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10 思い出
しおりを挟むいつから、あれが目につく様になったのか?
陽の光を背負い、太陽の眷属を伴って毎朝決まった道を歩く。足元には空の者も地の者も全てを見渡し厳かに行き巡る。
地の者達にとって、厳かであり、暖かであり、恵みであり、過酷をもたらす眷族の中で先陣切って歩む私に、懸命に声を張り上げている者が目に映った。
若い葉枝を一杯に広げて、全身で喜びを表していた姿が酷く愛らしいと思えた。
いつからか、毎日目で追ってあれの成長を見て来た。
時には見つめ、時には優しく撫で一時の触れ合いが今までにない程喜びを与えてくれた。
お互いにそこを離れ、それ以上の触れ合いをするのは自然の摂理に反する。だから十分だった。
日々こうして見つめ、触れ合えるなら…
シェインリーフ…若き森の精霊よ。お前が消えたあの日にはもう戻りたく無い。
あの日からの全てを消し去ってしまいたいくらいだ…
薄暗く、屋敷の大きさに対してかなり狭い作りになっているその部屋には、いくつかの重厚な衣装箱が並べ置いてある。
その衣装箱一つ一つに上質の絹が敷き詰められておりその中には箱いっぱいの宝が詰められていた。
乾いた土の匂いと、僅かに残る木々の葉の匂い…
あれが消えてしまった後、必死になって掻き集めた物の残りだ。此処にはもう、木々を護り育む者はいない。十分に分かっているが、如何してもそのままにする事ができなかった…
「感傷に浸るとは珍しいですね。」
いつの間にかメアリーが後ろに立っている。
「先程、一つに戻ったからな。記憶が鮮明になった…」
「まあ、私のせいだと仰るのですか?」
「違うよメアリー。あれを守れなかった事が本当に悔しかったのだ。」
「十分に存じておりますわ。」
カサリ……乾き、萎れた葉は虚しい音を立てる。
「あれは、眠ったかな?」
「先程、しっかりと巣の中に篭られてましたわ。」
「巣、ね。」
言い得て妙な言い回しにクスクスと笑みがもれる。
「仕方あるまい。新しい芽を出そうとしているのだ。本来ならもっと深く篭るだろうに…」
「では起こして差し上げるのはやめた方がいいかと…」
「私があれを見たい…」
「まあ、我儘ですね…」
本当にしょうがないとメアリーから苦笑が漏れる。
「早く、本当の事をお話になったら良いですのに。」
「そうしたら、本当のあの子が見れなくなるだろう?」
クルクル動く表情や困惑した顔、ビックリした時の顔…全てを明かせばそんな表情も変わってしまいそうで勿体ないのだ。
「十分に分かりますが、ずっとこの姿のままとはいきませんしね…。」
ふむ、肯きはしつつももう聞いてはいない主人は、ただ愛おしそうに箱の中を愛でていた。
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