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27、王宮へ
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「王太子宮から、出すなと言わなかったか………?」
驚きと、怒りと、脱力感に苛まされる出来事が今、目の前に起こっている。執務室に篭って本日の政務に励んでいれば、廊下から聞こえてくる騎士と神官と思しき者達の声が聞こえてきた。良く聞かなくても神官達は王に何たる不敬と、リシュリーの事を言っているのがはっきりと分かった。
「私が行って来ましょう。」
リシュリーの周囲の警備をどうするか、また続行すべき宰相側への人員整理にと余り周囲の耳に入れたくはない会議をしていたので、実の所邪魔はされたくはなかったのだが。
「いや……」
手を上げて、王太子サージェスは騎士団長フランクルを止めた。
「私が行く。」
他でもないリシュリーが絡んでいるのならば他人任せにはしないほうがいいだろうから。
「ここを通す訳には行かないと言っているだろうが!」
執務室を開ければ、更に騎士の荒々しい声が響いてきた。
「どうしたのだ!」
「あ、サージェ!!」
「あ!こら、待て!!」
思った通り、王太子宮へ着いたのだろう神官と共にリシュリーが王城へと乗り込んできていた。サージェスを見つけたリシュリーはパッと顔を輝かせて、守衛の騎士を掻い潜り王太子へと突撃してくる。
「王太子殿下にご挨拶申し上げます。」
目の前で跪き礼を取るのは神官マートだ。
「来たか。」
「はい、王太子殿下と我が王の所望により参りました。」
「こいつ!不敬であるぞ!!」
この騒ぎを聞きつけた周囲の騎士達に登城していた貴族達が、遠巻きに見つめる中、神官マートは病気で長い間伏せっている国王の名を出したと憤り出す。
「良い、神官マートには私から指名し、王太子宮へと来てもらっていたのだ。」
「しかし、殿下!神官はともかく、そこにいる不審な者はこちらにお渡しください!」
不審な者…とはリシュリーであろうか…今もギュッとサージェスに甘える様にへばり付いていて離れようとはしない。
「無礼者!殿下のお身体に触れるなど、どのようなつもりだ!」
サージェスは王族である。それも直系の王太子だ。臣下であっても馴れ馴れしく触れれば不敬罪で裁かれてもおかしくはない。それなのに騎士達、大勢の貴族達の面前でリシュリーは王太子サージェスに堂々と触れたのだ。
「何を言っているのかな…あの騎士はさ?僕がサージェに触るのなんて当たり前だろう?人間で言う夫婦みたいな者なんだから!」
「は!?こいつ!!」
「な!どう言う事!」
「あの色を見ました?染粉を使っているにしても、何という悪意でしょう!」
「我が国では禁忌とされている色に染めて、それを王太子殿下はお許しになっているの?」
「夫婦って言っておられたな?あれは男では?」
「もしや、王太子殿下はそちらの気があられるのでは?」
「おやめなさいな!不敬よ!」
「宰相様は許可を出されたのかしら?」
男娼を側に置いておくとしてもなんと不吉な……
「おい!お前、こちらに来ぬか!」
ざわざわと遠巻きに話す止まらない貴族達の無駄口に、侮辱を込めた戯言、騎士の怒声。ここに集まってくる人数が増えれば増えるほど収拾がつかなくなってくる。
「控えよ!」
そこで、サージェスに遅れて出てきたフランクルが大声を出した。ビリビリと腹に響いてくるほどの声量で流石は騎士団長とでも言いたくなるほどの迫力だ。
「紳士、淑女の方々は直ぐにでもご自分達が向かうべき所にご移動を!守衛!!」
「は!!」
近衞騎士団長に呼ばれと守衛の騎士はビシッと直立不動の姿勢をとる。
「これから私の執務室にくる様に、この度の騒動の報告をする様に。交代の者を直ぐに来させる!殿下、殿下は中にお戻りを…リシュリー様も…」
どうやらフランクル騎士団長はリシュリーを敬うべき相手と弁えてくれている様で、リシュリーの前でしっかりと礼を取る。上の者が敬意を示したのだから下の者は従わないわけには行かないだろう。
「し、失礼を致しました!」
リシュリーがどんな身分かも分からないが、もしかしたら外国のやんごとなき身分の方かもしれない、と言う考えただけでも冷や汗が噴き出る様な事実に行き当たり、守衛の騎士は先程の無礼を詫びる。
「どうする、リシュリー?謝罪を受け入れるか?」
先程の態度と言い、事情を聞く事もしなかった者に関して、問答無用で降格処分にでもしてやりたいところではあるが、リシュリーに対する謝罪をしているのだから、本人には確認をとってみる。
「別にいいよ。君はここを守る為にいるんだろう?だったら見ず知らずの僕がいる方が遥かに不自然だったしね。ちゃんとサージェの事を守ろうとしてくれるんだから、いいんじゃない?」
「分かった。命拾いしたな?行け!」
「は!」
守衛の騎士は転がる様にしてその場を後にする。
「さて、リシュリー?」
「ん?」
「フランクルに中に入れと言われたからな、中でゆっくりと言い訳を聞こうか?」
サージェはその日一番の良い笑顔で笑っていたと思う…
驚きと、怒りと、脱力感に苛まされる出来事が今、目の前に起こっている。執務室に篭って本日の政務に励んでいれば、廊下から聞こえてくる騎士と神官と思しき者達の声が聞こえてきた。良く聞かなくても神官達は王に何たる不敬と、リシュリーの事を言っているのがはっきりと分かった。
「私が行って来ましょう。」
リシュリーの周囲の警備をどうするか、また続行すべき宰相側への人員整理にと余り周囲の耳に入れたくはない会議をしていたので、実の所邪魔はされたくはなかったのだが。
「いや……」
手を上げて、王太子サージェスは騎士団長フランクルを止めた。
「私が行く。」
他でもないリシュリーが絡んでいるのならば他人任せにはしないほうがいいだろうから。
「ここを通す訳には行かないと言っているだろうが!」
執務室を開ければ、更に騎士の荒々しい声が響いてきた。
「どうしたのだ!」
「あ、サージェ!!」
「あ!こら、待て!!」
思った通り、王太子宮へ着いたのだろう神官と共にリシュリーが王城へと乗り込んできていた。サージェスを見つけたリシュリーはパッと顔を輝かせて、守衛の騎士を掻い潜り王太子へと突撃してくる。
「王太子殿下にご挨拶申し上げます。」
目の前で跪き礼を取るのは神官マートだ。
「来たか。」
「はい、王太子殿下と我が王の所望により参りました。」
「こいつ!不敬であるぞ!!」
この騒ぎを聞きつけた周囲の騎士達に登城していた貴族達が、遠巻きに見つめる中、神官マートは病気で長い間伏せっている国王の名を出したと憤り出す。
「良い、神官マートには私から指名し、王太子宮へと来てもらっていたのだ。」
「しかし、殿下!神官はともかく、そこにいる不審な者はこちらにお渡しください!」
不審な者…とはリシュリーであろうか…今もギュッとサージェスに甘える様にへばり付いていて離れようとはしない。
「無礼者!殿下のお身体に触れるなど、どのようなつもりだ!」
サージェスは王族である。それも直系の王太子だ。臣下であっても馴れ馴れしく触れれば不敬罪で裁かれてもおかしくはない。それなのに騎士達、大勢の貴族達の面前でリシュリーは王太子サージェスに堂々と触れたのだ。
「何を言っているのかな…あの騎士はさ?僕がサージェに触るのなんて当たり前だろう?人間で言う夫婦みたいな者なんだから!」
「は!?こいつ!!」
「な!どう言う事!」
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「我が国では禁忌とされている色に染めて、それを王太子殿下はお許しになっているの?」
「夫婦って言っておられたな?あれは男では?」
「もしや、王太子殿下はそちらの気があられるのでは?」
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「おい!お前、こちらに来ぬか!」
ざわざわと遠巻きに話す止まらない貴族達の無駄口に、侮辱を込めた戯言、騎士の怒声。ここに集まってくる人数が増えれば増えるほど収拾がつかなくなってくる。
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「紳士、淑女の方々は直ぐにでもご自分達が向かうべき所にご移動を!守衛!!」
「は!!」
近衞騎士団長に呼ばれと守衛の騎士はビシッと直立不動の姿勢をとる。
「これから私の執務室にくる様に、この度の騒動の報告をする様に。交代の者を直ぐに来させる!殿下、殿下は中にお戻りを…リシュリー様も…」
どうやらフランクル騎士団長はリシュリーを敬うべき相手と弁えてくれている様で、リシュリーの前でしっかりと礼を取る。上の者が敬意を示したのだから下の者は従わないわけには行かないだろう。
「し、失礼を致しました!」
リシュリーがどんな身分かも分からないが、もしかしたら外国のやんごとなき身分の方かもしれない、と言う考えただけでも冷や汗が噴き出る様な事実に行き当たり、守衛の騎士は先程の無礼を詫びる。
「どうする、リシュリー?謝罪を受け入れるか?」
先程の態度と言い、事情を聞く事もしなかった者に関して、問答無用で降格処分にでもしてやりたいところではあるが、リシュリーに対する謝罪をしているのだから、本人には確認をとってみる。
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