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50 告白

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"………分かった……………"

 短くリレランは答えると、フッと人間の姿に戻ってフワリとレギル王子の胸の上に降りてくる。

"シェルツェイン…降参………もう逃げないから、風を止めて…レギルが飛ぶ……"

 少し目を見開いたシェルツェインが素直に風を止めた。

"…よ?リレラン…貴方の心に偽らないでね?"

 それだけ言い終わるとシェルツェインの周囲に風が巻き起こる。

"シェル…?"

 やっと解放されたレギル王子はゆっくりとリレランに手を添えつつシェルツェインの方に視線を向ける。

"ギルダインに呼ばれたわ…説明を求められてるわね。行くわ。"

 散々好き勝手に風を呼んでいた影響は下にある城にまで及んでいた様だ。シェルツェインはそれだけ言い置くとフッと消えた…







「………来たかい?」

 カシュクール王城王の執務室に音もなく静かに小さな竜巻が湧き上がった。

"ええ、来たわ。ギルダイン…"

"上で何があった?シェル?"

 重厚な執務机に腰掛けたまま国王ギルダインは上目遣いでシェルツェインを見つめた。

"大した事じゃ無いわよ?ウジウジしていた弱虫に発破をかけただけよ?"

 このシェルツェインの発言に国王ギルダインは目を見開いて驚いている。

"君が、そんな陰口を叩くとはね?なんだか新鮮だ…"

"長い…間待っていたのだもの…龍が産まれるのを……約束もあったし…"

"君の友達とのかい?"

"そうよ?大切な友達……叶えられそうでよかったわ………ギルダイン…貴方の息子……もらう事になるけれど?"

 何となく城内が騒がしいのは、シェルツェインが起こした風の影響だろうか?騒がしいついでとばかりに、シェルツェインは特大の宣言を落としているが。

"……何かあったとしても馬房が2~3飛ぶ位だろう…問題ない…この城はそんなにやわじゃないよ。さて、レギルか………"

 やれやれ、と言わんばかりに国王ギルダインは立ち上がって窓から外を見つめる。

望んでいた事だろうか?"

"そうね…そう、望んでいるわ……"

"ならば、我らは何も言えまい…後は当人の問題だ。人の世はいくらでも何とでもなるからね。"

 そう告げた国王ギルダインの瞳は、どこと無く寂しげな色を湛えていた…







「ラン…?」

 シェルツェインからの風は止み、いつもの風の塔の様相の中、未だにレギル王子は塔の床に寝転がったまま起き上がれないでいる。レギル王子の腹の上にはリレランが、降りてきたままの状態でジッとレギル王子を見つめたままでいるからだ。

「………」

 水晶の様な瞳は何を映すのか、レギル王子の声にもリレランは返事すらしない……

「…ラン……?」
  
 レギル王子は手を伸ばしてそっとリレランの頬に触れる…きっと何か言いたいことがあるに違いないんだろうが一向に黙したままリレランは動かない。

「レギルに、確認したいことがある…」

 やっと口を聞いたかと思えばそんな事……

「なんでも聞いていいんだが、そろそろ私も起きていいか?」

 レギル王子にとっては普段から触れてみたいと思っているリレランが自分の腹の上に乗っているし、先程のシェルツェインの暴走と言える位の事態に巻き込まれたばかりで、まだ興奮冷めやまない…今、触れているのは頬だけだが、調子に乗って手が動き出す前に離れたいと思っていた。

 リレランは肯くと素直にレギル王子の上から降りた。何故、レギル王子の上に降りたかと言うと、降参の旗をシェルツェインに向かって挙げても、もしかすると万一の事が起こり得るかもしれないと言う事でそのままレギル王子の上に降りたそうな。

「それで、聞きたい事とは?」

 改めて体制を整え座り直してレギル王子がリレランを見つめる。

「……レギルは命は要らないと言った…これは、本当?」

 対価の件だろうか?
 
「………あぁ、そのつもりで国を出た。ランが望むのであれば、取って欲しい……」
 
 座りながらも頭を下げるレギル王子。

「…では、逆に生きる覚悟はある?」

 ランの瞳がキラキラと輝く…

「生きる…?」

 勿論、レギル王子は生きている。リレランが対価に命以外の物を求めればこれからも生き続けて行けるだろう。

「対価が決まったのか?」

 コクン…と小さくリレランは肯く…

「では…ランは私に何を?」

「……僕と……共に生きてもらう……」

「……?」

 リレランの前に座ったレギル王子はキョトンとした顔になる。

「ラン、私は今生きているな?」

「え、うん?」

 どこか、知らぬところで、気づかぬうちに死んだのか?気を失ったのは蝶の谷での一件のみ…では、そこで……?訳もわからず、可能性のない事がレギル王子の頭をかすめる。

「死んでいないのならば、生きている事にしかならないんだが、今までとは違うのか?」 

「…知っているのと、知らないのとでは大きな違いだと思うよ?」

 リレランは一つ、諦めた様にため息を吐く。それから、ゆっくり語り出した……
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