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「はぁぁぁぁ………」  


 身体が弱い…知ってるけどさ……何もあそこで倒れなくても…


 頑張って聖女の衣を着て庭に出て、裾を汚さない様にしゃがみ込むのも一苦労だったのに…

「お花摘みしたかったな…」

 幼い頃、野原で詰んだ蓮華の花が懐かしい。童心に帰りたかった訳ではないがそれでも草木を身近に感じていたかったのに…

 ゆっくりと身体を起こしてめまいがない事を確かめる。ベッドに腰掛けてルーチェリアはポソリとつぶやいた。


「元気になればまたできますよ?」

「…!?」

 ビックゥ!!

 驚くのも無理はない。全く気配が無かったのにアールストが直ぐ側に立ち控えていた。

「い、いつからそこに?」

「先程からおりました。」


 全くわかりませんでしたよ…?


「ルーチェリア様、近々中央神殿に参りませんか?」

 アールストはルーチェリアが驚いていることを一向に気にもしていない風でそんな事を言い出した。

「中央…神殿…?」

「はいそうです。我らガルンドーラ聖騎士団の本拠地であり、聖女信仰の聖地でもあり、我らの存在意義を確かめさせてくれるところでもあります。」

「そんな所に…?」


 私の様な、はっきり言って余所者のなんちゃって聖女が言って良いものなの?


「医師の話ではルーチェリア様の体調はまだ完全に健康体とも言い難い様ですが徐々に回復されてきていると言う事でした。でしたらこの際一度なりとも神殿でルーチェリア様をお預かりして羽を伸ばしながら快癒していただこうかと…」

「…費用は如何程…?」


 払えるのかな?って言うより、ここのお金持ってない………!

 
 今の今までこの世界の金銭に触れてもこなかった事にルーチェリアは愕然とした……


「何を申します?聖女様から金銭を取ろうなどと罰当たりな!」

 
「でも……それではご迷惑なのでは…?」

 
 だって、全く面識もない所にお世話になりに行くって言う事でしょう?旅館やらホテルと考えたってその対価を払って滞在するだろうから…親戚の家に泊まるのにだって気を使うのに…それなのに無一文なんて考えられない…!実際聖女の云々が全て善良な人々の寄付でなっていても、全ての物が立派なんだろうと思われる神殿にただで滞在しようなんて、それだけでどれだけの費用がかかるのか恐ろしくて恐ろしくて…


「良いですか?ルーチェリア様!貴方様がどんな稀有な存在か、もう一度お話いたしましょうか?聖女のお力、たった一度の浄化に国を動かす程の影響力があるのです。そして、聖女様の一存で国の存亡も決まってしまう…そんな力を聖女様方は持っているのです!ルーチェリア様はもっと傲慢に、もっと尊大になっても良いくらいですよ?たかが数ヶ月の滞在くらいで神殿の基盤が崩れるはずがございません。そもそも、神殿がなければ滅び去って行く国々のどれほど多い事か!なれば神殿の存続こそが各国の要にもなってくるのです!どの国も我先にと聖女の為に資金を出していると言うのに…!それに使わなければ貧民層への経済も回っていきませんよ!」

 徐々に熱くなる怒濤の如きアールストの熱弁にルーチェリアは目を見張りつつ黙って頷くしかなかった…






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