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後編
128 聖女の行く末 3
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ドルン侯爵家では、既に全ての者が勢揃いで屋敷の前に立ち並んで待っていた。
あの日、王妃であるフィスティアの弁明も、家族の嘆願も許されず、その後の処遇と生死すら家族にも教えて貰えなかった。状況を把握しようにもドルン侯爵家の者達は入城禁止どころか領地にて蟄居の王命。理由も何も知らされぬまま時間を潰すしか無かった。不安も何も解消できぬある日、ヒルシュ国の密偵から密書が届いた。王妃フィスティアがどこに居るのか、同盟軍が結成されて打ち捨てられた聖女の救出の動きがある事、無事に救出出来た折には必ず両親の元に帰ってくるだろう事…その晩、ドルン侯爵夫人は声を上げて泣いたそうだ。ドルン侯爵も唇を噛んでこの感極まる知らせに耐えていたという。
「お父様!お母様!!」
馬車から降りれば、挨拶もそこそこに直ぐに走り寄って来た両親にフィスティアも抱きついた。
「あぁ!フィスティア!!」
「本当に、貴方なのね!!」
力一杯抱きしめてくる父親に、優しい香りの母親…最後に見た時よりも二人共少し痩せてしまった様だ。
「あぁ!良く顔を見せて頂戴!こんなに痩せてしまって………ちゃんと食べさせて貰えもしなかったと言うの?」
仮にも王妃にまでなったフィスティアである。満足に食事も取れない様な事態に陥っているなど同国にいながら誰がそんなことを思うだろうか…
「ええ!今は十分に食べていますわ!あぁ!懐かしい…お元気でしたか?お二人共!親不孝を、お許し下さいませ!」
「何を言うのだ。親不孝などと思うものか!こうしてちゃんと帰って来たではないか………!」
「そうですよ。貴方を助けて下さった同盟軍の方々になんとお礼を申したら良いのか…」
ドルン侯爵夫人はもう涙声で言葉にならない。
「父上、母上。その恩人殿がここに来られているのですからどうかご挨拶なさってください。」
やっとの事でカイラスが再会を喜ぶ両親に声をかけた。それ位、お互いの再会に喜び合っていた。
「誠に、この度はフィスティアを助るために多大なご尽力を頂いたとか…殿下には、また同盟軍に対してなんとお礼を申し出たら良いのか………」
深々と頭を下げるドルン侯爵の隣には妻の夫人と、フィスティアだ。やっと帰ってきた愛娘を少しでも側から離したくはないらしい。
「私達は聖女殿に恩があり、その御恩を返す為に動いていたに過ぎぬのです。ですから、誰もが礼には及ばぬと言うでしょう。」
「しかし…それでは…」
大事な娘だ、聖女として産まれてくれて、王妃にまでなった。最早生きては会えぬと半ば覚悟までした者とこうして会えたのだ。礼は要らぬ、と言われてもドルン侯爵とてはいそうですかとは引き下がれそうにもない。
「でしたら、ドルン侯爵閣下。僭越ながら、フィスティア嬢の御身をこのケイトルに預けては頂けませんか?」
「まぁ…!」
「それは……!」
「殿下…!?」
三者三様にに驚きを表してセルンシト国第二王子ケイトルに注目した。
あの日、王妃であるフィスティアの弁明も、家族の嘆願も許されず、その後の処遇と生死すら家族にも教えて貰えなかった。状況を把握しようにもドルン侯爵家の者達は入城禁止どころか領地にて蟄居の王命。理由も何も知らされぬまま時間を潰すしか無かった。不安も何も解消できぬある日、ヒルシュ国の密偵から密書が届いた。王妃フィスティアがどこに居るのか、同盟軍が結成されて打ち捨てられた聖女の救出の動きがある事、無事に救出出来た折には必ず両親の元に帰ってくるだろう事…その晩、ドルン侯爵夫人は声を上げて泣いたそうだ。ドルン侯爵も唇を噛んでこの感極まる知らせに耐えていたという。
「お父様!お母様!!」
馬車から降りれば、挨拶もそこそこに直ぐに走り寄って来た両親にフィスティアも抱きついた。
「あぁ!フィスティア!!」
「本当に、貴方なのね!!」
力一杯抱きしめてくる父親に、優しい香りの母親…最後に見た時よりも二人共少し痩せてしまった様だ。
「あぁ!良く顔を見せて頂戴!こんなに痩せてしまって………ちゃんと食べさせて貰えもしなかったと言うの?」
仮にも王妃にまでなったフィスティアである。満足に食事も取れない様な事態に陥っているなど同国にいながら誰がそんなことを思うだろうか…
「ええ!今は十分に食べていますわ!あぁ!懐かしい…お元気でしたか?お二人共!親不孝を、お許し下さいませ!」
「何を言うのだ。親不孝などと思うものか!こうしてちゃんと帰って来たではないか………!」
「そうですよ。貴方を助けて下さった同盟軍の方々になんとお礼を申したら良いのか…」
ドルン侯爵夫人はもう涙声で言葉にならない。
「父上、母上。その恩人殿がここに来られているのですからどうかご挨拶なさってください。」
やっとの事でカイラスが再会を喜ぶ両親に声をかけた。それ位、お互いの再会に喜び合っていた。
「誠に、この度はフィスティアを助るために多大なご尽力を頂いたとか…殿下には、また同盟軍に対してなんとお礼を申し出たら良いのか………」
深々と頭を下げるドルン侯爵の隣には妻の夫人と、フィスティアだ。やっと帰ってきた愛娘を少しでも側から離したくはないらしい。
「私達は聖女殿に恩があり、その御恩を返す為に動いていたに過ぎぬのです。ですから、誰もが礼には及ばぬと言うでしょう。」
「しかし…それでは…」
大事な娘だ、聖女として産まれてくれて、王妃にまでなった。最早生きては会えぬと半ば覚悟までした者とこうして会えたのだ。礼は要らぬ、と言われてもドルン侯爵とてはいそうですかとは引き下がれそうにもない。
「でしたら、ドルン侯爵閣下。僭越ながら、フィスティア嬢の御身をこのケイトルに預けては頂けませんか?」
「まぁ…!」
「それは……!」
「殿下…!?」
三者三様にに驚きを表してセルンシト国第二王子ケイトルに注目した。
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