心…ね…人間には重過ぎると思うよ?"
"今更でしょう?リレラン…それに、レギルは一人じゃ無い…生まれた時から、彼は一人じゃ無かったのよ…"
"………なる程?君もマリーの友人か………"
精霊語を操るリレランの言葉に覇気がない…半ば、諦めの色さえ見えた。
"ラン…君の心が重いかなんて、君が決めることではない。それは、私が決める事だろう?私は、命を投げ捨てる覚悟さえしていたんだ。これ以上の事なんて人間の身には無いだろう?"
どうあっても、シェルツェインの風と、リレランの護りの所為で起き上がることができないレギル王子は、今も尚真っ直ぐにリレランに向かって両手を上げていた。
0
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由
スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。
これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。
無自覚両片想いの勇者×親友。
読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。
聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています
八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。
そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる