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「アールスト!切ってはダメです!!」


 当たり前だろう。目の前で女の子が切られるなんて見たくもないし、あって良い事じゃない。


「お下がり下さい…!私は貴方様を守る為ならばなんでもしますよ?」

「……口惜しい事……私にはそんな情熱を見せてはくださらないのに…」
 
 アールストを止める為にルーチェリアはアールストに縋り付く。アールストはグッとルーチェリアを瘴気から守る様に自分の方へと抱き寄せる。


 あったかい………手も、身体も…


「さ、どうなさるの?聖女ルーチェリア様?このままを開いたままでもよろしくてよ?犠牲になるのは力無いもの達なのでしょうから。貴方様にとってはそんな者達どうなっても良いのでしょう?」

「聞いてはなりません!」

 グッとアールストはルーチェリアを抱く手に力を込める。

「では、瘴気を解き放ちましょうね?」

 ゾッと寒気が走った…聖女が瘴気を浄化できると言っても皆んな限度があるのだ…

 
 あんな…量が……?


 アールストの腕の中から見えるのは、聖女カナールの足元から溢れても溢れても更に量と濃度を増して噴き出してくる瘴気の渦…地を舐め尽くせばそこにある草花は一瞬にして黒い消し炭の様にもろけて風に巻き取られ消えて行く…
 不思議な事に聖女カナールには瘴気遅いかからず避けていく様にも見えた。

「カナール様!気でも触れられたか!?」

「くっ……」

 瘴気に煽られレストール神官長がよろめく。

「レストール様!」

 ルーチェリアは直ぐに手を伸ばしてレストールに纏わりつく瘴気を浄化する。

 ルーチェリアの浄化の金の光りと、聖女カナールが出す銀の光と、ドス黒い瘴気の黒が溢れ出る瘴気の勢いに煽られ舞い上がり、入り乱れて行く。

「離れません様に!!」

 ルーチェリアを抱えたまま、アールストはレストールの前に立ちはだかり、襲ってくる瘴気を切り払いながらなんとか活路を見出そうと必死だ。

「レストール神官長!逃げて下さい!」

 ルーチェリアだけだったら瘴気に触れてもなんら害は受けない。払いながら逃げる事も可能なのだ。しかし、アールストとレストールは…

「そうは、行きませんよ…!私がこの神殿から離れれば、それこそ封印自体が崩れるのですから!」

「そうでしたわよね?なのにわざわざご自分から出てくるなんて、神官長ともあろうお方が浅慮でしたわね?」

 ニッコリと聖女カナールの美しい笑顔は嬉しそうにそう語った。







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