[完]蝶の精霊と思っていたら自分は龍でした 皆んなとお別れするのは寂し過ぎるのでもう一度殻に閉じこもりますから起こさないでください

小葉石

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49 リレランの思い 2

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"何をするつもりかな?"

 人間ならば立って居られないどころか最早、既に飛ばされていてもおかしくは無いほどの強風……

"出来れば、貴方がレギルから離れない様に…頼まれているのよ……"

"契約者の名前も挙げられない様な精霊が僕に何かできるとでも?"

 空中で静止している様なリレランはまるで吹き荒ぶ強風は全くの幻影かと思われる位にシェルツェインの風にもピクリともしない。

"何かをしようと言うのではないわ…貴方もわかっているのでしょう?"

"…………"

 シェルツェインの言葉にリレランは答えない…ジッと何かを考えている様だ。

"シェル…!誰からの頼みなのだ?其方がこんな事をするなんて…!"

"レギル、そこから動かないでね?リレランは貴方を大丈夫よ………ごめんなさい、誰からのかは、言いたくないのよ…"

 音もなく、レギル王子の前に現れたシェルツェインの表情がどこか少し困った様に歪められている。そんなシェルツェインの前で、レギル王子は強風に顔をしかめてはいたが、どれだけ風が当たってきてもシェルツェインが言う様に吹き飛ばされることはなかった。風が吹いている間中、レギル王子の身体の上には柔らかく包み込む様な力が加えられていて優しく押さえられていたからだ。

"リレラン……貴方が離れれば、レギルは直ぐに飛ばされるわ……"

 精霊は嘘を言わない。シェルツェインの言葉は嘘ではなく、本当にそうするとリレランに忠告をしている。

"……僕を脅すとは、凄い度胸の精霊だね…シェルツェイン?"

 リレランはスゥッと瞳を細めてシェルツェインを見つめる。

"脅す?まさか…貴方に私の力が通じるはずなんて無いでしょう?一言命令するだけで私は消え失せる事もできる……"

 まさか!リレランがシェルツェインを消す?レギル王子は上にいるリレランを見上げる。

"ラン…何をしようと言うのだ?シェルももうやめてくれ!"

 二人を止めたいのだが、どうしても身体が動かない……

"リレラン…貴方はあの子の希望だった…それは、の希望ともなった…だから…貴方はここを離れては駄目なのよ…"

 離れる…?……リレランが?
 また、私から離れようと…?
 
 ジッとリレランが見つめているのは目の前のシェルツェイン…そのリレランを見つめているのは床に這いつくばったレギル王子だ。ジッと見つめていてもリレランの龍の表情は読み取れない…

"ラン……?ここから、出ていきたいのか…?"

 すっかりと抵抗するのを諦めたレギル王子はそのまま仰向けになり、リレランをしっかりと見上げる。

"……この地は嫌いでは無い…"

 嫌いじゃ無い…だから、困るんだ。

"ふふ…では理由は、私か?ラン……"

"………"

"だったら、直ぐにでもこの命を取ればいいのに…?そうしたらランは自由だろう?"
  
"……君の命は要らないと何回言えば済むんだ?レギル……"

"じゃあシェル、風を止めて……逃げてもいいよ……ラン……私が、また追うから!"

 ピクッとリレランの羽が震えた様に思った…

"何度でも、逃げればいい…何処へでも……私の顔が見たく無いのなら、私を食べればそれで終いだ…違うか?ラン……そうしなければ私はお前を追う……どこまでも、どこまでも……"

 リレランを見つめているレギル王子の目線は真剣だ。龍リレランを卵の外から呼び起こした時そのもので……マリーの輝きの虹色の瞳がレギル王子の意志の強さで今キラキラと光っている。

 どこまでも、追ってくる……そうだろう…きっとレギル王子は言った通りにする。そしてその方法も力も持っているし、何故だが周りの精霊が手を貸している。リレランが精霊を止めたところで、いつかその歪みがどこかで溢れ出して余計な事態を引き起こす、嫌な結果にしかならないのが良く分かるから尚の事それを選択できない…

 スッと真上に伸ばされたレギル王子の腕は強風で着ている衣類が引き裂かれそうになっているのに、手を引っ込めることさえしない…

"どうしろって、言うんだ………"

 龍リレランが、初めて苦悶の表情を見せたように思う。悩み、苦しんで、答えを一生懸命に考えている…

"リレラン……貴方の心のままに、求める者を求めればいいわ………"

"僕の…心…ね…人間には重過ぎると思うよ?"

"今更でしょう?リレラン…それに、レギルは一人じゃ無い…生まれた時から、彼は一人じゃ無かったのよ…"

"………なる程?君もマリーの友人か………"

 精霊語を操るリレランの言葉に覇気がない…半ば、諦めの色さえ見えた。

"ラン…君の心が重いかなんて、君が決めることではない。それは、私が決める事だろう?私は、命を投げ捨てる覚悟さえしていたんだ。これ以上の事なんて人間の身には無いだろう?"

 どうあっても、シェルツェインの風と、リレランの護りの所為で起き上がることができないレギル王子は、今も尚真っ直ぐにリレランに向かって両手を上げていた。







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